好中球 前駆細胞の分化増殖を促進する顆粒球コロニー刺激因子 G-CSF 製剤はどれか

本発明は、ミルクカゼインのαS1-、αS2-、β-、κ-カゼイン分画の配列由来の、または配列近似の、生物学的に活性を持つペプチドに関する。これらのペプチドは、例えば、免疫反応の刺激および強化、ウィルス感染に対する保護、血清コレステロールレベルの正常化、および造血機能刺激を含む免疫調節およびその他の治療活動を実現することが可能であるが、ただしこれらに限定されない。このカゼイン由来ペプチドは無毒であり、免疫病理、糖尿病、高コレステロール血症、血液学的障害、およびウィルス関連疾患の治療および予防に使用することが可能である。

栄養素由来の生体活性分子
多くの食品の栄養的価値の外にさらに、消化経路のある分画および産物は、生理的過程に影響を及ぼす能力を持つ。これらの「栄養外」成分の内のあるものは、総合栄養素中にその活性形で存在する。例えば、母乳および初乳中の免疫グロブリン、大豆系食品に見られる植物エストロゲン、植物およびビタミン由来のポリフェノール系抗酸化剤がそれである。また別のあるものは栄養素分子の中に暗号化されて埋め込まれていて、消化または食物処理の際に活性形として放出される。例えば、ラクトグロビンから放出される抗高血圧ペプチドがそれである(非特許文献1)。

ミルクタンパクの生物活性
ミルクは、それぞれ独特の品質に貢献する多様なタンパクを含む。ある種のタンパク、例えば、胆汁酸塩刺激リパーゼ、アミラーゼ、ベータ-カゼイン、ラクトフェリン、ハプトコリン、およびアルファ-アンチトリプシンは、ミルク由来の栄養素の消化と利用を助ける。他のタンパク、例えば、免疫グロブリン、カッパ-カゼイン、リゾチーム、ラクトフェリンおよびラクトアルブミンは、天然形または部分的消化形において、免疫調整および抗微生物活性を持つ。主要なミルクタンパクであるカゼインは、以前は、その電気泳動移動度から、三つの分画α、β、およびγから構成されると定義されていた(非特許文献2)。今日では、カゼインは、サブグループαS1-、αS2-、β-、およびκのそれぞれのアミノ酸配列に従って定義される(非特許文献3)。

消化の過程において、カゼインタンパクは、タンパク分解酵素による分断、例えば、キモシン(レニン)、トリプシン、およびペプシンのような酸プロテアーゼによって開裂されて、より短いペプチドを生産し、このタンパク断片によって凝乳形成およびカルシウム分離を誘発する。ミルク化合物に関する2、3の研究によってカゼイン関連性の殺菌活性が示された。特許文献1は、微生物にたいして抗生物特性を持つ、タンパク分解酵素によるカゼイン分解産物を開示する。特許文献2は、カゼインのN末端の23個のアミノ酸から成るカゼイン由来ペプチドが、抗菌活性を持つことを記載する。Shimizu等は、αS1カゼインの胃における加水分解産物由来の短いN-末端断片は乳化性を持つので、この物質は、食物産業において何かの役に立つかもしれないと述べている(非特許文献4)。この著者等は、該断片のアミノ酸組成と、それがインビトロで乳化活性を持つことを調べ、かつ、それが、23アミノ酸長のαS1のN-末端断片に近似することに注目し、これらの断片同士は同一であると結論した。しかしながら、同一性の証拠は提示されず、また生物活性も調べられなかった。

別の実験において、Chabance等(非特許文献5)は、ヨーグルトおよびミルク摂取後のヒトの胃と血液において、カゼイン由来のペプチドおよびペプチド断片の存在を検出した。この著者等は、消化後の血液において、生物活性κ-カゼイン(カゼイノ糖タンパク)の断片、および、抗菌活性を持つαS1カゼインのN-末端断片の存在を報告した。彼等は、これらのペプチドが、変化を受けずに、血漿に通過したことは、その十二指腸吸収において、共通の輸送経路があることを示唆すると結論した。ペプチド断片の活性は明らかにされなかった。

LahovおよびRegelsonは、完全で、酸沈殿性のウシおよびヒトのカゼインを短時間(30分)キモシンで消化したところ、αS1カゼインN-末端ペプチドが濃縮された分画が得られたことを記述する(非特許文献6)。これは、事実上、Katzir-Katchalsky等に交付された特許(特許文献1)の教示と重複するものであった。次に、このキモシン消化産物をTCAで沈殿させ、遠心分析および短カラム平衡法で解析した。この著者等は、Katzir-Katchalsky等によって報告された、抗菌性「イスラシジン」と類似の、αS1カゼインN-末端ペプチド断片を報告する。しかしながら、この著者等が、均一となるまで精製したとする主張の信憑性は、高感度の分析技術を用いたカゼインのキモシン消化物の詳細な研究において、ペプチド混合物が繰り返し検出されること(例えば、非特許文献7-9を参照)を考えると、疑問である。

さらに、カゼインまたはその誘導体については、他の生理学的活性、例えば、オピオイドおよび増殖因子様活性が示唆されている(非特許文献10)。

カゼインペプチドでは免疫調節活性も観察されている。Coste等(非特許文献11)は、βカゼインのC末端から得られたペプチドで処理した後、ラットのリンパ球の増殖が強化されたことを観察した。全てMurkerji等に交付された特許文献3-5は、乳児におけるRSウィルス、中耳炎、H.インフルエンザ、およびその他の感染症を治療するために、液体腸内処方形式の、ヒトのβカゼイン、組み換えヒトβカゼイン、および両者の加水分解産物を投与したことを教示する。ウシのβ-カゼインも試験したが、有意な抑制活性を欠くことが認められたので、著者等は、「ヒトのミルクのβ-カゼインは、ウシのβ-カゼインと比べると異なる生物活性を持つ」と結論した。

Dosaka等に交付された特許文献6および7は、ラットで、インビトロおよびインビボにおいて、細菌およびウィルス感染予防のためにウシのミルクから得られた、シアル酸接合κ-カゼインおよびκ-カゼイン由来糖巨大ペプチド(GMP)の投与を教示する。Isoda等に交付された特許文献8は、細菌エンドトキシン、例えば、コレラ毒素の中和のための、シアル酸結合κ-カゼインおよびκ-カゼインペプチドの用法を教示する。同様に、Mukerji等に交付された特許文献9およびAndersson等に交付された特許文献10も、細菌およびH.インフルエンザ感染の予防に、ウシκ-カゼインではなく、ヒトκ-カゼインの使用を開示する。しかしながら、従来技術で教示される、これらのカゼイン組成物は、簡単な画分操作の後では、比較的未精製な状態であって、上記研究のいずれも、その「栄養外」性質を賦与するカゼインペプチドについて、その特異的配列も決定していない。

最近の研究で、多くの西欧諸国において、牛乳のA1β-カゼイン分画の消費量と、虚血性心不全(IHD)との間に相関のあることが検出され、これをきっかけにA1β-カゼイン無添加ミルクが開発された(MaLachlanに交付された特許文献11)。

ガン治療における造血機能
高用量の化学療法後、特に、自己骨髄または末梢血幹細胞移植(ASCT)、または同種骨髄移植(BMT)によって支持される骨髄破壊用量の化学・放射線療法後においては、患者は、汎血球減少症によって高度の危機に曝される。顆粒細胞減少症は、ありふれた細菌、ウィルス、真菌、および寄生生物による重大な、場合によっては致命的な感染合併症の発生をもたらすことがある。同様に、血小板減少症は、しばしば出血傾向を招き、場合によっては慢性的血小板依存症に至ることがある。血小板耐性が発達すると必ず、出血発作が生命を脅かすことがあり、出血合併症が多くの場合命取りになる。顆粒細胞減少症による危機は、一部は支援策によって克服することが可能であり、顆粒細胞の再形成を強化する組み換えヒトサイトカイン、特に、顆粒細胞コロニー刺激因子(G-CSF)および顆粒細胞マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)の投与によってもっとも効果的に対応することが可能である。これらの薬剤は極めて高価で(患者1人、1日当たり、約200-400ドル)、稀に、過敏反応、発熱、骨の痛み、および場合によっては、例えば、心膜炎および肋膜炎を含む血管漏洩症候群による副作用を招く。これらの副作用の内のあるものは、上記造血細胞増殖因子によって内部的に放出される、他のサイトカインによるものである可能性もある。さらに、これらの造血細胞増殖因子の使用は、G-CSFまたはGM-CSF受容体を持つ腫瘍細胞を抱える患者、例えば、急性および慢性骨髄性白血病および骨髄形成異常症候群の患者には禁忌であることが考えられる。汎血球減少症の危険性のある患者の治療は、造血性サイトカインの使用によって大きな進歩を遂げたが、その一方で血小板減少症の治療にはまったく進歩が見られない。高用量の化学療法および特にASCT後においては、患者は血小板減少症を発症する危険があり、これは、何ヶ月も、場合によっては3年も続くことがあり、血小板減少症患者の中には回復しないものもいる。以前に血液製剤で治療されたことのある患者の多くは、その血小板が耐性を持つようになっており、従って、血小板減少症は、単一のドナーから集中的、反復的血小板輸血を受けても、一過性にでも克服することは不可能である。世界中のASCTセンターにおいて、血小板に対する耐性および長期の血小板減少症は普遍的死亡原因を代表する。

現在、巨核球造血増殖および血小板再形成を強化するための有望な薬剤として、いくつかの新規組み換えサイトカイン、例えば、組み換えヒト・インターロイキン-3(rhIL3)および組み換えヒト・インターロイキン-6(rhIL6)が研究されている。残念ながら、予備的臨床治験では、rhIL3およびrhIL6は血小板の再形成を強化するけれども、その作用は決して目覚しいものではなく、かつ、相当の時間がかかることが示された。

明らかに、長期の血小板減少症は、今日、臨床骨髄移植センターにおける大問題であるが、しかし満足すべき解決策はいまだに見出されていない。

従って、前述の限界を持たない、造血細胞増殖、特に、巨核球増殖の、安全で、安価で、短時間で有効で、かつ、その特性が解明された刺激因子を実現することの必要は広く認識されており、また、それが実現されたならば極めて有利であると考えられる。

造血機能および血小板機能の調整におけるトロンボポエチン(TPO)
TPOは、生体内において血小板生産の主要な調節因子であるらしい。ただし血小板欠乏の際の腎臓および肝臓由来の増殖因子の増加は、これらの器官におけるTPO生合成の適応によって引き起こされたものではない。むしろ、循環する血小板の数が、血小板の生産のためにどのくらいの量の循環TPOがあったらよいのかを定める「フィードバックループ」が存在するためであるように思われる。さらに、TPOは、複数の重要な派生作用を持つ早期活性サイトカインであることが証明されている。すなわち、TPO単独、または他の早期活性サイトカインと共同で、(i)生存率を促進し、前駆細胞のアポトーシスを抑える;(ii)造血幹細胞の生産と機能を調整する;(iii)休眠中の多能細胞の細胞分裂を誘発する;(iv)複数の系統分化を誘発する;および、(v)顆粒細胞、赤血球、マクロファージ、および巨核球を含む多数系統コロニーの形成(MK, CFU-GEMM)を強化する。さらに、TPOは、顆粒球/単球、巨核球の比較的僅かな前駆細胞、および赤血球コロニーの生産を刺激し、原初的ヒト骨髄および巨核球細胞の、フィブロネクチンおよびフィブリノーゲンに対する接着性を高める。従って、TPOは、臨床的血液学者/移植術者にとって、すなわち、幹細胞の移動、増幅、および体外拡大、および、自己移植および同種異系移植に専ら与る前駆細胞にとって重要なサイトカインである(非特許文献12)。

TPOの造血機能における作用の外に、この強力な増殖因子は、各種作用剤に対する血小板の応答性を整え、血小板-細胞外マトリックス間相互作用を調節する。TPOそれ自体は血小板凝集を起こすことはないが、TPOは、ADP誘発凝集を、特に凝集第2波において上方調整し、顆粒(ADP、ATP、セロトニン等)放出とトロンボキサンB2の生産を上方調整し、コラーゲンに対する血小板の付着を増し、かつ、せん断力誘発血小板凝集を強化する。TPOはまた、PMN活性化を刺激して、IL-8放出を誘発し、酸素代謝産物生産の基盤を整え、抗菌性防御を強化するようである。

臨床研究は、各種の血液学的病態を理解し、治療する上でTPOが極めて重要であることを示唆する。特発性再生不良性貧血を抱える患者では、免疫抑制治療の後では寛解中でもTPOレベルの上昇が続き、造血機能の欠陥があることを示す。TPOは、他の形の再生不良血小板減少症でも上昇するが、血小板破壊の増加を伴う病態では上昇は見られない。外見的には、TPO生産の反応性増加は、破壊的血小板減少症の場合は不十分である。従って、TPOは、再生不良性ばかりでなく、破壊的血小板減少症に対しても治療選択肢となる。

血小板造血剤は、病理的または治療誘発性の血小板減少症の予防および/または治療において、また、血小板輸血の代替としても極めて臨床的に興味あるものである。これまで評価されたサイトカインの内で、僅かに効力のあるIL-11のみが臨床使用には受容できないとされた。TPOは、血小板減少症治療のための特選サイトカインとなると広く考えられている。組み換えヒトTPO(Genentech)が最近市販されており、正確な薬剤動態学的定量および臨床治験が可能となった。従って、TPOの予想される応用範囲は、補佐的治療(化学的/放射線治療、骨髄および幹細胞移植後のケア)、血液学的疾患(AA、脊髄形成異常、先天的および後天的血小板減少症)、肝臓病、輸血(血小板の展開、採取、移動、および保存)、および手術(肝移植を含む)等の領域を含む。特に興味あるのは、骨髄形成異常に対するTPO/EPO/G-CSFカクテル、幹細胞の末梢移動に対するG-CSFおよびTPOの組み合わせとCD34+細胞収集におけるTPO、および、優れた血小板再形成のための巨核球の体外展開において有用の可能性のあることである。組み換えヒトG-CSFも市販されている(Filgrastim, Amgen, Inc., 米国)。しかしながら、臨床応用が考慮されている他の造血剤と同様、TPOおよびG-CSFは高価であり、治療的有効レベルでは抗原性となる可能性がある。従って、TPOおよびG-CSF活性を増強することが可能な、血小板増殖および顆粒細胞増殖を刺激する、安全で、安価で、簡単に入手が可能な刺激因子が得られたならば有利であると考えられる。

SARS
重症急性呼吸器症候群(SARS)が世界的に勃発し、2003年の春には25カ国を超える国々でSARS関連死が報告され、疑惑の感染源、SARS-CoVコロナウィルスに注意が集中した(非特許文献13)。SARS-CoV感染の証拠は世界中のSARS患者において記録されている。呼吸器標本にはSARS-CoV感染が検出され、寛解期のSARS患者の血清は抗SARS抗体を含んでいる。現在、SARS-CoV感染の予防または治療のための療法は特定されていない。

有効なワクチンまたは薬剤の欠如した状態で、現在のSARS蔓延は、呼吸ルートを介して広がる他の感染症の蔓延、例えば、1918年のインフルエンザの蔓延や麻疹蔓延と同様の、破壊的な比率に達せんばかりの勢いを示す。これまで多くの保健官庁関係者によって強調されてきたように、流行病を防止するための最重要課題は、感染の伝播の阻止である。従って、極めて必要とされる公衆衛生施策に加えて、SARSの予防および/または治療のための方法の開発がもっとも重要である。

