Duchenne型筋ジストロフィーのステージ6

デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)では、幼児期に運動機能の低下やふくらはぎの肥大化(太くなる)などの初期症状がみられることが多く、症状が進むと肺や心臓などの臓器を中心にさまざまな合併症が現れます。

幼児期にみられる初期症状(運動発達の遅れなど)

デュシェンヌ型筋ジストロフィーの原因となるジストロフィン遺伝子の変異を持っていても、生まれてから歩きだすくらいまでの乳児期では目立った症状はみられず、異常に気づくことはあまりありません。しかし、歩き始め頃から運動発達の遅れに伴って、次のような症状がみられるようになります。

Duchenne型筋ジストロフィーのステージ6

乳児期(出生直後から1歳半ごろまで)

特別な気づきは多くありません。

幼児期(1歳半ごろから5歳ごろまで)

1歳半ごろで歩き始める頃から、運動発達の遅れ、歩き方や立ち上がり方の異常、転びやすさなど、この病気でみられる特有の症状に気付かれるようになります。

3~5歳頃になると運動発達の遅れがさらに目立つようになり、5~6歳頃に運動機能のピークを迎え、今までできていた運動が徐々にできなくなっていきます。

動かしにくい体の部分はありますが、10歳ごろまでは自分の力で歩くことができます。

デュシェンヌ型筋ジストロフィーで特徴的な立ちあがり方の例(ガワーズ徴候)

Duchenne型筋ジストロフィーのステージ6

デュシェンヌ型筋ジストロフィーで特徴的な歩き方の例(動揺性歩行)

Duchenne型筋ジストロフィーのステージ6

出典:株式会社メディックメディア「病気がみえるvol.7脳・神経」

ふくらはぎの肥大化

デュシェンヌ型筋ジストロフィーでは、ほとんどの患者さんで「ふくらはぎ(腓腹筋ひふくきん )」がやや大きく(仮性肥大)、全身の他の筋肉と比べて硬い症状がみられます。他の種類の筋ジストロフィー(ベッカー型)でもみられる特徴ですが、なぜ筋ジストロフィーの特定の型に出現するのか、その原因はわかっていません。

「ベッカー型」についてはこちら

Duchenne型筋ジストロフィーのステージ6

診断のきっかけと血液検査値のめやす

デュシェンヌ型筋ジストロフィーでは、クレアチン・キナーゼ(CK※)や肝酵素(AST、ALT)の値が高くなることがあります。クレアチン・キナーゼ(CK)は筋肉中に含まれる酵素の一種で、筋肉が壊れると、血中に漏れ出てくるため値が高くなります。そのため、筋ジストロフィーに限らず、筋肉の病気で高くなることがあります。
肝酵素(AST、ALT)は主に肝臓機能のマーカーですが、筋肉にも含まれる酵素のため、筋肉が壊れると高い値を示します。いずれも血液検査で調べることができます。しかし、乳幼児健診では血液検査は実施されません。運動発達の遅れなどについて、健診時や保育園、幼稚園の先生に指摘されたり、普段の生活の中で気になることがあれば、かかりつけの小児科で血液検査を実施しましょう。

また、診断は偶然行った血液検査で血清CKが高値を示すことがきっかけになることが多いと言われています。感染症などで小児科を受診し、血液検査でASTやALTが高値を示すことがあります。肝疾患だけでなく筋疾患も鑑別に入れて、追加で血清CKを検査すると高値を示し、デュシェンヌ型筋ジストロフィーに気づかれることが少なくありません。ただし、これだけでデュシェンヌ型筋ジストロフィーとは判断できません。診断には、遺伝子検査や筋生検などが必要です。

※クレアチン・キナーゼはCPKと記載されることもあります。

Duchenne型筋ジストロフィーのステージ6

デュシェンヌ型筋ジストロフィーの幼児期での血液検査値のめやす※※

血液検査の必須項目検査値
AST 100~300 U/L 程度
ALT 100~300 U/L 程度
血清CK 数千~数万 U/L

※※参照:石垣景子, Prog. Med., 40, 1019-1024, 2020.