カゼインのα、κ-、およびβ-分画
カゼインのαS1分画は、ミルクタンパクから様々な方法で入手することが可能であり(非特許文献14-16)、カゼインのαS1分画の、完全なアミノ酸配列はJ.C. Mercier等によって決定された(非特許文献17)。ウシカゼインのαS1分画のゲノムおよびコード配列も、組み換えDNA技術を用いてクローンされ、配列決定された(非特許文献18、19)。カゼインのαS1分画のN-末端断片のタンパク分解酵素による開裂および特定も記録され(非特許文献20、21)、また、哺乳類による天然のミルクタンパク摂取後の、この断片の小腸吸収と、血漿での出現も記録されている(非特許文献22)。MeiselおよびH. Bockelmann, W.(非特許文献23)は、αおよびβカゼインの乳酸菌消化物によって放出されるペプチド中の免疫ペプチド、カゾキニン、およびカゾモルフィンのアミノ酸配列を検出した。特に興味あるのは、α-、κ-カゼイン分画のC-末端部分において認められた抗凝集および血栓分解活性である(非特許文献24、25)。

ウシのαS2、β-、およびκ-カゼインのコード配列もクローンされた(非特許文献26-28)。αS2-カゼインのコード配列は、多数のAlu様レトロポゾン配列を持ち、かつ、この遺伝子は、αS1-カゼイン遺伝子と同様に組織されるが、配列分析の結果、この遺伝子は、β-カゼイン遺伝子とより緊密な関連を持つことが示された。β-カゼインは、セリン残基から成る多数のクラスターによって特徴づけられるが、これらは、リン酸化されると、リン酸カルシウムと相互作用を持ち、これを分解する(非特許文献29)。κ-カゼインは、比較的小型のポリペプチドで、そのアミノ酸およびヌクレオチド配列(非特許文献30)は、κ-カゼインは、進化的には、カルシウム感受性を持つカゼイン遺伝子ファミリーとは無関係であることを示す。腸において、κ-カゼインは、不溶のペプチド(パラ-カッパ・カゼイン)と可溶の親水性糖ペプチドに分割される。後者は、消化の効率、新生児の、摂取タンパクに対する過敏の阻止、および、胃の細菌性病原体の抑制において活性を持つことが示されている(非特許文献31)。

従来の研究において、αS1カゼインのN-末端、αS2-カゼイン、β-カゼイン、およびκ-カゼインアミノ酸配列中に暗号化されて埋め込まれる生物活性を持つペプチドの可能性が指摘されているが、造血機能の強化、ウィルス感染の予防、あるいは、自己免疫疾患進行の調節のために、これらのタンパク断片、特定配列、または、中身の分かった合成ペプチドを、単独で、または組み合わせて用いる使用法については全く言及されていない。

本発明は、ヒトの疾患の治療のために、ペプチドであって、αS1カゼインのN-末端部分、αS2-カゼイン、β-カゼイン、およびκ-カゼインから得られ、検出される毒性を持たず、広範な病理的症状に対し高度な治療効力を発揮するペプチドおよびそれらペプチドの組み合わせを提供することによって、従来技術の欠点に真っ直ぐに対応して成功を収める。

米国特許第3,764,670号イスラエル国特許第42863号 米国特許第5,506,209号米国特許第5,538,952号米国特許第5,707,968号米国特許第5,147,853号米国特許第5,344,820号米国特許第5,330,975号米国特許第5,712,250号米国特許第5,968,901号米国特許第6,570,060号

Kitts, D.D.(1999), Can. J. Physiol. Pharmacol. 72:4;423-434 N.J. Hipp, et al.(1952), Dairy Sci., 35:272 W.N. Engel et al. (1984), J. Dairy Sci. 67:1599 Shimizu, et al. J of Food Science, 1984;49:1117-20 Chabeance et al., Biochemie 1998;80:155-65 Lahov and Regelson, Fd Chem Toxic 1996;34:131-45 Charles et al., FEBS Lett. 1985;115:282-6 McSweeney et al, J Dairy Res., 1993;60:401-12 Yvon, et al. Int. J. Prot Res, 1989;34:166-76 Kitts, D.D.(1999),ibid Coste et al. (1992), Immun. Lett. 33:41-46 von dem Borne, A.E.G.Kr., et al., (1998) Thrombopoietin: it’s role in platelet disorders and as a new drug in clinical medicine. In Bailliers Clin. Hematol. June:11(2), 427-45 Rota et al, Sciencexpress 1 May 2003 D.G. Schmidth and T.A.J. Paynes (1963), Biochem., Biophys. Acta, 78:492 M.P. Thompson and C.A. Kiddy (1964), J. Dairy Sci., 47:626 J.C. Mercier, et al. (1968), Bull. Soc. Chim. Biol. 50:521 J.C. Mercier, et al. (1971), Eur. J. Biochem. 23:41 D. Koczan, et al. (1991), Nucl. Acids Res. 19(20):5591 McKnight, R.A., et al. (1989), J. Dairy Sci. 72:2464-73 J.C. Mercier, et al. (1970), Eur. J. Biochem. 16:439 P.L.H. McSweeney et al. (1993), J. Dairy Res. 60:401 Fiat, A.M., et al. (1998) Biochimie, 80(2):2155-65 Meisel, H. and Bockelmann, W. (1999), Antonie Van Leeuwenhoek, 76:207-15 Chabance, B. et al. (1997), Biochem. Mol. Biol. Int. 42(1)77-84 Fiat AM. et al. (1993), J. Diary Sci. 76(1):301-310 Groenen et al, Gene 1993;123:187-93 Stewart, et al, Mol. Biol Evol. 1987:4:231-41 Stewart, et al, Nucl Acids Res 1984;12:3895-907 Stewart et al, Mol Biol Evol. 1987;4:231-43 Alexander et al, Eu. J. Biochem 1988;178:395-401 Malkoski, et al, Antimicrob Agents Chemother, 2001;45:2309-15

本発明の一つの態様によれば、自己免疫疾患または感染症または病態を予防または治療する方法であって、α-、β-、またはκ-カゼインから得られるペプチド、または、それらの組み合わせの治療有効量を、治療または予防を必要とする被験者に投与することによって実行される方法が提供される。

後述する本発明の好ましい実施態様のさらに別の特質によれば、自己免疫疾患または感染症または病態は、ウィルス疾患、ウィルス感染、AIDS、およびHIVによる感染から成るグループから選ばれる。

本発明の別の態様によれば、血液疾患または病態を予防または治療するための方法であって、α-、β-、またはκ-カゼインから得られるペプチド、または、それらの組み合わせの治療有効量を治療または予防を必要とする被験者に投与することによって実行される方法が提供される。

後述の本発明の好ましい実施態様のさらに別の特質によれば、血液疾患または病態は、血小板減少症、汎血球減少症、顆粒球減少症、エリスロポエチン治療可能病態、およびトロンボポエチン治療可能病態から成るグループから選ばれる。

本発明のさらに別の態様によれば、血球形成を調節する方法であって、α-、β-、またはκ-カゼインから得られるペプチド、または、それらの組み合わせの治療有効量を、血球形成の調節を必要とする被験者に投与することによって実行される方法が提供される。

後述の本発明の好ましい実施態様のさらに別の特質によれば、血球形成の調節は、造血細胞増殖の誘発、造血幹細胞の増殖誘発、造血幹細胞の増殖と分化の誘発、巨核細胞増殖の誘発、赤血球増殖の誘発、白血球増殖の誘発、血小板増殖の誘発、プラズマ細胞増殖の誘発、樹状細胞増殖の誘発、および、マクロファージ増殖の誘発から成るグループから選ばれる。

本発明のさらに別の態様によれば、幹細胞の末梢移動度を強化する方法であって、α-、β-、またはκ-カゼインから得られるペプチド、または、それらの組み合わせの治療有効量を、幹細胞の末梢移動度の強化を必要とする被験者に投与することによって実行される方法が提供される。

本発明の別の態様によれば、代謝病または病態を予防または治療するための方法であって、α-、β-、またはκ-カゼインから得られるペプチド、または、それらの組み合わせの治療有効量を、治療または予防を必要とする被験者に投与することによって実行される方法が提供される。

後述の本発明の好ましい実施態様のさらに別の特質によれば、代謝病または病態は、NIDDM、IDDM、糖尿、高血糖症、高脂血症、および高コレステロール血症から成るグループから選ばれる。

本発明の別の態様によれば、自己骨髄、または末梢血幹細胞移植(ASCT)、または同種骨髄移植(BMT)によって支援される骨髄破壊用量の化学・放射線療法に関連する病態を予防または治療する方法であって、α-、β-、またはκ-カゼイン、または、それらの組み合わせから得られるペプチドの治療有効量を、治療または予防を必要とする被験者に投与することによって実行される方法が提供される。

本発明のさらに別の態様によれば、血球刺激因子の作用を増強する方法であって、α-、β-、またはκ-カゼイン、または、それらの組み合わせから得られるペプチドの治療有効量を血球刺激因子作用の増強を必要とする被験者に投与することによって実行される方法が提供される。

後述の本発明の好ましい実施態様のさらに別の特質によれば、血球刺激因子は、トロンボポエチン、エリスロポエチン、および顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)から成るグループから選ばれる。

本発明のさらに別の態様によれば、骨髄破壊レシピエントにおける供与血液幹細胞のコロニー形成を強化する方法であって、供与前に、かつレシピエントに供与血液幹細胞を移植する前に、α-、β-、またはκ-カゼイン、または、それらの組み合わせから得られるペプチドの治療有効量で供与血液幹細胞のドナーを治療することによって実行される方法が提供される。

後述の本発明の好ましい実施態様のさらに別の特質によれば、方法は、レシピエントに血液幹細胞を移植する前に血球刺激因子によって供与血液幹細胞を処理することをさらに含み、血球刺激因子は、トロンボポエチン、エリスロポエチン、および顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)から成るグループから選ばれる。

本発明のさらに別の態様によれば、骨髄破壊レシピエントにおいて供与血液幹細胞のコロニー形成を強化する方法であって、レシピエントに供与血液幹細胞を移植する前に、α-、β-、またはκ-カゼイン、または、それらの組み合わせから得られるペプチドの治療有効量で供与血液幹細胞を処理することによって実行される方法が提供される。

後述の本発明の好ましい実施態様のさらに別の特質によれば、方法は、供与前に、かつレシピエントに供与血液幹細胞を移植する前に、血球刺激因子によってドナーを処理することをさらに含み、血球刺激因子は、トロンボポエチン、エリスロポエチン、および顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)から成るグループから選ばれる。

本発明のさらに別の態様によれば、骨髄破壊レシピエントにおける血液幹細胞のコロニー形成を強化する方法であって、レシピエントに供与血液幹細胞を移植する前に、α-、β-、またはκ-カゼインから得られるペプチド、または、それらの組み合わせの治療的有効量で血液幹細胞を処理することによって実行される方法が提供される。

後述の本発明の好ましい実施態様のさらに別の特質によれば、方法は、レシピエントに血液幹細胞を移植する前に、血球刺激因子によって血液幹細胞を処理することをさらに含み、血球刺激因子は、トロンボポエチン、エリスロポエチン、および顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)から成るグループから選ばれる。

本発明の別の態様によれば、SARS感染源と関連する病態を予防または治療する方法であって、α-、β-、またはκ-カゼイン、または、それらの組み合わせから得られるペプチドの治療有効量を、予防または治療を必要とする被験者に投与することによって実行される方法が提供される。

後述の本発明の好ましい実施態様のさらに別の特質によれば、SARS感染源はコロナウィルスである。

後述の本発明の好ましい実施態様のさらに別の特質によれば、コロナウィルスはSARS-CoVである。

本発明の別の態様によれば、細菌病または病態を予防または治療する方法であって、α-、β-、またはκ-カゼイン、または、それらの組み合わせから得られるペプチドの治療有効量を、予防または治療を必要とする被験者に投与することによって実行される方法が提供される。

後述の本発明の好ましい実施態様の別の特質によれば、ペプチドは、αS1カゼインの断片化によって得られる断片である。

後述の本発明の好ましい実施態様のさらに別の特質によれば、α-、β-、またはκ-カゼインから得られるペプチド、またはそれらの組み合わせは、合成ペプチドである。

後述の本発明の好ましい実施態様のさらに別の特質によれば、α-、β-、またはκ-カゼインから得られるペプチド、またはそれらの組み合わせは、配列番号1-33の内の一つに記載される配列を持つ。

後述の本発明の好ましい実施態様のさらに別の特質によれば、α-、β-、またはκ-カゼインから得られるペプチド、またはそれらの組み合わせは、ペプチドの混合物である。

後述の本発明の好ましい実施態様のさらに別の特質によれば、α-、β-、またはκ-カゼインから得られるペプチドの組み合わせは、共有結合で結合された少なくとも2個のα-、β-、またはκ-カゼイン由来のペプチドを含むキメラペプチドである。

後述の本発明の好ましい実施態様のさらに別の特質によれば、キメラペプチドは、配列番号1-33および434-4000のいずれかに記載される配列を持つ第2カゼインペプチドに共有結合された配列番号1-25の内の一つに記載される配列を持つ第1αS1カゼインペプチドを含む。

後述の本発明の好ましい実施態様のさらに別の特質によれば、方法は、血球刺激因子の有効量を、血球刺激因子を必要とする被験者に投与することをさらに含み、血球刺激因子は、トロンボポエチン、エリスロポエチン、および顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)から成るグループから選ばれる。

後述の本発明の好ましい実施態様のさらに別の特質によれば、方法は、エリスロポエチン、トロンボポエチン、または顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)の有効量を、それを必要とする被験者に投与することをさらに含む。

本発明の一つの態様によれば、自己免疫疾患または感染症または病態を予防または治療する製薬組成物であって、該製薬組成物は、αS1カゼインのN末端部分由来のペプチドを活性成分として、かつ、製薬学的に受容可能な担体を含む。

後述の本発明の好ましい実施態様のさらに別の特質によれば、自己免疫疾患または感染症または病態は、ウィルス疾患、ウィルス感染、AIDS、およびHIVによる感染から成るグループから選ばれる。

本発明の別の態様によれば、血液疾患または病態を予防または治療するための製薬組成物であって、該製薬組成物は、α-、β-、またはκ-カゼインから得られるペプチド、または、それらの組み合わせを活性成分として、かつ、製薬学的に受容可能な担体を含む製薬組成物が提供される。

後述の本発明の好ましい実施態様のさらに別の特質によれば、血液疾患または病態は、血小板減少症、汎血球減少症、顆粒球減少症、エリスロポエチン治療可能病態、トロンボポエチン治療可能病態、および顆粒球コロニー刺激因子治療可能病態から成るグループから選ばれる。

本発明のさらに別の態様によれば、血球形成を調節する製薬組成物であって、α-、β-、またはκ-カゼインから得られるペプチド、または、それらの組み合わせを活性成分として、かつ、製薬学的に受容可能な担体を含む製薬組成物が提供される。

後述の本発明の好ましい実施態様のさらに別の特質によれば、血球形成の調節は、造血誘発、造血幹細胞の増殖誘発、造血幹細胞の増殖と分化の誘発、巨核細胞造血の誘発、赤血球造血の誘発、白血球造血の誘発、血小板造血の誘発、顆粒球造血の誘発、プラズマ細胞増殖の誘発、樹状細胞増殖の誘発、および、マクロファージ増殖の誘発から成るグループから選ばれる。

本発明のさらに別の態様によれば、幹細胞の末梢移動度を強化する製薬組成物であって、α-、β-、またはκ-カゼインから得られるペプチド、または、それらの組み合わせを活性成分として、かつ、製薬学的に受容可能な担体を含む製薬組成物が提供される。