症状が進むことでみられる合併症

個人差はありますが、病気が進みさらに筋肉が弱くなってくると、肺や心臓、胃や腸などの臓器の働きにも影響がみられるようになります。また、関節が硬くなる、背骨が曲がるなどの症状がみられることもあります。

Duchenne型筋ジストロフィーのステージ6

5歳頃

個人差はありますが、運動発達の遅れが目立つようになります。また、足首や股関節などの関節が固くなってくる拘縮も見られるようになります。

10歳頃(歩行喪失時期)

歩くことが困難になります。

10代前半頃

上肢の筋力低下に伴う症状も現れるようになり、手を挙げて行う日常の動作(挙手、頭を洗う、コップを口元に運ぶ)が難しくなってきます。また、背骨が曲がることもあります(側弯症)。

10代後半以降

肺を動かす筋肉が弱くなることで呼吸がしにくくなったり(呼吸器障害)、心臓を動かす筋肉が弱くなることで心臓のポンプ機能が低下したり(心機能障害)することがあります。また、食事を噛んだり飲み込んだりするための筋肉が弱くなることで食べ物が飲み込みにくくなったり(摂食・嚥下障害)、胃や腸を動かす筋肉が弱くなることで便秘が起こりやすくなったりと(消化管障害)、様々な合併症がみられるようになります。

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2020年5月5日2022年11月11日

Duchenne型筋ジストロフィーのステージ6

26 前大脳動脈閉塞で最も生じやすい症状はどれか。

1. 観念運動失行
2. 強制把握現象
3. 地誌的失見当
4. 着衣失行
5. 物体失認

解答・解説

解答2

解説

前大脳動脈は、前頭葉内側頭頂葉内側を支配している。

1.× 観念運動失行は、優位半球の頭頂後頭葉の障害(縁上回)で生じやすい。つまり、中大脳動脈の障害で起こる。
2.〇 正しい。強制把握現象(前頭葉の障害)である。強制把握現象とは、触覚的刺激から把握反射によりずっと把握し続けてしまう現象である。
3.× 地誌的失見当は、両側または右頭頂後頭葉などとされており、主に中・後大脳動脈領域の梗塞で生じる。地誌的失見当の症状は、①自己中心的失見当、②道順障害、③街並失認に分類される。
4.× 着衣失行は、劣位半球の頭頂葉の梗塞で生じやすい。つまり、中大脳動脈の障害で起こる。
5.× 物体失認は、左後頭葉の視覚前野から側頭葉の側頭連合野にかけての障害で生じる。つまり、中大脳動脈の障害で起こる。物体失認とは、物体は見えるがそれが何か理解できないという症状である。

27 Duchenne型筋ジストロフィーのステージ6(厚生省筋萎縮症研究班の機能障害度分類による)に対する理学療法として適切なのはどれか。2つ選べ。

1. 四つ這い移動練習
2. 脊柱の可動域運動
3. 電動車椅子操作の練習
4. 短下肢装具装着での立位バランス練習
5. 台やテーブルを利用した立ち上がり練習

解答・解説

解答2/3

解説

Duchenne型筋ジストロフィー機能障害分類のステージ6は、「四つ這いは不可能だが、いざりは可能」なレベルである。

1.× 四つ這い移動練習は、ステージ5で行う。ステージ5は、「起立歩行は不可能であるが、四つ這い移動は可能」である。ステージ6になると、四つ這い移動は不可能であるため理学療法として不適切である。
2.〇 正しい。脊柱の可動域運動である。可動域運動を全ステージで行う。なぜなら、筋ジストロフィーや神経疾患では関節拘縮の発生頻度が高いため。
3.〇 正しい。電動車椅子操作の練習である。ステージ5~7において車椅子の操作が必要になる。操作練習はステージ5~6程度から理学療法を行っていく。
4.× 短下肢装具装着での立位バランス練習は、ステージ4で行う。ステージ4は、「歩行可能レベル」である。
5.× 台やテーブルを利用した立ち上がり練習は、ステージ4で行う。選択肢4~5は、ステージ6のレベルでは不可能であることが考えられる。

厚生省「筋萎縮症」対策研究会による障害段階分類

ステージ1 歩行可能 介助なく階段昇降可能(手すりも用いない)
ステージ2 階段昇降に介助(手すり、手による膝おさえなど)を必要とする
ステージ3 階段昇降不能 平地歩行可能 通常の高さのイスからの立ち上がり可能
ステージ4 歩行可能 イスからの立ち上がり不能
ステージ5 歩行不能 四つ這い可能
ステージ6 四つ這い不能だが、いざり移動可能
ステージ7 這うことはできないが、自力で坐位保持可能
ステージ8 ベッドに寝たままで体動不能 全介助

28 アテトーゼ型脳性麻痺について誤っているのはどれか。

1. 痙直型より少ない。
2. 原始反射が残存しやすい。
3. 不随意運動を主症状とする。
4. 上肢より下肢の障害が重度であることが多い。
5. 成人以降の二次障害として頸椎症性脊髄症がある。