本発明の別の態様によれば、代謝疾患または病態を予防または治療するための製薬組成物であって、α-、β-、またはκ-カゼインから得られるペプチド、または、それらの組み合わせを活性成分として、かつ、製薬学的に受容可能な担体を含む製薬組成物が提供される。

後述の本発明の好ましい実施態様のさらに別の特質によれば、代謝疾患または病態は、NIDDM、IDDM、糖尿、高血糖症、高脂血症、および高コレステロール血症から成るグループから選ばれる。

本発明の別の態様によれば、自己骨髄、または末梢血幹細胞移植(ASCT)、または同種骨髄移植(BMT)によって支援される骨髄破壊用量の化学・放射線療法に関連する病態を予防または治療する製薬組成物であって、α-、β-、またはκ-カゼインから得られるペプチド、または、それらの組み合わせを活性成分として、かつ、製薬学的に受容可能な担体を含む製薬組成物が提供される。

本発明のさらに別の態様によれば、血球刺激因子の作用を増強する製薬組成物であって、α-、β-、またはκ-カゼインから得られるペプチド、または、それらの組み合わせを活性成分として、かつ、製薬学的に受容可能な担体を含む製薬組成物が提供される。

後述の本発明の好ましい実施態様のさらに別の特質によれば、血球刺激因子は、トロンボポエチン、エリスロポエチン、および顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)から成るグループから選ばれる。

本発明の別の態様によれば、骨髄破壊レシピエントにおいて供与血液幹細胞のコロニー形成を強化する製薬組成物であって、α-、β-、またはκ-カゼインから得られるペプチド、または、それらの組み合わせを活性成分として、かつ、製薬学的に受容可能な担体を含む製薬組成物が提供される。

本発明のさらに別の態様によれば、骨髄破壊レシピエントにおける血液幹細胞のコロニー形成を強化する製薬組成物であって、α-、β-、またはκ-カゼインから得られるペプチド、または、それらの組み合わせを活性成分として、かつ、製薬学的に受容可能な担体を含む製薬組成物が提供される。

本発明のさらに別の態様によれば、自己免疫疾患または病態、ウィルス疾患、ウィルス感染、血液学的疾患、血液学的欠乏症、血小板減少症、汎血球減少症、顆粒球減少症、高脂血症、高コレステロール血症、糖尿、高血糖、糖尿病、AIDS、HIV-1、ヘルパーT-細胞障害、樹状細胞減少症、マクロファージ減少症、造血幹細胞障害であって、血小板、リンパ球、プラズマ細胞、および好中球障害を含む造血幹細胞障害、白血病前駆病態、白血病病態、化学療法または放射線療法に起因する免疫系障害、免疫不全および細菌感染による疾患の治療に起因するヒト免疫系障害から成るグループから選ばれる症状を予防または治療するための製薬組成物であって、α-、β-、またはκ-カゼインから得られるペプチド、または、それらの組み合わせを活性成分として、かつ、製薬学的に受容可能な担体を含む製薬組成物が提供される。

本発明の別の態様によれば、血液学的疾患、血液学的欠乏症、血小板減少症、汎血球減少症、顆粒球減少症、樹状細胞減少症、マクロファージ減少症、造血幹細胞障害であって、血小板、リンパ球、プラズマ細胞、および好中球障害を含む障害、白血病前駆病態、白血病病態、骨髄形成異常症候群、非骨髄性悪性腫瘍、再生不良性貧血、および骨髄不全から成るグループから選ばれる症状を予防または治療するための製薬組成物であって、血球刺激因子およびα-、β-、またはκ-カゼインから得られるペプチド、または、それらの組み合わせを活性成分として、かつ、製薬学的に受容可能な担体を含む製薬組成物が提供される。

本発明の一つの態様によれば、配列番号1-33から成るグループから選ばれるアミノ酸配列を持つ精製ペプチドが提供される。

本発明の別の態様によれば、配列番号1-33から成るグループから選ばれるアミノ酸配列を持つ精製ペプチド、および製薬学的に受容可能な担体を含む製薬組成物が提供される。

本発明の別の態様によれば、α-、β-、またはκ-カゼインから得られる、共有結合を持つ少なくとも2個のペプチドを含む精製キメラペプチドが提供される。

本発明のさらに別の態様によれば、α-、β-、またはκ-カゼインから得られる、共有結合を持つ少なくとも2個のペプチドを含む精製キメラペプチド、および、製薬学的に受容可能な担体を含む製薬組成物が提供される。

後述の本発明の好ましい実施態様のさらに別の特質によれば、キメラペプチドは、配列番号1-33および434-4000のいずれかに記載される配列を持つ第2カゼインペプチドに共有結合された配列番号1-25の内の一つに記載される配列を持つ第1αS1カゼインペプチドを含む。

本発明のさらに別の態様によれば、配列番号1-33から成るグループから選ばれるアミノ酸配列を持つ精製ペプチドと組み合わせた血球刺激因子、および製薬学的に受容可能な担体を含む製薬組成物であって、血球刺激因子は、トロンボポエチン、エリスロポエチン、および顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)から成るグループから選ばれる製薬組成物が提供される。

本発明のさらに別の態様によれば、SARS感染源と関連する病態を予防または治療する製薬組成物であって、α-、β-、またはκ-カゼインから得られる、または、それらの組み合わせペプチドを活性成分として、かつ、製薬学的に受容可能な担体を含む製薬組成物が提供される。

後述の本発明の好ましい実施態様のさらに別の特質によれば、SARS感染源はコロナウィルスである。

後述の本発明の好ましい実施態様のさらに別の特質によれば、コロナウィルスはSARS-CoVである。

本発明の別の態様によれば、細菌感染を予防または治療する製薬組成物であって、α-、β-、またはκ-カゼインから得られるペプチド、または、それらの組み合わせを活性成分として、かつ、製薬学的に受容可能な担体を含む製薬組成物が提供される。

後述の本発明の好ましい実施態様の別の特質によれば、ペプチドは、αS1カゼインのN末端部分の断片化によって得られる断片である。

後述の本発明の好ましい実施態様のさらに別の特質によれば、α-、β-、またはκ-カゼインから得られるペプチド、または、それらの組み合わせは合成ペプチドである。

後述の本発明の好ましい実施態様のさらに別の特質によれば、α-、β-、またはκ-カゼインから得られるペプチドは、配列番号1-33の内の一つに記載される配列を持つ。

後述の本発明の好ましい実施態様のさらに別の特質によれば、α-、β-、またはκ-カゼインから得られるペプチドの組み合わせはペプチドの混合物である。

後述の本発明の好ましい実施態様のさらに別の特質によれば、α-、β-、またはκ-カゼインから得られるペプチドの組み合わせは、α-、β-、またはκ-カゼインから得られる、共有結合を持つ少なくとも2個のペプチドを含むキメラペプチドである。

後述の本発明の好ましい実施態様のさらに別の特質によれば、キメラペプチドは、配列番号1-33および434-4000のいずれかに記載される配列を持つ第2カゼインペプチドに共有結合された配列番号1-25の内の一つに記載される配列を持つ第1αS1カゼインペプチドを含む。

後述の本発明の好ましい実施態様のさらに別の特質によれば、製薬組成物は、活性成分としてさらに血球刺激因子含み、血球刺激因子は、トロンボポエチン、エリスロポエチン、および顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)から成るグループから選ばれる。

後述の本発明の好ましい実施態様のさらに別の特質によれば、製薬組成物は、エリスロポエチン、トロンボポエチン、または顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)を活性成分としてさらに含む。

本発明のさらに別の態様によれば、カゼインのタンパク分解加水分解産物の低温処理法であって、タンパク分解酵素を含むカゼインのタンパク分解加水分解産物を入手すること、カゼインのタンパク分解加水分解産物を冷却してタンパク分解酵素を不活性化すること、カゼインタンパク加水分解産物のpHを酸性pHに調整すること、酸性カゼインタンパク加水分解産物をろ過すること、ろ液を収集すること、およびろ液をさらに酸性化して、天然カゼイン由来のタンパクを沈殿すること、沈殿を分離し収集すること、沈殿のpHをアルカリpHに調整し、タンパク分解酵素を非可逆的に不活性化すること、および、沈殿のpHをpH7-9に調整し、それによってカゼインタンパク加水分解産物を低温で処理することによって実行される方法が提供される。

本発明の別の態様によれば、前述の方法によって低温で処理されるカゼインタンパクの加水分解産物が提供される。

後述の本発明の好ましい実施態様のさらに別の特質によれば、工程bは、約10℃に冷却することを含む。

後述の本発明の好ましい実施態様のさらに別の特質によれば、工程cのpH調節は、酸を2%まで添加することを含み、工程dのろ液の酸性化は、酸をさらに約10%(w/v)酸まで添加することを含む。

後述の本発明の好ましい実施態様のさらに別の特質によれば、工程fのアルカリpHは、少なくともpH9である。

本発明は、ヒトの疾患の治療のために、ペプチドであって、αS1カゼインのN-末端部分、αS2-カゼイン、β-カゼイン、およびκ-カゼインから得られ、検出される毒性を持たず、高度な治療効力を発揮するペプチドおよびそれらペプチドの組み合わせを提供することによって、現在既知の構成形態の欠点に真っ直ぐに対応して成功を収める。

本発明は、本明細書において、付属の図面を参照しながら、実例の提示のためにのみ説明される。ここで特に図面の詳細を参照するに当たり、細部は、例示のために掲げられ、本発明の好ましい実施態様を具体的に論ずるためにのみ示され、本発明の原理および概念的側面の、もっとも効果的で、分かり易い説明であると考えられるものを提供するという思想に基づいて提示されるものであることが強調される。この点で、本発明の基本的理解にとって必要な程度以上に詳細に本発明の構造的細部を示すような試みはしていない。図面と共に参照される説明は、本発明のいくつかの形態が実際にどのように具体化されるのかを当業者に明らかにするものである。

本発明は、ミルクカゼインのαS1-、αS2-、β-、またはκ-カゼイン分画の配列由来の、または配列近似のペプチド、同ペプチドを含む組成物、および、同ペプチドを利用する方法、例えば、免疫反応を刺激し、強化する方法、ウィルス感染から保護する方法、免疫反応の刺激および強化、ウィルス感染に対する保護、血清コレステロールレベルの正常化、および造血機能刺激において同ペプチドを利用する方法である。このカゼイン由来ペプチドは無毒であり、例えば、免疫病理、高コレステロール血症、血液学的障害、およびウィルス関連疾患の治療および予防に使用することが可能である。

本発明の原理および操作は、図面と付属の説明を参照することによりさらによく理解されよう。

本発明の少なくとも一つの実施態様を精しく説明する前に、本発明の応用は、下記の説明において記載され、実施例において例示される細部にのみ限定されるものではないことを理解しなければならない。本発明は、他の実施態様であってもよいし、様々なやり方で実施または実行することが可能である。さらに、本明細書に用いられる表現法および用語法は記載目的のためであって、限定的と見なすべきでないことを理解しなければらない。

本明細書で用いる「治療する」という用語は、病気の進行を実質的に抑制する、遅滞させる、または逆転させること、および/または、病気の臨床症状を実質的に緩和することを含む。

本明細書で用いる「予防する」という用語は、病気の臨床症状の出現を実質的に阻止することを含む。

本明細書で用いる「ペプチド」という用語は、天然ペプチド(分解産物、合成的に合成されたペプチド、または組み換えペプチド)、および、ペプチド擬似物(通常、合成的に合成されたペプチド)、例えば、ペプチド類縁体であるペプトイドおよびセミペプトイドであって、例えば、ペプチドを生体中でより安定にする修飾を有するペプトイドおよびセミペプトイドを含む。このような修飾としては、環化、N末端修飾、C末端修飾、ペプチド結合修飾であって、例えば、CH2-NH, CH2-S, CH2-S=O, O=C-NH, CH2-O, CH2-CH2, S=C-NH, CH=CH、またはCF=CHを含むペプチド結合修飾、バックボーン修飾、および残基修飾が挙げられるが、ただしこれらの限定されない。ペプチド擬似化合物を調製する方法は、従来技術でよく知られており、例えば、Quantitative Drug Design, C.A. Ramsden Gd., Chapter 17.2, F. Choplin Pergamon Press (1992)に具体的に書かれている。なお、この文書を参照することにより完全に記載されたものとして本明細書に含めることとする。この点に関するさらに詳細が後述される。

従って、本発明のペプチドは環状ペプチドであってもよい。環状化は、例えば、アミド結合形成を通じて、例えば、鎖(-CO-NHまたは-NH-CO結合)の様々な位置にGlu、Asp、Lys、Orn、ジアミノブチル酸(Dab)、ジアミノプロピオン酸(Dap)を取り込むことによって実現することが可能である。バックボーン対バックボーン環状化も、式H-N((CH2)n-COOH)-C(R)H-COOH、またはH-N((CH2)n-COOH)-C(R)H-NH2の修飾アミノ酸を取り込むことによって実現することが可能である。式中、n = 1-4であり、Rは、アミノ酸の天然の、または非天然の側鎖である。

2個のCys残基の取り込みによるS-S結合の形成を介する環状化も可能である。さらに側鎖対側鎖環状化も、n=1または2である、式-(-CH2-)n-S-CH2-C-の相互作用結合を通じて実現することが可能である。この結合は、例えば、CysまたはホモCysを取り込み、その遊離SH基を、例えば、ブロモアセチル化Lys、Orn、Dab、またはDapと反応させることによって実現することが可能である。

ペプチド内のペプチド結合(-CO-NH-)は、例えば、N-メチル化結合(-N(CH3)-CO-)、エステル結合(-C(R)H-C-O-O-C(R)-N-)、ケトメチレン結合(-CO-CH2-)、α-アザ結合(-NH-N(R)-CO-)であって、式中Rは、任意のアルキル、例えば、メチルであるα-アザ結合、カルバ結合(-CH2-NH-)、ヒドロキシエチレン結合(-CH(OH)-CH2-)、チオアミド結合(-CS-NH-)、オレフィン二重結合(-CH=CH-)、レトロアミド結合(-NH-CO-)、ペプチド誘導体(-N(R)-CH2-CO-)であって、式中Rは、炭素原子に天然に見られる「正常の」側鎖であるペプチド誘導体によって置換されてもよい。

これらの修飾は、ペプチド鎖に沿う結合の内の任意のもので起こってもよいし、また同時に数箇所(2-3)で起こってもよい。

天然の芳香族アミノ酸、Trp、Tyr、およびPheは、合成の、非天然酸、例えば、TICのような酸、ナフチルエラニン(Nol)、Pheの環メチル化誘導体、Pheまたはo-メチル-Tyrのハロゲン化誘導体によって置換されてもよい。

下記の表1-2は、全て、天然に見られるアミノ酸(表1)および、非通例的、または修飾アミノ酸(表2)を列挙する。

本発明によるペプチドは、独立形として用いてもよいし、あるいは、タンパクおよび表示成分、例えば、表示細菌およびファージのような成分の一部として使用してもよい。本発明のペプチドは、一つのポリペプチド鎖において、あるいは、共有的に架橋された複数の鎖において、ダイマー(二量体)またはマルチマー(多量体)を提示するように化学的に修飾されてもよい。

さらに、本発明によるペプチドは、少なくとも2個の、選択的に任意に少なくとも3個の、選択的に任意に少なくとも4個の、選択的に任意に少なくとも5個の、選択的に任意に少なくとも6個の、選択的に任意に少なくとも7個の、選択的に任意に少なくとも8個の、選択的に任意に少なくとも9個の、選択的に任意に少なくとも10個の、選択的に任意に少なくとも11個の、選択的に任意に少なくとも12個の、選択的に任意に少なくとも13個の、選択的に任意に少なくとも14個の、選択的に任意に少なくとも15個の、選択的に任意に少なくとも16個の、選択的に任意に少なくとも17個の、選択的に任意に少なくとも18個の、選択的に任意に少なくとも19個の、選択的に任意に少なくとも20個の、選択的に任意に少なくとも21個の、選択的に任意に少なくとも22個の、選択的に任意に少なくとも23個の、選択的に任意に少なくとも24個の、選択的に任意に少なくとも25個の、選択的に任意に少なくとも26個の、選択的に任意に少なくとも26から60個の、またはそれ以上のアミノ酸残基(これは、本明細書では、相互交換的にアミノ酸とも呼ばれる)を含む。

従って、本明細書で用いる「1個のアミノ酸」または「複数個のアミノ酸」という用語は、20種の天然に見られるアミノ酸を含むことが理解され、これらのアミノ酸は生体内においてしばしば翻訳後に修飾され、例えば、ヒドロキシプロリン、フォスフォセリン、およびフォスフォトレオニンを含む。その他の異常なアミノ酸としては、2-アミノアジピン酸、ヒドロキシリシン、イソデスモシン、ノルバリン、ノルロイシン、およびオルニチンが挙げられるが、ただしこれらに限定されない。さらに、「アミノ酸」という用語は、D-とL-アミノ酸の両方を含む。

本明細書で用いる「α-、β-、またはκ-カゼインから得られる」という言葉は、本明細書で定義される通りのペプチド、例えば、α-、β-、またはκ-カゼインの開裂産物(本明細書では、天然カゼイン由来のペプチドと呼ばれる)、α-、β-、またはκ-カゼインのアミノ酸配列と一致するように化学的に合成される合成ペプチド(本明細書では、カゼイン由来の合成ペプチドと呼ばれる)、αS1カゼイン、αS2-カゼイン、β-カゼイン、κ-カゼインに類似の(相同の)ペプチド、例えば、1個以上のアミノ酸置換体、例えば、少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、さらに好ましくは少なくとも90%の類似性が維持される、許容可能な置換体、およびそれらの機能的相同体によって特徴づけられるペプチドを指すが、ただしこれらに限定されない。本明細書で用いる「相同体」および「機能的相同体」という用語は、ペプチドであって、そのペプチドの生物活性に影響しない限り、任意の挿入体、欠失、および置換体を有するペプチドを意味する。

本明細書で用いる「α-、β-、またはκ-カゼインから得られるペプチド、およびそれらの組み合わせ」という言葉も、互いに組み合わせられた前述のペプチドを指す。本明細書で用いる「それらの組み合わせ」という言葉は、α-、β-、またはκ-カゼインから得られた前述のペプチドであって、これもα-、β-、またはκ-カゼインから得られた1種以上の別のペプチドと、混合物および/またはキメラペプチドとして組み合わせられる任意のペプチドと定義される。本明細書で用いる「混合物」という用語は、複数のペプチドであって互いに変動可能な比率で存在する、非共有的組み合わせと定義され、一方、「キメラペプチド」という用語は、少なくとも二つの、同一のまたは別々のペプチドであって、互いに共有的に付着するペプチドと定義される。この付着は、適当なものであれば、いずれの化学的結合であってもよく、直接的でも、あるいは、間接的でも、例えば、ペプチド結合、または、介在的リンカー要素、例えば、リンカーペプチド、または、その他の化学的官能基、例えば、有機ポリマーを介した結合であってもよい。このようなキメラペプチドは、ペプチド同士のカルボキシ(C)末端またはアミノ(N)末端を介して結合してもよいし、内部の化学基、例えば、直鎖、分枝鎖、または環状側鎖、内部の炭素または窒素原子等への結合を介して結合してもよい。本発明の好ましい実施態様によれば、キメラペプチドは、配列番号1-25の内の任意の配列番号に記載されるαS1カゼインのN末端部分から得られるペプチドであって、配列番号1-33および434-4000の内の任意の配列番号に記載されるα-、β-、またはκ-カゼインから得られるペプチドのアミノ(N)末端と、カルボキシル(C)末端を介して結合されるペプチドを含む。配列番号434-4000は、後述の天然カゼイン(配列番号25および27-33)から得られる大および小ペプチド由来の少なくとも2個のアミノ酸から成る全ての可能なペプチドを表す。さらに別の実施態様では、本発明のキメラペプチドは、配列番号1-33および34-4000に記載されるアミノ酸配列を持つ任意のペプチドと、配列番号1-33および34-4000の内の任意の配列番号に記載されるアミノ酸配列を有するペプチドの内の任意の別のペプチドに対して共有結合された、あらゆる可能な組み合わせを含むことが可能であることを理解しなければならない。このようなキメラペプチドは、配列番号1-33および434-4000に記載されるアミノ酸配列を有するペプチド同士の、膨大ではあるが、有限な組み合わせの内から任意に選ばれる組み合わせに基づいて、従来技術において通常の錬度を有する人によって、ペプチド合成および/またはペプチド同士の共有結合に関する既知の方法を用いて、簡単に特定し、調製することが可能である。配列番号1-25に記載されるαS1カゼインから得られるペプチドと、配列番号27および28、指定された配列番号34-433、に記載されるβ-カゼインから得られるペプチドとの、共有的結合による組み合わせを含む、このようなキメラペプチドの非限定的例が、下記の図26に表される。

本発明のキメラペプチドは、組み換え手段によって生産してもよいし、あるいは、例えば、固相ペプチド合成技術を用いて、1種以上のアミノ酸残基を定められた順序で段階的に付加することによって化学的に合成してもよい。ペプチドは、他のタンパクと組み合わせて合成し、次に化学的開裂によって単離してもよいし、あるいはそれと別に、ペプチドまたは多価ペプチドは、複数の反復ユニットを用いて合成してもよい。ペプチドは、天然に見られるアミノ酸残基を含んでもよいし、あるいは、非天然性のアミノ酸残基、例えば、D-異性体、または化学的に修飾された天然性残基を含んでもよい。後者の残基は、例えば、ペプチドに対し立体配置上の制限および/または限定を促進または設定するために必要とされてもよい。対象ペプチドを生産する方法の選択は、ペプチドの要求タイプ、量、および純度を始め、生産の容易さおよび便利さなどの要因に依存する。

本発明のキメラペプチドは先ず、インビボで使用されるために化学的修飾を必要とすることがある。対象ペプチドの化学的修飾は、その生物活性を向上させるために重要な場合がある。このような化学的に修飾されたキメラペプチドは「類縁体」と呼ばれる。「類縁体」という用語は、本発明のキメラペプチドに対し、任意の機能的化学的または組み換え等価物であって、もっとも好ましい実施態様では、前述の生物活性の内の少なくとも一つを持つことによって特徴づけられる等価物である。「類縁体」という用語も、本明細書では、前述のペプチドの任意のアミノ酸誘導体を含むように拡張されて用いられる。

本明細書に考慮されるキメラペプチドの類縁体は、ペプチド合成の際に見られる、側鎖への修飾、非天然アミノ酸および/またはその誘導体の取り込み、クロスリンカーの使用、および、ペプチドまたはその類縁体に立体配置制限を課する他の方法の使用が挙げられるが、ただしこれらに限定されない。

本発明によって考慮される側鎖修飾の例としては、アミノ基の修飾、例えば、アルデヒドとの反応に続く、NaBH4による還元に基づく還元的アルキル化;メチルアセチミデートによるアミジン化;無水酢酸によるアシル化;シアン酸塩によるアミノ基のカルバモイル化;2,4,6-トリニトロベンゼンスルフォン酸(TNBS)によるアミノ基のトリニトロベンジル化;無水クエン酸および無水テトラヒドロフタル酸によるアミノ基のアシル化;および、ピリドキサル-5’-フォスフェートによるリシンのピリドキシル化に続くNaBH4による還元に基づくリシンのピリドキシル化等によるアミノ基の修飾が挙げられる。

アルギニン残基のグアニジン基は、試薬、例えば、2,3-ブタンジオン、フェニルグリオキサール、およびグリオキサールのような試薬によって複素環縮合産物を形成することによって修飾してもよい。

カルボキシル基は、O-アシルイソ尿素形成を介するカルボジイミド活性化に続く、誘導体形成、例えば、対応アミドの形成によって修飾してもよい。

スルヒドリル基は、イオド酢酸またはイオドアセタミドによるカルボキシメチル化;過ギ酸酸化によるシステイン酸形成;他のチオール化合物との混合ジスルフィドの形成;マレイミド、無水マレイン酸、またはその他のマレイミド置換体との反応;4-クロロマーキュリベンゾエート、4-クロロマーキュリフェニルスルフォン酸、フェニルマーキュリクロリド、2-クロロマーキュリ-4-ニトロフェノール、およびその他の水銀化合物による水銀誘導体の形成;アルカリ性pHにおけるシアン酸塩によるカルバモイル化等の方法によって修飾されてもよい。

トリプトファン残基は、例えば、N-ブロモスクシニミドによる酸化、または、2-ヒドロキシ-5-ニトロベンジルブロミド、またはハロゲン化スルフェニルによるインドール環のアルキル化によって修飾されてもよい。一方、チロシン残基は、テトラニトロメタンによって窒素付加されて3-ニトロチロシン誘導体を形成することによって改変されてもよい。

ヒスチジン残基のイミダゾール環の修飾は、イオド酢酸誘導体によるアルキル化、あるいは、ヂエチルピロカルボネートによるN-カルベトキシル化によって実現してもよい。

ペプチド合成における非天然アミノ酸および誘導体の取り込みの例としては、ノルロイシン、4-アミノブチル酸、4-アミノ-3-ヒドロキシ-5-フェニルペンタン酸、6-アミノヘキサン酸、t-ブチルグリシン、ノルバリン、フェニルグリシン、オルニチン、サルコシン、4-アミノ-3-ヒドロキシ-6-メチルヘプタン酸、2-チエニルアラニン、および/または、アミノ酸のD-異性体の使用が挙げられるが、ただしこれらに限定されない。

本明細書で用いる「αS1カゼインのN末端部分に由来する」という言葉は、この用語が本明細書で定義される通りのペプチド、例えば、αS1カゼインの開裂産物(本明細書では、天然カゼイン由来のペプチドと呼ばれる)、αS1カゼインのN末端部分のアミノ酸配列に一致するように化学的に合成される合成ペプチド(本明細書では、カゼイン由来の合成ペプチドと呼ばれる)、αS1カゼインのN末端部分と類似(相同)のペプチド、例えば、1個以上のアミノ酸置換体、例えば、少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、さらに好ましくは少なくとも90%の類似性が維持される、許容可能な置換体、およびそれらの機能的相同体によって特徴づけられるペプチドを指すが、ただしこれらに限定されない。本明細書で用いる「相同体」および「機能的相同体」とは、ペプチドであって、そのペプチドの生物活性に影響しない限り、任意の挿入体、欠失、および置換体を有するペプチドを意味する。

本明細書で用いる「α-、β-、またはκ-カゼインから得られる」という言葉は、この用語が本明細書で定義される通りのペプチド、例えば、α-、β-、またはκ-カゼインの開裂産物(本明細書では、天然カゼイン由来のペプチドと呼ばれる)、α-、β-、およびκ-カゼインのアミノ酸配列に一致するように化学的に合成される合成ペプチド(本明細書では、α-、β-、およびκ-カゼイン由来の合成ペプチドと呼ばれる)、α-、β-、またはκ-カゼインと類似(相同)のペプチド、例えば、1個以上のアミノ酸置換体、例えば、少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、さらに好ましくは少なくとも90%の類似性が維持される、許容可能な置換体、およびそれらの機能的相同体によって特徴づけられるペプチドを指すが、ただしこれらに限定されない。本明細書で用いる「相同体」および「機能的相同体」とは、ペプチドであって、そのペプチドの生物活性に影響しない限り、任意の挿入体、欠失、および置換体を有するペプチドを意味する。

本明細書で用いる「α-カゼイン」、「β-カゼイン」、および「κ-カゼイン」という用語は、哺乳動物、例えば、家畜哺乳類(例えば、ウシ、ヒツジ、ヤギ、雌ウマ、ラクダ、シカ、およびバッファロー)、ヒト、および海棲哺乳類を含む哺乳動物の「αS1-カゼイン」、「αS2-カゼイン」、「β-カゼイン」、および「κ-カゼイン」を指すが、ただしこれらに限定されない。下記は、既知のアミノ酸配列を有するαS1-カゼイン、β-カゼイン、およびκ-カゼインの、それぞれを特定するGenBank(NCBI)のアクセス番号および供給源のリストを示す。αS1-カゼイン:CAA26982(Ovis aries(ヒツジ))、CAA51022(Capra hircus(ヤギ))、CAA42516(Bos taurus(ウシ))、CAA55185(Homo sapiens)、CAA38717(Sus scrofa(ブタ))、P09115(ウサギ)、およびO97943(Camelus dromedurius(ラクダ));β-カゼイン:NP(851351(Bos taurus(ウシ))、NP058816(Rattus norvegicus(ラット))、NP001882(Homo sapiens(ヒト))、NP034102(Mus musculus(マウス))、CAB39313(Capra hircus(ヤギ))、CAA06535(Bubalus bubalis(水牛))、CAA38718(Sus scrofa(ブタ))、BAA95931(Canis familiaris(イヌ))、およびCAA34502(Ovis aires(ヒツジ));κ-カゼイン:NP776719(Bos taurus(ウシ))、NP113750(Rattus norvegicus(ラット))、NP031812(Mus musculus(マウス))、NP005203(Homo sapiens(ヒト))、およびAAM12027(Capra hircus(ヤギ))。

本明細書で用いる「N末端部分」という用語は、αS1-カゼインの最初の60個のアミノ酸から得られるαS1-カゼインのM個のアミノ酸を指し、Mは、2と60の間(整数2と60を含む)の任意の整数である。好ましくは、この用語は、αS1-カゼインの最初のM個のアミノ酸を指す。

本発明のペプチドは、前述したようにミルクからの抽出によって、あるいは、当業者に知られる標準法である固相ペプチド合成によって得られる。本発明のペプチドの精製は、当業者に既知の標準技術、例えば、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、剛性セルロース膜(Millipore)によるダイアフィルトレーション、およびゲルフィルトレーションのような技術によって実行される。本発明のペプチドを得るためのミルクカゼイン断片化は、後述するように、各種酵素的および/または化学的手段によって実行することが可能である。

下記に詳述し、後述の実施例の節で例示するように、本発明のペプチドは様々の治療効果をもたらす。実施例の節では、従来技術において通常の錬度を持つ人が、ある特定の治療作用について、本発明の教示に基づいて設計される特定のペプチドを試験することができる多くのアッセイが提供される。本明細書に記載されるペプチドのどれもそのまま投与が可能であるし、あるいは、疾患の治療または予防のために使用が可能な製薬組成物として処方することが可能である。このような組成物は、活性成分として、本明細書に記載されるペプチドの内の任意のもの、および製薬学的に受容可能な担体を含む。

本明細書で用いる「製薬組成物」とは、本明細書に記載されるペプチドの内の1種以上と、他の化学的成分、例えば、製薬学的に適当な担体および賦形剤とから成る製剤を指す。製薬組成物の目的は、化合物の、生物体への投与を促進することである。