解答・解説

解答4

解説

1.〇 正しい。アテトーゼ型脳性麻痺は、痙直型より少ない。痙直型が最も多い。
2.〇 正しい。アテトーゼ型脳性麻痺は、原始反射が残存しやすい。特に、非対称性緊張性頸反射が残存しやすく、左右対称な姿勢がとりにくい。
3.〇 正しい。アテトーゼ型脳性麻痺は、不随意運動を主症状とする。アテトーゼは、不随意運動が含まれ、頚部から上肢を中心とした筋緊張をともなう粗大運動である。
4.× 上肢より下肢の障害が重度であることが多いのは、痙直型両麻痺である。アテトーゼ型は、上下肢ともに支持性が低下し、不随意運動は、頚部から上肢にみられることが多い。
5.〇 正しい。アテトーゼ型脳性麻痺は、成人以降の二次障害として頸椎症性脊髄症がある。頚椎症性脊髄症とは、頚椎の変形によって内側の脊髄が圧迫されて、巧級性の低下や手足のしびれが生じる疾患である。

苦手な方向けにまとめました。参考にしてください↓

Duchenne型筋ジストロフィーのステージ6
理学療法士国家試験 脳性麻痺についての問題9選「まとめ・解説」

29 PEDI (pediatric evaluation of disability inventory)で正しいのはどれか。

1. 機能的スキルを測定する。
2. 脳性麻痺は対象にならない。
3. 出生直後から使用可能である。
4. 社会的機能は評価項目に含まれない。
5. 評価に要する時間はWeeFIMより短い。

解答・解説

解答1

解説

1.〇 正しい。検査項目に、機能的スキルがある。
2.× 脳性麻痺も対象となる。なぜなら、子ども(生後6か月から7歳半)を対象とした包括的機能評価表であるため。
3.× 出生直後から使用は不可能である。生後6か月から7歳半の子供が対象である。
4.× 社会的機能も評価項目に含まれる。
5.× 評価に要する時間はWeeFIMより長くなる。なぜなら、PEDIは全217項目、一方WeeFIMは全18項目であるため。

PEDI (pediatric evaluation of disability inventory)

子ども(生後6か月から7歳半)を対象とした包括的機能評価表である。
評価は、【機能的スキル】と【複合活動】からなる。

それぞれ、①セルフケア、②移動、③社会的機能の3領域に分類される。
機能的スキル:197項目。
複合活動:20項目。

個々の項目では、特定の動作について両親や児をよく知る者に質問して能力を評価する。
介護者による援助尺度や、補助具等の使用についての調整尺度も設定されている。

30 ASIA機能障害尺度でL4のkey muscleはどれか。

1. 腸腰筋
2. 腓腹筋
3. 前脛骨筋
4. 大腿四頭筋
5. 長母指伸筋

解答・解説

解答3

解説

1.× 腸腰筋は、L2のkey muscleである。
2.× 腓腹筋は、S1のkey muscleである。
3.〇 正しい。前脛骨筋は、L4のkey muscleである。
4.× 大腿四頭筋は、L3のkey muscleである。
5.× 長母指伸筋は、L5のkey muscleである。

Duchenne型筋ジストロフィーのステージ6

筋ジストロフィー福山型の寿命は?

予後 呼吸筋力低下による呼吸不全,拡張心筋症による心不全,嚥下障害による誤嚥や窒息が予後を左右する. 平均寿命は10歳代後半から20歳代前半である.

筋ジストロフィーの末期症状は?

末期には肋間筋など呼吸筋の萎縮により、呼吸障害が現れ、自然経過では20歳まで に呼吸不全により死亡する。 また、心臓にも心筋細胞の変性、線維化などの病変が見 られやすく、心不全で死亡する例もある。 知能は軽度に低下する例が多い。

筋ジストロフィーの発症時期は?

3~5歳で転びやすい、走れないことで発症します。 5歳頃に運動能力のピークをむかえ、以後、症状が進行し、10歳頃に車椅子生活となります。 その後、合併症として、10歳以降に呼吸不全、心筋症、側弯を認めることが多いです。

筋ジストロフィー 何歳まで生きられる?

過酷な病気だが、寿命は延びている。 1991年ごろには25歳までに多くの患者が亡くなっていた。 その後、人工呼吸器による呼吸補助や心不全対策で寿命が延び、30を超えるようになった。