以後、「製薬学的に受容可能な担体」という用語は、生物体に目立った刺激作用を起こさず、投与化合物の生物活性と特性を打ち消すことのない担体または希釈剤を指す。担体の、限定的でない実例としては、プロピレングリコール、生食液、有機溶媒と水の乳剤および混合液がある。本明細書における「賦形剤」という用語は、化合物の投与さらに促進するために、製薬組成物に加えられる不活性物質を指す。賦形剤の、限定的でない実例としては、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、各種糖類および各種タイプのでん粉、セルロース誘導体、ゼラチン、植物油、およびポリエチレングリコールが挙げられる。

薬剤の処方および投与のための技術は、”Remington's Pharmaceutical Sciences,” Mack Publishing Co., Easton, PA、最新版に見出されるかも知れない。

好適な投与ルートとしては、例えば、経口、直腸、経粘膜、小腸、または非経口輸送、例えば、筋肉内、皮下、および脊髄内注入を始め、硬膜下腔内、脳室内直接、静脈内、腹腔内、鼻腔内、または眼球内注入を含む非経口輸送が挙げられる。

本発明の製薬組成物は、従来技術でよく知られる処理過程によって、例えば、従来の混合、溶解、顆粒化、糖衣被覆、磨砕、乳化、カプセル封入、封入または凍結乾燥過程によって製造されてもよい。

本発明に従って使用される製薬組成物は、活性成分を処理して、製薬学的に使用することが可能な製剤に変える過程を促進する賦形剤および補助剤を含む、1種以上の製薬学的に受容可能な担体を用いて通例のやり方で処方されてもよい。適切な処方は、選んだ投与ルートに依存する。

注入用としては、本発明のペプチドは、水溶液として、好ましくは、生理的に適合するバッファー、例えば、ハンクス液、リンゲル液、または、生理食塩バッファーであって、例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールのような有機溶媒を含む、あるいは、含まないバッファー溶液として処方されてもよい。経皮投与用としては、浸透剤が処方の中に使用される。このような浸透剤は従来技術において一般的に知られる。

経口投与用としては、ペプチドは、活性ペプチドを、従来技術でよく知られる製薬学的に受容可能な担体と組み合わせることによって簡単に調製することが可能である。このような担体により本発明のペプチドは、患者による経口摂取のために、錠剤、丸剤、糖剤、カプセル、液剤、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁剤等として処方することが可能となる。経口使用のための製剤は、固体賦形剤を用いて、選択的に任意に得られた混合物を、選択的に適当な補助剤を添加した後に、粉砕し、顆粒から成る混合物を処理することによって錠剤または糖剤コアを得ることによって製造される。適切な賦形剤は、特に、充填剤、例えば、糖類、例えば、ラクトース、スクロース、マンニトール、またはソルビトールを含む糖類;セルロース製剤、例えば、トウモロコシでん粉、小麦でん粉、米でん粉、じゃがいもでん粉、ゼラチン、トラガカントゴム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピル-セルロース、ナトリウムカルボメチルセルロースのようなセルロース製剤;および/または、生理学的に受容可能なポリマー、例えば、ポリビニールピロリドン(PVP)のような充填剤である。選択的に、崩壊剤、例えば、架橋結合ポリビニールピロリドン、寒天、アルギン酸またはその塩、例えば、アルギン酸ナトリウムのような崩壊剤を加えてもよい。

糖衣剤コアには、適切なコーティングが供給される。このために、選択的に任意に、アラビアゴム、タルク、ポリビニールピロリドン、カルボポルゲル、ポリエチレングリコール、二酸化チタン、ラッカー液、および好適な有機溶媒または有機混合物を含む、濃縮糖液が用いられてもよい。特定用に、あるいは、活性成分用量の異なる組み合わせの特徴づけとして、染料または色素を錠剤または糖剤コーティングに加えてもよい。

経口的に使用が可能な製薬組成物は、ゼラチン製の押し込み型カプセルを始め、ゼラチン製の柔軟、密封カプセル、および、グリセロールまたはソルビトールのような可塑剤を含む。押し込み型カプセルは、活性剤を、ラクトースのような充填剤、でん粉のような結合剤、タルクまたはステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤、および、選択的に任意に、安定化剤と混合させた状態で含んでもよい。柔軟カプセルにおいて、活性ペプチドは、適当な液体、例えば、脂肪性オイル、流動パラフィン、または液体ポリエチレングリコールに溶解または懸濁されてもよい。さらに、安定化剤を加えてもよい。経口投与用処方は全て、選ばれた投与ルートにとって好適な剤形として存在していなければならない。

頬内投与用としては、組成物は、従来のやり方で処方された錠剤またはトローチの形を取ってもよい。

吸引による投与用としては、本発明によるペプチドは、適当な推進剤、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロメタン、または二酸化炭素のような推進剤を用い、加圧パックまたは噴霧器から、エロゾルスプレイとして好適に輸送される。加圧エロゾルの場合、用量単位は、測定量を輸送するためのパルブを設けることによって定めることが可能である。吸引器または吸入器に使用される、例えば、ゼラチン製のカプセルおよびカートリッジは、化合物と、適当な粉末基材、例えば、ラクトースまたはでん粉とから成る粉末混合物を含むように処方されてもよい。

本明細書に記載されるペプチドは、例えば、ボーラス注入、または、連続輸液による、非経口投与用に処方されてもよい。注入用処方は、単位剤形として、例えば、アンプルで、または、選択的に任意に防腐剤を添加された複数用量容器に収めた状態で提供されてもよい。組成物は、懸濁液、溶液、油状または水性媒体における乳剤であってもよく、かつ、懸濁剤、安定化剤、および/または分散剤のような処方剤を含んでもよい。

非経口投与用製薬組成物は、水溶性の活性製剤の水溶液を含む。さらに、活性ペプチドの懸濁液は、必要に応じて、油状注入懸濁液として調製してもよい。好適な親油性溶媒または媒体としては、脂肪性油、例えば、ごま油、合成脂肪酸エステル、例えば、オレイン酸エチル、トリグリセリド、あるいは、リポソームが挙げられる。水性注入懸濁液は、懸濁液の粘度を増す物質、例えば、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ソルビトール、またはデキストランのような物質を含んでもよい。選択的に任意に、懸濁液はまた、適当な安定化剤、または、ペプチドの可溶性を増し、高濃縮液の調製を可能とする薬剤を含んでもよい。

それとは別に、活性成分は、適当な媒体、例えば、無菌の、発熱物質を含まない水と、使用前に組み合わせられるように粉末剤形として存在してもよい。

本発明のペプチドはまた、通例の坐剤基材、例えば、カカオ脂またはその他のグリセリドを用いた、坐剤または保持注腸のような直腸組成物として処方してもよい。

本明細書に記載される製薬組成物はまた、ゲル相担体または賦形剤から成る適当な固体を含んでもよい。このような担体または賦形剤の例としては、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、各種糖、でん粉、セルロース誘導体、ゼラチン、および、ポリエチレングリコールのようなポリマーが挙げられるが、ただしこれらに限定されない。

当業者ならば、本発明のペプチドのどれについても、至適用量および投与方法を簡単に定めることが可能である。

本発明の教示に従って使用されるどのペプチドについても、治療的に有効な量、これは、治療的有効用量とも呼ばれるが、始めは、細胞培養アッセイ、またはインビボの動物アッセイにおいて推定される。例えば、動物モデルにおいて、細胞培養で求めたIC50またはIC100を含む循環濃度範囲を実現する用量が処方される。このような情報を用いて、ヒトに対して有用な用量がさらに正確に決められる。初回用量も、インビボデータから推定される。これら初期のガイドラインを用いるならば、当業者であればヒトにおける有効用量を定めることは可能であろう。

さらに、本明細書に記載されるペプチドの毒性および治療効力は、細胞培養または実験動物における標準的な薬理学的過程によって、例えば、LD50およびED50を求めることによって決めることが可能である。毒性作用と治療作用の間の用量比は治療示数であり、LD50とED50の間の比として表される。高い治療示数を示すペプチドが好ましい。これらの細胞培養アッセイおよび動物実験から得られたデータは、ヒトにおいて使用される有毒でない用量範囲を処方するのに用いられる。このようなペプチドの用量は、ED50を含むが、ほとんど、または全く毒性を含まない、循環濃度範囲内に収まるものであることが好ましい。この用量は、採用された剤形および利用される投与ルートに応じて、この範囲内で変動してもよい。厳密な処方、投与ルート、および用量は、患者の病態に徴して個々の医師によって選択される(例えば、Fingl et al., 1975, In: The Pharmacological Basis of Therapeutics, chapter 1, page 1)。

投与量および間隔は、治療効果を維持するのに十分な、活性成分の血漿レベルを実現するように個別に調整されてもよい。経口投与用の通常の患者用用量は、1回の投与当たり約1-1000 mg/kg/投与、一般的には投与当たり約10-500 mg/kg、好ましくは投与当たり約20-300 mg/kg、およびもっとも好ましくは投与当たり約50-200 mg/kgである。ある場合には、治療的に有効な血清レベルは、毎日複数の用量を投与することによって実現される。局所投与または選択的摂取の場合は、薬剤の有効局所濃度は、血漿濃度に関わらないことがある。当業者であれば、面倒な実験を要することなく、治療的に有効な局所用量を最適化することが可能であろう。

治療する病態の重度および反応性に応じて、投与もまた、徐放性組成物の単回投与であって、治療経過が、治癒が実行されるまで、あるいは、病状の減退が実現されるまで、数日から数週続く単回投与であることも可能である。

投与される組成物の量は、当然、治療される被験者、病気の重度、投与のやり方、処方する医師の判断等に依存する。

本発明の組成物は、必要なら、パックまたは投薬デバイス、例えば、活性剤を含む1種以上の剤形を含むFDA承認キットとして提供されてもよい。パックは、例えば、金属フォイル、またはプラスチックフォイル、例えば、泡状パックを含んでもよい。パックまたは投薬デバイスには投与のための指示が付属していてもよい。パックまたは投薬器にはまた、薬剤の製造、使用、または販売を規制する政府当局によって設定される形式において、容器に付属する注意書きを伴っていてもよい。この注意書きは、組成物の形式、あるいはヒトまたは家畜投与に関する当局による承認を反映するものである。この注意書きは、例えば、処方薬に関して米国食品薬品局によって承認されるラベル、あるいは、承認される薬品付帯書であってもよい。適合的製薬担体に溶解されて処方される本発明のペプチドを含む組成物はまた、調製され、適当な容器に入れられ、適応病態の治療または予防、あるいは、所望の事態の誘発という内容のラベルを付着される。ラベルに示される適当な適応症として、自己免疫疾患または病態、ウィルス疾患、ウィルス感染、細菌感染、血液学的疾患、血液学的欠乏症、血小板減少症、汎血球減少症、顆粒球減少症、エリスロポエチン治療可能病態、トロンボポエチン治療可能病態、高脂血症、高コレステロール血症、糖尿、高血糖、糖尿病、AIDS、HIV-1による感染、コロナウィルスまたはSARS感染、ヘルパーT-細胞障害、樹状細胞減少症、マクロファージ減少症、造血幹細胞障害であって、血小板、リンパ球、プラズマ細胞、および好中球障害を含む障害、造血幹細胞増殖、造血幹細胞増殖および分化、白血病前駆病態、白血病病態、化学療法または放射線療法に起因する免疫系障害、免疫不全疾患の治療に起因するヒト免疫系障害の治療および/または予防が挙げられる。

本発明による製薬組成物は、血液系成分の維持および/または回復、血球数のバランス維持、血液における代謝産物、例えば、糖、コレステロール、尿酸、尿素、および、アルカリフォスファターゼのような酵素を含む代謝産物のレベルのバランス維持に有用である可能性がある。さらに、本発明の製薬組成物は、血球増殖の誘発、白血球数および赤血球数の調節、特に、白血球数および赤血球数の増加、血液におけるヘモグロビンレベルの上昇、および、血小板数の調節に有用である可能性がある。

ある生理学的パラメータと関連して本明細書で用いられる「バランス維持」という用語は、その参照パラメータのレベルを変えて、それらを正常の値により近づけることを意味する。生理的過程、例えば、血球形成に関連して本明細書で用いられる「調節」という用語は、前記過程の質および/または量、例えば、頻度、特質、持続、結果、大きさ、周期性等を増減することを含む質および/または量の変化を実現することと定義される。このような調節の例としては、後述の、αS1-およびβ-カゼインによる巨核球増殖、樹状細胞増殖の促進、G-CSFによるCFU-GMコロニー増殖に対する作用がある。本発明の好ましい実施態様の背景においては、生理的および代謝的パラメータの「バランス維持」および/または「調節」は生物学的反応の修飾を含むこと、従って、α-、β-、およびκ-カゼイン由来のペプチドは、単独で、または互いに組み合わされて「生物学的反応修飾因子」となり得ることが理解されるであろう。

生理学的パラメータと関連して本明細書で用いられる「正常値」という用語は、健康なヒトあるいは動物の数値範囲内にある数値を意味する。しかしながら、通常正常と見なされる数値範囲内の、あるいはごく近傍の生理学的パラメータを持つ、「健康」と指定される被験者であっても、その生理学的パラメータが、その最適化の方向に「バランス」され、「調節」されることによってさらに利益が得られることが理解されるであろう。

特に好ましい実施態様では、本発明のペプチドは、血液疾患または病態の治療または予防、および赤血球、白血球、血小板の数、およびヘモグロビンレベルのバランス維持のために使用される。本発明の製薬組成物は、血球増殖を活性化するために用いてもよい。

さらに、製薬組成物は、造血幹細胞障害、例えば、血小板、リンパ球、プラズマ細胞、樹状細胞、および好中球の障害を始め、白血病前駆病態および白血病病態、および血小板減少症における欠乏および機能不全の治療および/または予防のために用いてもよい。

さらに、製薬組成物は、血球形成の調節、例えば、血球増殖疾患の治療および/または予防を含む調節のために用いてもよい。これと関連して、本発明の製薬組成物は、化学療法または放射線療法時の免疫反応刺激、否定的作用の緩和、および化学療法およびX線被爆による吐き気の抑圧、および、より速やかな回復の促進に有効であることは注目に値する。

さらに、本発明の製薬組成物は、免疫不全に関連する疾患、例えば、HIVおよび自己免疫疾患の治療の際に、ヒト免疫反応を刺激するのに使用してもよい。

本発明の組成物はまた獣医学的使用にも意図されている。

本発明の製薬組成物は、例えば、血球の異常レベルを伴う障害、造血幹細胞の生産および分化を伴う障害の治療および/または予防、赤血球、血小板、リンパ球、樹状細胞、マクロファージ、および/または、好中球の障害の治療、白血病前駆病態および白血病病態の治療、および、血小板減少症の治療のために用いてよい。本発明の製薬組成物はまた、細胞増殖性疾患、および、免疫不全を伴う疾患、例えば、HIVおよび自己免疫疾患の治療に用いてもよい。さらに、本発明の製薬組成物は、化学療法または放射線治療時における免疫反応の調節、例えば、化学療法に関連する吐き気の緩和に用いてもよい。

本発明を実地に還元する際、本発明のペプチドは、他の造血増殖因子の添加を伴った場合、ヒトの造血幹細胞増殖および分化に対して協調作用を及ぼすという驚くべき観察所見が得られた。注目に値する重要な所見は、本発明のペプチドによる、赤血球コロニー形成に対するエリスロポエチン介在性刺激の増強、骨髄細胞における顆粒細胞マクロファージコロニー形成(CFU-GM)に対するG-CSF介在性刺激の増強、および、トロンボポエチン(TPO)による巨核球増殖誘発の用量依存性強化である。G-CSFは、現在、広範な白血病およびガン治療の一環としてドナー中の骨髄造血前駆細胞の移動強化のために(例えば、Benoit et al.に交付された米国特許第6,624,154号、および、Bissery et al.に交付された米国特許第6,214,863号を参照)、および、造血幹細胞および前駆細胞操作のための細胞培養媒体の成分として(例えば、Pykett et al.に交付された米国特許第6,548,299号参照)使用されている。Neupogen(Filgrastim, Amgen Inc., USA)という名で市販される組み換えヒト(rh)G-CSFは、好中球減少症および顆粒球減少症に関連する症状、例えば、AIDSリンパ球減少症および発熱性好中球減少症、呼吸器およびその他の感染症(Kolls et al, Res. Res. 2000;2:9-11)の治療のための医学的使用、および、非骨髄性悪性腫瘍の化学療法プロトコールにおいて医学的使用が承認されている。組み換えヒト(rh)EPOは、現在、例えば、腎臓貧血、思春期貧血、ガンおよびAIDS関連貧血のような症状、および、手術の前段処置(Sowade, B et al. Int Mol Med 1998;1:305)のための承認治療となっている。

従って、一つの好ましい実施態様では、血液疾患または病態、例えば、血小板減少症、汎血球減少症、顆粒球減少症、エリスロポエチン治療可能病態、トロンボポエチン治療可能病態、またはG-CSF治療可能病態は、α-、β-、またはκ-カゼイン、または、それらの組み合わせから得られるペプチドの治療有効量を、その治療を必要とする被験者に投与することによって治療される。

さらに本発明によれば、エリスロポエチン、トロンボポエチン、またはG-CSFの作用を増強する方法であって、α-、β-、またはκ-カゼイン、または、それらの組み合わせから得られるペプチドの治療有効量を、その増強を必要とする被験者に投与することによって実行される方法が提供される。一つの好ましい実施態様では、方法は、血球刺激因子、例えば、エリスロポエチン、トロンボポエチン、およびG-CSFを投与することをさらに含む。

トロンボポエチンは、複数の重要な派生作用を持つ早期活性サイトカインである。すなわち、TPO単独、または他の早期活性サイトカインと共同で、(i)生存率を促進し、前駆細胞のアポトーシスを抑える;(ii)造血幹細胞の生産と機能を調整する;(iii)休眠中の多能細胞の細胞分裂を誘発する;(iv)複数の系統分化を誘発する;および、(v)顆粒細胞、赤血球、マクロファージ、および巨核球を含む多数系統コロニーの形成(MK, CFU-GEMM)を強化する。さらに、TPOは、顆粒球/単球、巨核球の比較的僅かな前駆細胞、および赤血球コロニーの生産を刺激し、原初的ヒト骨髄および巨核球細胞の、フィブロネクチンおよびフィブリノーゲンに対する接着性を高める。G-CSFも作用は似ており、顆粒細胞系統の細胞に対して特異的であり、一方、EPOは、赤血球および赤血球前駆細胞の発達を刺激する。従って、TPO、EPO、およびG-CSFは、臨床的血液学者/移植術者にとって、すなわち、幹細胞の移動、増幅、および体外拡大、および、自己移植および同種異系移植に専ら与る前駆細胞にとって重要なサイトカインである。さらに、フェレーシス収率を上げるために、健康な血小板ドナーに対し、TPOおよびG-CSFの投与が用いられている。しかしながら、TPO、EPO、およびG-CSF療法の臨床的適用は、他にいろいろ考慮すべき点のある中でも特に、組み換えヒトサイトカインrhTPO、EPO、およびG-CSFが比較的高価であることによって難しくされ、かつ、反復投与した場合、TPO、EPO、およびG-CSFは抗原性となる可能性がある。

TPO、EPO、およびG-CSFのような血球刺激因子と、本発明のペプチドと、両方を含む製薬組成物、または、別々に含む製薬組成物のいずれか形における共同投与は、標的細胞増殖および機能に対するサイトカイン作用の、安価で、無毒であることが証明された増強を実現させることが可能である。このような共同投与では、本発明のペプチドは、前述の病態の外に、種々の障害、例えば、骨髄形成異常症候群(MDS)、非骨髄性悪性腫瘍、再生不良性貧血、および肝臓不全合併症のような障害の治療に用いてもよい。本発明のペプチドを、単独で、または、TPOおよびG-CSFと組み合わせて血小板ドナーに前投薬することによって、フェレーシス収穫の効率をさらに上げることが可能である。

従って、本発明によれば、血液疾患または病態、例えば、トロンボポエチン治療可能病態、エリスロポエチン治療可能病態、およびG-CSF治療可能病態のような病態を予防または治療する方法であって、α-、β-、またはκ-カゼイン、または、それらの組み合わせの治療有効量を治療または予防を必要とする被験者に投与することによって実行される方法が提供される。

さらに本発明によれば、トロンボポエチン、エリスロポエチン、およびG-CSFの作用を増強する方法であって、α-、β-、またはκ-カゼイン、または、それらの組み合わせから得られるペプチドの治療有効量を、その増強を必要とする被験者に投与することによって実行される方法が提供される。

さらに本発明によれば、血球形成を調節する方法であって、α-、β-、またはκ-カゼイン、または、それらの組み合わせから得られるペプチドを単独で、または、前述のトロンボポエチン、エリスロポエチン、およびG-CSFと組み合わせて、それらの治療有効量を、その調節を必要とする被験者に投与することによって実行する方法が提供される。

一つの好ましい実施態様では、血球形成の調節は、造血誘発、造血幹細胞の増殖誘発、造血幹細胞の増殖と分化の誘発、巨核細胞造血の誘発、赤血球造血の誘発、白血球造血の誘発、血小板造血の誘発、プラズマ細胞増殖の誘発、樹状細胞増殖の誘発、および、マクロファージ増殖の誘発を含む。もう一つの好ましい実施態様では、α-、β-、またはκ-カゼイン、または、それらの組み合わせから得られるペプチド単独、または、前述の、α-、β-、またはκ-カゼイン、または、それらの組み合わせから得られる別のペプチドと組み合わせて得られるペプチドは、合成ペプチドである。

さらに本発明によれば、血液疾患または病態、例えば、トロンボポエチン治療可能病態、エリスロポエチン治療可能病態、およびG-CSF治療可能病態を治療するための製薬組成物であって、α-、β-、またはκ-カゼイン、または、それらの組み合わせから得られるペプチドを活性成分として、かつ、製薬学的に受容可能な担体を含む製薬組成物が提供される。

さらに本発明によれば、血球刺激因子、例えば、トロンボポエチン、エリスロポエチン、およびG-CSFの作用を増強するための製薬組成物であって、α-、β-、またはκ-カゼイン、または、それらの組み合わせを活性成分として、かつ、製薬学的に受容可能な担体を含む製薬組成物が提供される。

さらに本発明によれば、血球形成を調節するための製薬組成物であって、α-、β-、またはκ-カゼイン、または、それらの組み合わせから得られるペプチド単独、または、血球刺激因子、例えば、トロンボポエチン、エリスロポエチン、およびG-CSFとの組み合わせから得られるペプチドを活性成分として、かつ、製薬学的に受容可能な担体を含む製薬組成物が提供される。

好ましい実施態様では、血球形成の調節は、造血誘発、造血幹細胞の増殖誘発、造血幹細胞の増殖と分化の誘発、巨核細胞造血の誘発、赤血球造血の誘発、白血球造血の誘発、血小板造血の誘発、プラズマ細胞増殖の誘発、樹状細胞増殖の誘発、および、マクロファージ増殖の誘発を含む。インビボおよびインビトロにおける血球形成の調節法は、従来技術でよく知られており、後述の実施例で詳細に記述される。

いくつかの医学的プロトコールにおいて、幹細胞の、骨髄から末梢循環への移動が必要とされる。例えば、ガンのような増殖性障害の化学的または放射線的治療の準備として、先ず、患者の幹細胞が、G-CSFを介して、骨髄から移動させられ、後の再形成のために採取される。同様に、異系幹細胞再形成では、ドナーは、フェレーシス前に、幹細胞を末梢循環に移動させる因子の投薬を受ける。幹細胞を末梢循環に移動させる方法は従来技術でよく知られる(例えば、Baumann et al.に交付された米国特許第6,162,427号を参照されたい、なお、引用することによりこの文書を本明細書に含める)。

本発明を実地に還元する際、α-、β-、またはκ-カゼイン、または、それらの組み合わせから得られるペプチドは、インビボおよびインビトロにおいて造血細胞の増殖を強化し、刺激することが明らかにされた。従って、本発明によれば、幹細胞の末梢移動を強化する方法であって、α-、β-、またはκ-カゼイン、または、それらの組み合わせから得られるペプチド単独、または、前述の血球刺激因子、例えば、トロンボポエチン、エリスロポエチン、およびG-CSFとの組み合わせから得られるペプチドの有効量を含む製薬組成物の有効量を、幹細胞の末梢移動を必要とする被験者に投与することよって実行される方法が提供される。

さらに本発明によれば、血液学的疾患、血液学的欠乏症、血小板減少症、汎血球減少症、顆粒球減少症、樹状細胞減少症、マクロファージ減少症、造血幹細胞障害であって、血小板、リンパ球、プラズマ細胞、および好中球障害を含む障害、白血病前駆病態、白血病病態、骨髄形成異常症候群、非骨髄性悪性腫瘍、再生不良性貧血、および骨髄不全から成るグループから選ばれる症状を治療または予防するための製薬組成物であって、血球刺激因子、例えば、トロンボポエチン、エリスロポエチン、およびG-CSFと、α-、β-、またはκ-カゼイン、または、それらの組み合わせから得られるペプチドとを活性成分として、かつ、製薬学的に受容可能な担体を含む製薬組成物が提供される。

さらに本発明によれば、血球刺激因子および配列番号1-33から成るグループから選ばれるアミノ酸配列を持つ精製ペプチド、および、製薬学的に受容可能な担体を含む製薬組成物が提供される。一つの好ましい実施態様では、血球刺激因子はTPO、EPO、またはG-CSFである。

さらに本発明によれば、骨髄破壊レシピエントにおける供与血液幹細胞のコロニー形成を強化する方法であって、レシピエントに供与血液幹細胞を移植する前に、α-、β-、またはκ-カゼイン、または、それらの組み合わせから得られるペプチドで供与血液幹細胞のドナーを処理することによって実行される方法が提供される。

さらに本発明によれば、骨髄破壊レシピエントにおける供与血液幹細胞のコロニー形成を強化する方法であって、レシピエントに供与血液幹細胞を移植する前に、α-、β-、またはκ-カゼイン、または、それらの組み合わせから得られるペプチドで供与血液幹細胞を処理することによって実行される方法が提供される。

さらに本発明によれば、骨髄破壊レシピエントにおける供与血液幹細胞のコロニー形成を強化する方法であって、レシピエントに供与血液幹細胞を移植する前に、α-、β-、またはκ-カゼイン、または、それらの組み合わせから得られるペプチドで供与血液幹細胞を処理することによって実行される方法が提供される。一つの好ましい実施態様では、血液幹細胞ドナー、または血液幹細胞、または供与血液幹細胞は、供与前に、かつレシピエントに供与血液幹細胞を移植する前に、血球刺激因子、例えば、トロンボポエチン、エリスロポエチン、またはG-CSFによってさらに処理される。別の好ましい実施態様では、α-、β-、またはκ-カゼイン、または、それらの組み合わせから得られるペプチドは、α-、β-、またはκ-カゼインから得られる、他の、同一または非同一の、一つのまたは複数のペプチドと組み合わされる。

さらに本発明によれば、骨髄破壊レシピエントにおける供与血液幹細胞のコロニー形成を強化する製薬組成物であって、α-、β-、またはκ-カゼイン、または、それらの組み合わせから得られるペプチドを活性成分として、かつ、製薬学的に受容可能な担体を含む製薬組成物が提供される。

さらに本発明によれば、骨髄破壊レシピエントにおける血液幹細胞のコロニー形成を強化する製薬組成物であって、α-、β-、またはκ-カゼインから得られるペプチド、または、それらの組み合わせを活性成分として、かつ、製薬学的に受容可能な担体を含む製薬組成物が提供される。

一つの好ましい実施態様では、製薬組成物はさらに、血球刺激因子、例えば、トロンボポエチン、エリスロポエチン、またはG-CSFを含む。別の好ましい実施態様では、α-、β-、またはκ-カゼイン、または、それらの組み合わせから得られるペプチドは、他の、同一または非同一のα-、β-、またはκ-カゼインから得られる一つのまたは複数のペプチドと組み合わされる。

本発明はさらに、少なくとも1個の本発明のペプチドを活性成分として含む、抗菌性製薬組成物に関し、かつ、本発明のペプチドの、抗菌剤としての使用に関する。

下記の実施例節において詳述するように、本発明のペプチド、本発明のペプチドを活性成分として含む製薬組成物は、血球障害、細胞増殖疾患、免疫不全および自己免疫疾患を含む病気の治療および予防に使用することが可能である。

従って、本発明によれば、自己免疫疾患または感染症または病態を予防または治療する方法であって、α-、β-、またはκ-カゼインから得られるペプチド、または、それらの組み合わせの治療有効量を、治療または予防を必要とする被験者に投与することによって実行される方法が提供される。

自己免疫疾患または感染症または病態は、ウィルス疾患、ウィルス感染、AIDS、およびHIVによる感染である。

さらに本発明によれば、血小板減少症を予防または治療する方法であって、α-、β-、またはκ-カゼインから得られるペプチド、または、それらの組み合わせの治療有効量を、予防または治療を必要とする被験者に投与することによって実行される方法が提供される。

さらに本発明によれば、汎血球減少症を予防または治療する方法であって、α-、β-、またはκ-カゼインから得られるペプチド、または、それらの組み合わせの治療有効量を、予防または治療を必要とする被験者に投与することによって実行される方法が提供される。

さらに本発明によれば、顆粒球減少症を予防または治療する方法であって、α-、β-、またはκ-カゼインから得られるペプチド、または、それらの組み合わせの治療有効量を、予防または治療を必要とする被験者に投与することによって実行される方法が提供される。

本発明を実地に還元する際、αS1カゼインのN末端部分由来のペプチドの投与が、遺伝的に糖尿病偏向NODマウスにおいて糖尿病症状の開始を効果的に阻止し、家系性高コレステロール血症およびトリグリセリド血症を持つヒト被験者および動物モデルの両方において血液化学の値のバランスを維持するという驚くべき観察所見が得られた。従って、本発明によれば、代謝疾患または病態を予防または治療するための方法であって、α-、β-、またはκ-カゼイン、または、それらの組み合わせから得られるペプチドの治療有効量を、予防または治療を必要とする被験者に投与することによって実行される方法が提供される。好ましい実施態様では、代謝疾患または病態は、非インスリン依存性糖尿病、インスリン依存性糖尿病、糖尿、高血糖症、高脂血症、および/または、高コレステロール血症である。

本明細書で用いる「代謝疾患または病態」という用語は、体内で測定が可能ないくつかの生理学的パラメータの異常レベルによって表される、生体における代謝産物のホメオスタティックバランスからの偏倚(単数および複数)と定義される。このような生理学的パラメータとしては、例えば、ホルモンレベル、電解質レベル、血糖レベル、酵素レベル等がある。

さらに本発明によれば、骨髄破壊用量の化学・放射線療法を受け、自己骨髄、または末梢血幹細胞移植(ASCT)、または同種骨髄移植(BMT)によって支援される該療法に関連する病態を予防または治療する方法であって、αS1カゼインのN末端部分から得られるペプチド単独、または、血球刺激因子、例えば、トロンボポエチン、エリスロポエチン、またはG-CSFとの組み合わせから得られるペプチドの治療有効量を、予防または治療を必要とする被験者に投与することによって実行される方法が提供される。

さらに本発明によれば、自己免疫疾患または感染症または病態を予防または治療するための製薬組成物であって、α-、β-、またはκ-カゼインから得られるペプチド、または、それらの組み合わせを活性成分として、かつ、製薬学的に受容可能な担体を含む製薬組成物が提供される。好ましい実施態様では、その病気または病態は、ウィルス疾患、ウィルス感染、AIDS、およびHIVによる感染である。さらに好ましい実施態様では、本発明のペプチドは、ウィルスおよび他の感染に対する別の治療と組み合わせて、あるいは、HIVおよびAIDS治療の場合のように、ウィルス感染後の病気症状の開始を阻止する、または、重度を軽減するために、補助療法として投与される。

さらに本発明によれば、代謝疾患または病態を予防または治療するための製薬組成物であって、α-、β-、またはκ-カゼイン、または、それらの組み合わせから得られるペプチドを活性成分として、かつ、製薬学的に受容可能な担体を含む製薬組成物が提供される。好ましい実施態様では、代謝疾患または病態は、非インスリン依存性糖尿病、インスリン依存性糖尿病、糖尿、高血糖症、高脂血症、および/または、高コレステロール血症である。

さらに本発明によれば、骨髄破壊用量の化学・放射線療法を受け、自己骨髄、または末梢血幹細胞移植(ASCT)、または同種骨髄移植(BMT)によって支援される療法に関連する病態を予防または治療する方法であって、α-、β-、またはκ-カゼインから得られるペプチド単独、または、血球刺激因子、例えば、トロンボポエチン、エリスロポエチン、またはG-CSFとの組み合わせから得られるペプチドの治療有効量を、予防または治療を必要とする被験者に投与することによって実行される方法が提供される。

さらに本発明によれば、自己免疫または感染症または病態を予防または治療するための製薬組成物であって、α-、β-、またはκ-カゼインから得られるペプチド単独、または、α-、β-、またはκ-カゼインから得られる、他の、同一または非同一のペプチドとの組み合わせから得られるペプチドを活性成分として、かつ、製薬学的に受容可能な担体を含む製薬組成物が提供される。好ましい実施態様では、その病気または病態は、ウィルス疾患、ウィルス感染、AIDS、および/またはHIVによる感染である。さらに好ましい実施態様では、本発明のペプチドは、ウィルスおよび他の感染に対する別の治療と組み合わせて、あるいは、HIVおよびAIDS治療の場合のように、ウィルス感染後の病気症状の開始を阻止する、または、重度を軽減するために、補助療法として投与される。

さらに本発明によれば、代謝疾患または病態を予防または治療するための製薬組成物であって、α-、β-、またはκ-カゼイン、または、それらの組み合わせから得られるペプチドを活性成分として、かつ、製薬学的に受容可能な担体を含む製薬組成物が提供される。好ましい実施態様では、代謝疾患または病態は、非インスリン依存性糖尿病、インスリン依存性糖尿病、糖尿、高血糖症、高脂血症、および/または、高コレステロール血症である。

さらに本発明によれば、自己骨髄または末梢血幹細胞移植(ASCT)、または同種骨髄移植(BMT)によって支持される骨髄破壊用量の化学・放射線療法に関連する病態を予防または治療するための製薬組成物であって、α-、β-、またはκ-カゼインから得られるペプチド、またはそれらの組み合わせから得られるペプチドを活性成分として、かつ、製薬学的に受容可能な担体を含む製薬組成物が提供される。

さらに本発明によれば、α-、β-、またはκ-カゼインから得られるペプチド、または、それらの組み合わせの、自己免疫疾患の予防または治療のための使用が開示される。

さらに本発明によれば、α-、β-、またはκ-カゼインから得られるペプチド、または、それらの組み合わせの、ウィルス疾患の予防または治療のための使用が開示される。

さらに本発明によれば、α-、β-、またはκ-カゼインから得られるペプチド、または、それらの組み合わせの、ウィルス感染の予防のための使用が開示される。

さらに本発明によれば、α-、β-、またはκ-カゼインから得られるペプチド、または、それらの組み合わせの、造血誘発のための使用が開示される。

さらに本発明によれば、α-、β-、またはκ-カゼインから得られるペプチド、または、それらの組み合わせの、造血幹細胞増殖誘発のための使用が開示される。

さらに本発明によれば、α-、β-、またはκ-カゼインから得られるペプチド、または、それらの組み合わせの、造血幹細胞増殖および分化の誘発のための使用が開示される。

さらに本発明によれば、α-、β-、またはκ-カゼインから得られるペプチド、または、それらの組み合わせの、巨核細胞造血の誘発のための使用が開示される。

さらに本発明によれば、α-、β-、またはκ-カゼインから得られるペプチド、または、それらの組み合わせの、赤血球造血の誘発のための使用が開示される。

さらに本発明によれば、α-、β-、またはκ-カゼインから得られるペプチド、または、それらの組み合わせの、白血球造血の誘発のための使用が開示される。

さらに本発明によれば、α-、β-、またはκ-カゼインから得られるペプチド、または、それらの組み合わせの、血小板造血の誘発のための使用が開示される。

さらに本発明によれば、α-、β-、またはκ-カゼインから得られるペプチド、または、それらの組み合わせの、プラズマ細胞増殖の誘発のための使用が開示される。

さらに本発明によれば、α-、β-、またはκ-カゼインから得られるペプチド、または、それらの組み合わせの、樹状細胞増殖の誘発のための使用が開示される。

さらに本発明によれば、α-、β-、またはκ-カゼインから得られるペプチド、または、それらの組み合わせの、マクロファージ増殖の誘発のための使用が開示される。

さらに本発明によれば、α-、β-、またはκ-カゼインから得られるペプチド、または、それらの組み合わせの、血小板減少症の予防または治療のための使用が開示される。

さらに本発明によれば、α-、β-、またはκ-カゼインから得られるペプチド、または、それらの組み合わせの、汎血液減少症の予防または治療のための使用が開示される。

さらに本発明によれば、α-、β-、またはκ-カゼインから得られるペプチド、または、それらの組み合わせの、顆粒細胞減少症の予防または治療のための使用が開示される。

さらに本発明によれば、α-、β-、またはκ-カゼインから得られるペプチド、または、それらの組み合わせの、高脂血症の予防または治療のための使用が開示される。

さらに本発明によれば、α-、β-、またはκ-カゼインから得られるペプチド、または、それらの組み合わせの、コレステロール血症の予防または治療のための使用が開示される。

さらに本発明によれば、α-、β-、またはκ-カゼインから得られるペプチド、または、それらの組み合わせの、糖尿の予防または治療のための使用が開示される。

さらに本発明によれば、α-、β-、またはκ-カゼインから得られるペプチド、または、それらの組み合わせの、糖尿病の予防または治療のための使用が開示される。

さらに本発明によれば、α-、β-、またはκ-カゼインから得られるペプチド、または、それらの組み合わせの、AIDSの予防または治療のための使用が開示される。

さらに本発明によれば、α-、β-、またはκ-カゼインから得られるペプチド、または、それらの組み合わせの、HIVによる感染の予防または治療のための使用が開示される。

さらに本発明によれば、α-、β-、またはκ-カゼインから得られるペプチド、または、それらの組み合わせの、病態であって、自己骨髄または末梢血幹細胞移植(ASCT)、または同種骨髄移植(BMT)によって支援される骨髄破壊用量の化学・放射線療法に関連する病態の予防または治療のための使用が開示される。

さらに本発明によれば、α-、β-、またはκ-カゼインから得られるペプチド、または、それらの組み合わせの、トロンボポエチン治療可能病態の治療のための使用が開示される。

さらに本発明によれば、α-、β-、またはκ-カゼインから得られるペプチド、または、それらの組み合わせの、トロンボポエチンの作用増強のための使用が開示される。

さらに本発明によれば、α-、β-、またはκ-カゼインから得られるペプチド、または、それらの組み合わせの、幹細胞の末梢移動増強のための使用が開示される。

さらに本発明によれば、α-、β-、またはκ-カゼインから得られるペプチド、または、それらの組み合わせの、骨髄破壊レシピエントにおける供与血液幹細胞のコロニー形成強化のための使用が開示される。

さらに本発明によれば、α-、β-、またはκ-カゼインから得られるペプチド、または、それらの組み合わせの、骨髄破壊レシピエントにおける血液幹細胞のコロニー形成強化のための使用が開示される。

さらに本発明によれば、α-、β-、またはκ-カゼインから得られるペプチド、または、それらの組み合わせを活性成分として、かつ、製薬学的に受容可能な担体を含む製薬組成物の、自己免疫疾患の予防または治療のための使用が開示される。

さらに本発明によれば、α-、β-、またはκ-カゼインから得られるペプチド、または、それらの組み合わせを活性成分として、かつ、製薬学的に受容可能な担体を含む製薬組成物の、ウィルス病の予防または治療のための使用が開示される。

さらに本発明によれば、α-、β-、またはκ-カゼインから得られるペプチド、または、それらの組み合わせを活性成分として、かつ、製薬学的に受容可能な担体を含む製薬組成物の、ウィルス感染の予防または治療のための使用が開示される。

さらに本発明によれば、α-、β-、またはκ-カゼインから得られるペプチド、または、それらの組み合わせを活性成分として、かつ、製薬学的に受容可能な担体を含む製薬組成物の、造血誘発のための使用が開示される。

さらに本発明によれば、α-、β-、またはκ-カゼインから得られるペプチド、または、それらの組み合わせを活性成分として、かつ、製薬学的に受容可能な担体を含む製薬組成物の、造血幹細胞誘発のための使用が開示される。

さらに本発明によれば、α-、β-、またはκ-カゼインから得られるペプチド、または、それらの組み合わせを活性成分として、かつ、製薬学的に受容可能な担体を含む製薬組成物の、造血幹細胞の増殖と分化のための使用が開示される。

さらに本発明によれば、α-、β-、またはκ-カゼインから得られるペプチド、または、それらの組み合わせを活性成分として、かつ、製薬学的に受容可能な担体を含む製薬組成物の、巨核球造血誘発のための使用が開示される。

さらに本発明によれば、α-、β-、またはκ-カゼインから得られるペプチド、または、それらの組み合わせを活性成分として、かつ、製薬学的に受容可能な担体を含む製薬組成物の、赤血球造血誘発のための使用が開示される。

さらに本発明によれば、α-、β-、またはκ-カゼインから得られるペプチド、または、それらの組み合わせを活性成分として、かつ、製薬学的に受容可能な担体を含む製薬組成物の、白血球造血誘発のための使用が開示される。

さらに本発明によれば、α-、β-、またはκ-カゼインから得られるペプチド、または、それらの組み合わせを活性成分として、かつ、製薬学的に受容可能な担体を含む製薬組成物の、血小板造血誘発のための使用が開示される。

さらに本発明によれば、α-、β-、またはκ-カゼインから得られるペプチド、または、それらの組み合わせを活性成分として、かつ、製薬学的に受容可能な担体を含む製薬組成物の、プラズマ細胞増殖誘発のための使用が開示される。

さらに本発明によれば、α-、β-、またはκ-カゼインから得られるペプチド、または、それらの組み合わせを活性成分として、かつ、製薬学的に受容可能な担体を含む製薬組成物の、樹状突起細胞増殖誘発のための使用が開示される。

さらに本発明によれば、α-、β-、またはκ-カゼインから得られるペプチド、または、それらの組み合わせを活性成分として、かつ、製薬学的に受容可能な担体を含む製薬組成物の、マクロファージ増殖誘発のための使用が開示される。

さらに本発明によれば、α-、β-、またはκ-カゼインから得られるペプチド、または、それらの組み合わせを活性成分として、かつ、製薬学的に受容可能な担体を含む製薬組成物の、血小板減少症の予防または治療のための使用が開示される。

さらに本発明によれば、α-、β-、またはκ-カゼインから得られるペプチド、または、それらの組み合わせを活性成分として、かつ、製薬学的に受容可能な担体を含む製薬組成物の、汎血球減少症の予防または治療のための使用が開示される。

さらに本発明によれば、α-、β-、またはκ-カゼインから得られるペプチド、または、それらの組み合わせを活性成分として、かつ、製薬学的に受容可能な担体を含む製薬組成物の、顆粒球減少症の予防または治療のための使用が開示される。

さらに本発明によれば、α-、β-、またはκ-カゼインから得られるペプチド、または、それらの組み合わせを活性成分として、かつ、製薬学的に受容可能な担体を含む製薬組成物の、高脂血症の予防または治療のための使用が開示される。

さらに本発明によれば、α-、β-、またはκ-カゼインから得られるペプチド、または、それらの組み合わせを活性成分として、かつ、製薬学的に受容可能な担体を含む製薬組成物の、コレステロール血症の予防または治療のための使用が開示される。

さらに本発明によれば、α-、β-、またはκ-カゼインから得られるペプチド、または、それらの組み合わせを活性成分として、かつ、製薬学的に受容可能な担体を含む製薬組成物の、糖尿の予防または治療のための使用が開示される。

さらに本発明によれば、α-、β-、またはκ-カゼインから得られるペプチド、または、それらの組み合わせを活性成分として、かつ、製薬学的に受容可能な担体を含む製薬組成物の、糖尿病の予防または治療のための使用が開示される。

さらに本発明によれば、α-、β-、またはκ-カゼインから得られるペプチド、または、それらの組み合わせを活性成分として、かつ、製薬学的に受容可能な担体を含む製薬組成物の、AIDSの予防または治療のための使用が開示される。

さらに本発明によれば、α-、β-、またはκ-カゼインから得られるペプチド、または、それらの組み合わせを活性成分として、かつ、製薬学的に受容可能な担体を含む製薬組成物の、HIVによる感染の予防または治療のための使用が開示される。

さらに本発明によれば、α-、β-、またはκ-カゼインから得られるペプチド、または、それらの組み合わせを活性成分として、かつ、製薬学的に受容可能な担体を含む製薬組成物の、病態であって、自己骨髄または末梢血幹細胞移植(ASCT)、または同種骨髄移植(BMT)によって支援される骨髄破壊用量の化学・放射線療法に関連する病態の予防または治療のための使用が開示される。

さらに本発明によれば、配列番号1-33から成るグループから選ばれるアミノ酸配列を持つ精製ペプチドが提供される。

さらに本発明によれば、配列番号1-33から成るグループから選ばれるアミノ酸配列を持つ精製ペプチド、および製薬学的に受容可能な担体を含む製薬組成物が提供される。

本発明はさらに、α-、β-、またはκ-カゼイン由来のペプチドの組み合わせを含む製薬組成物の投与を含む治療法、および、該製薬組成物に関する。本発明を実地に還元する際、αS1カゼイン由来のペプチドと、β-カゼイン由来のペプチドとの組み合わせの方が、個々のペプチドを単独に投与した場合よりも、マウスにおいて骨髄再形成後の白血球増殖強化においてより効果的であることが明らかにされた(図25参照)。一つの実施態様では、ペプチドの組み合わせは、前述用に共有結合されたキメラペプチドを含む。

本発明はさらに、本発明の少なくとも1個のペプチドを活性成分として含む、抗ウィルス製薬組成物、および本発明のペプチドを抗ウィルス剤として用いる用法に関する。本発明を実地に還元する際、天然カゼインから得られるペプチドは、完全にこれといって明らかな副作用を持たない、効率的免疫調節活性を有することが明らかにされた。

下記の実施例節において詳述されるように、天然カゼイン由来のペプチドは、様々なタイプの血液幹細胞の増殖を刺激することが可能であり、血小板輸血にたいして完全な抵抗性を持つ患者においてさえ白血球および血小板の再形成を効果的に強化することができる。天然カゼイン由来のペプチドは、潜在能力的には血小板再形成を強化することが知られる他の手法(rhIL-3およびrhIL-6を含む)に対して完全な抵抗性を持つ患者においても有効である。天然カゼイン由来のペプチドは、様々な血液幹細胞の造血過程を強化することが可能な、特に、白血球(WBC)、血小板の再形成、および、NK活性の刺激に対して強力な作用を持つ効率的免疫調節因子である。

従って、本発明のさらに別の態様によれば、SARS感染源と関連する病態を治療または予防する方法であって、αS1のN末端部分から得られたペプチドの治療有効量を、治療または予防を必要とする被験者に投与する方法が提供される。

さらに本発明によれば、SARS感染源と関連する病態を治療または予防するための製薬組成物であって、αS1のN末端部分から得られたペプチドを活性成分として、かつ、製薬学的に受容可能な担体を含む製薬組成物が提供される。ある好ましい実施態様では、SARS感染源はコロナウィルスである。もっとも好ましい実施態様では、コロナウィルスはSARS-CoVである。

SARS感染源と関連する病態を治療または予防するための、天然カゼイン由来ペプチド組成物の効力は、インビトロおよび臨床治験の両方において評価することが可能であることは当業者には理解されるであろう。近年、Rota et al. (Sciencexpress, 2003年5月1日、www.sciencexpress.org参照)は、SARS-CoVウィルスの特性を解明し、SARS-CoVをベロ細胞において単離したことを報告している。従って、例えばHIV-1について後述するように、天然カゼイン由来ペプチド組成物を、SARS感染源に対する暴露前と暴露後の両方において、ベロ細胞に暴露して、感染レベルを、例えば、ウィルスの特定の転写物、タンパク産物、またはビリオン生産を従来技術で既知の方法を用いて測定することで定量することが可能である。

下記に詳述するように、カゼインのαS2、β、およびκ-分画も、有益な生物学的特性を持つペプチドを含むことが示されている。α-、β-、またはκ-カゼイン由来のペプチド、および、その他の同一または非同一のカゼイン由来ペプチド(例えば、αS2、β、およびκ-カゼイン)の組み合わせも、α-、β-、またはκ-カゼインが本明細書において有効であることが示された諸過程、造血、免疫学、EPO-、TPO-、G-CSF-介在、抗ウィルスの諸過程およびその他の過程を調節および強化する点において協調作用を持つことがあることが理解されよう。従って、さらに本発明によれば、α-、β-、またはκ-カゼイン由来のペプチドを、α-、β-、またはκ-カゼイン由来の他の同一または非同一のペプチドと組み合わせて含む製薬組成物であって、前記組み合わせは、ペプチド同士の混合、またはキメラペプチドである製薬組成物が提供される。

本発明を実地に還元する際、カゼイン加水分解産物を低温で処理する低温法に思い至った。カゼイン消化後にプロテアーゼを不活性化し、除去するための、この新規の方法は、速さと簡便さで優れており、かつ、加熱活性化を用いる従来法の不利な欠点を持たない。高温(>75℃)加熱不活性工程を、冷却とアルカリ化で置換することによって、ペプチドに対する損傷の危険なしに、プロテアーゼの効果的、絶対的な不活性化が実現される。

従って、本発明のさらに別の態様によれば、タンパク分解酵素によるカゼイン加水分解産物の低温処理法であって、タンパク分解酵素を含む、タンパク分解酵素カゼイン加水分解産物を獲得すること、タンパク分解酵素カゼイン加水分解産物を、タンパク分解酵素を不活性化するように冷却すること、カゼインタンパク加水分解産物のpHを酸性pHに調整すること、酸性のカゼインタンパク加水分解産物をろ過し、ろ液を収集すること、によって実行される方法が提供される。タンパク分解酵素の消化後における、カゼイン加水分解産物のバッチ冷却法は、従来技術(例えば、BioGenTek、ニューデリー、インドから販売される工業用醗酵およびバイオリアクターシステムを参照されたい)、および、乳製品産業(大容量および小容量用途に適応した熱交換システムが広く市販され、入手可能である)においてよく知られる。

次に、ろ液は、天然カゼイン由来のタンパクを沈殿させるためにさらに酸性化されて、分離され、収集され、次に、沈殿のpHは、タンパク分解酵素を非可逆的に不活性化するように、例えば、NaOHのような塩基でアルカリpHに調整される。タンパク分解酵素の不活性化後、沈殿のpHを、HClのような酸でpH7-9に再度調整し、このようにしてカゼインタンパク加水分解産物の低温処理を完了する。好ましい実施態様では、カゼイン加水分解産物は、約10℃に、もっとも好ましくは8-10℃に冷却される。温度は、冷却TCAの添加によって10℃に維持され、遠心を10℃未満で行う。

さらに別の実施態様では、pHは、2%(w/v)酸となるまで酸を加えることによって酸性pHに調整され、ろ液のさらなる酸性化を、約10%(w/v)酸となるまで新たに酸を加えることによって実行する。ある好ましい実施態様では、沈殿のアルカリ性pHを、塩基によって、少なくともpH9に、好ましくはpH10に、もっとも好ましくはpH13に調整する。ある好ましい実施態様では、アルカリpHが、15分を超えて、より好ましくは30分を超えて、もっとも好ましい実施態様では1時間を超えて維持される。冷却およびアルカリ処理後における残留タンパク分解活性を監視することによって、アルカリ処理の至適範囲を決めることが可能である。

本明細書で用いる「約」という用語は、表示された値の20%上から20%未満を含む範囲と定義される。従って、本明細書で用いる「約10℃」という言葉は、8℃から12℃の温度範囲を含む。同様に、「約10%(w/v)酸」という言葉は、8% w/vから12% w/vの酸含有量範囲を含む。

本発明は、ヒトの疾患の治療のために、α-、β-、またはκ-カゼインから得られるペプチド単独、または、α-、β-、またはκ-カゼインから得られる、他の同一または非同一のペプチドとの組み合わせから得られるペプチドであって、検出される毒性を持たず、高度な治療効力を発揮するペプチドを提供することによって、現在既知の構成形態の欠点に真っ直ぐに対応して成功を収める。

本発明の他の目的、利点、および新規の特質は、限定的であることを意図しない下記の実施例を精査することによって当業者に明白となろう。さらに、上に明確に記述され、頭書の特許請求項において主張される、本発明の様々な実施態様および態様は、それぞれ、下記の実施例において実験的に支持される。

これから下記の実施例を参照することになるが、これらは、上述の記載と相俟って、本発明を非限定的に具体的に説明する。

材料および実験法
天然カゼイン由来ペプチドの調製:
牛ミルクのカゼイン分画は、Hipp et al. (1952)上記の記載する通りに単離するか、あるいは、市販のカゼインとして支給されたものを、30℃でキモシン(別名レニン)(1 ml当たり20 ng)によって徹底的にタンパク分解酵素消化させた。反応の完了時に、溶液を加熱して酵素を不活性化し、消化物を、有機酸、酢酸またはトリクロロ酢酸によって酸性化することによってパラカゼイネートとして沈殿させた。パラカゼイネートを遠心によって分離し、興味のペプチド断片を含む上清分画を、より高い酸濃度によってカゼイシジンとして再沈殿させた。得られたカゼイシジンを、再懸濁、透析、および中和を経て、凍結乾燥した。得られた粉末状製剤について、その生物活性を下記のように定量し、ペプチド分析のためにHPLCによって分離した。

それとは別に、カゼイシジンは、冷却とアルカリ処理によって調製することが可能である。カゼインの消化後、直ちに反応混合物を10℃未満に冷却し、冷却TCA(トリクロロ酢酸)を加えて2%TCA溶液を得た。この溶液を10℃未満の温度で1370X gで遠心して分離した。

上清を取り出し、ろ過した。さらに冷却TCAを加え、10%-12.5%TCA溶液を得た。この溶液を10℃未満の温度で1370X gで遠心した。沈殿を取り出し、H2Oに溶解し、強塩基、例えば、NaOHによって加水分解産物のpHをpH9-13に増してアルカリ性にした。溶液を、15分から1時間塩基性pHに維持した。次いで、HClのような酸を加えることによって溶液をpH7-9まで酸性化した。得られたペプチド混合液を、本明細書に記載するように、デキストランカラム(例えばセファデックス)によるゲルろ過によってさらに画分し、精製した。あるいはそれとは別に、ペプチド混合液は、一連の剛性膜、例えば、10 kDaのカットオフを持つ第1ダイアフィルトレーション装置、および3 kDaのカットオフを持つ第2ダイアフィルトレーション装置による剛性膜(Millipore, Billerica、マサチューセッツ州、米国)によって画分、精製される。

天然カゼイン由来ペプチドのHPLC分析:
前述のようにして天然カゼインから得られたペプチドは、HPLCにより二段階工程で分析された。先ず、カゼイン消化物凍結乾燥体を、0.1%水トリフルオロ酢酸(w/w)−アセトニトリル勾配を持つC18逆相によって分離した。検出は、214 nmにおけるUV吸収に基づいて行った。この後、サンプルを、エレクトロスプレイ供給源を備えた、HPLC-質量分析(MS)によって分析した。質量計算は、保持時間から導かれる、イオン化ペプチドサンプルの質量を表す。分離後、ペプチドのアミノ酸組成は、気相マイクロシークェンサー(Applied Biosystems 470A)によって決定した。

天然カゼインから誘導されたいくつかのペプチド製剤の分析から下記の結果が得られた。通常、8個のペプチドピークが観察され、その内3個は、17.79、19.7、 23.02のRt値を持つ大ピークであり、5個は、12.68、14.96、16.50、21.9、および25.1のRt値を持つ小ピークであった。これらのRt値は、それぞれ、2764、6788、1880、2616、3217、2333、6708、および6676 Daの分子量を表す。17.79のRt(2,764 Daに対応)では、配列RPKHPIKHQGLPQEVLNENLLRF(配列番号22、αS1カゼインの完全配列については、McSweeny et al., 1993上記を参照)を持つαS1カゼインのアミノ酸1-23を表す23個のアミノ酸から成るペプチドが得られる。他のペプチドは、β-様カゼイン前駆物質の208-224位置、αS1カゼインの16-37位置、およびαS2様カゼイン前駆物質の197-222位置由来のものであった。他のペプチドも存在していた。天然カゼイン由来のペプチドをさらにHPLC-MS(C-18樹脂)で分析し、MS/MSおよびEdman分解を用いて配列決定した。用いたカラムは、Vydac C-18であり、溶出は、2% CH3CN, 0.1% TFAで始まり、漸増修飾剤(2% H2O、0.1% TFAのCH3CN溶液)で続き最後に80%に至る勾配にて80分行った。質量分析は、ナノスプレイ付属器を用い、Qtof2(Micromass、英国)によって行った。

Edman分解は、Perkin Elmer(Applied Biosystems Division) 492(厳密型)マイクロシークェンサーシステムを用いて行った。さらに、HPLC-MSもC-12樹脂を用いて行った。天然カゼイン由来ペプチドの分析は、三つの大きな成分を明らかにした。
i)αS1カゼインのN-末端部分、処理ペプチドのアミノ酸座標1-23を表すペプチド(配列番号22)。分子量は2764ダルトンである。
ii)β-カゼインのアミノ酸座標193-209を表すペプチド(配列番号27)。分子量は1880ダルトンである。
iii)κ-カゼインのアミノ酸座標106-169を表すペプチド(配列番号29)。分子量は6708である。このκ-カゼインは二つの形で認められた。すなわち、リン酸化形と非リン酸化形である。リン酸化ペプチドの分子量は6789ダルトンである。さらに、その分子量が6676 Da(非リン酸化)である、κ-カゼインの既知の変種が特定された。三つの小成分が特定された。
i)αS1カゼインのN-末端部分、処理ペプチドのアミノ酸座標1-22を表すペプチド(配列番号21)。分子量は2616ダルトンである。
ii)αS1カゼインのアミノ酸座標165-199を表すペプチド(配列番号31)。分子量は3918ダルトンである。
iii)αS2カゼインのアミノ酸座標182-207を表すペプチド(配列番号32)。分子量は3217ダルトンである。
iv)αS2カゼインのアミノ酸座標189-207を表すペプチド(配列番号33)。分子量は2333ダルトンである。
牛カゼインの、β-カゼインのN-末端部分を表す小ペプチドおよびその他のペプチドも検出された。

天然カゼイン由来ペプチドのゲルろ過
前述のようにして調製した天然カゼイン由来ペプチドは、Pharmacia製Superdex75ゲルろ過カラムによるゲルろ過によって分子量に従って分離した。予備的分離のために用いた溶出バッファーは、NH4HCO3, pH=8であった。下記の精製分画が得られた。すなわち、αS1カゼインのN-末端部分のアミノ酸位置1-23を表すペプチド(配列番号22)、および、κ-カゼインのアミノ酸座標106-169を表す第2ペプチド(配列番号29)である。単一の仮定に限定されることを望むものではないが、HPLC、HPLC MS、およびゲルろ過法による、天然カゼイン由来ペプチドの分析結果の間に見かけ上不一致の見られることに対する一つの説明は、ゲルろ過には、ペプチドの混合物において特定の成分を遅らせる傾向があることである。

カゼイン由来合成ペプチド:
αS1カゼインのN-末端の2-26アミノ酸に一致する、漸増する長さを持つペプチドを、NoVetide Led., Haifa、イスラエルによって>95%(HPLC)の純度で合成した。品質管理は、HPLC、質量分析(EI)、アミノ酸分析、およびペプチド含量を含めた。下記の表3は、これらのペプチドの配列を示す。

非肥満型糖尿病(NOD)マウスにおける若年性(I型、IDDM)糖尿病
天然カゼイン由来ペプチド:
NODマウスは、自己免疫疾患およびヒトの若年性糖尿病の研究用としてごく普通に用いられるモデルである。6週齢の雌性NODマウスに、毎週1回または2回、天然カゼイン由来のペプチド10 μgの注入を合計5または10回投与した。コントロールマウスには投与を行わなかった。病気の重度は、Combi試験棒(Gross, D.J. et al. (1994), Diabetology, 37:1195)を用いて測定した糖尿に従って決めた。結果は、365日期間における、各サンプル中の糖尿無しマウスのパーセントで表した。

カゼイン由来合成ペプチド:
別の実験で、6週齢の雌性NODマウスに、毎週2回、天然カゼイン由来の合成ペプチド100 μgの注入を合計10回、あるいは、各1 mgの投与を3回、3日置きに合計3回投与した。コントロールマウスには投与を行わなかった。結果は、各投与グループにおける健常マウスの数で表した。

腹腔内グルコース耐性試験(IPGTT):
グルコース耐性試験は、哺乳動物におけるグルコース代謝および糖尿病傾向に関する明確な調査法である。カゼイン由来の合成ペプチドの投与後25週において、グルコース負荷に対する反応を腹腔内グルコース耐性試験で評価した。グルコース注入は、体重1 kg当たり1 gであった。血糖値は、試験前(0分)および負荷後60分に吸引した血液について定量した。血漿グルコースレベルは、グルコースアナライザー(Beckman Instruments, Fullerton、カリフォルニア州)で定量し、mmol/Lで表した。正常値は140 mmol/Lを超えない。

ナチュラルキラー(NK)細胞増殖の刺激
ヒト末梢幹細胞(PBSC)による:
G-CSF投与被験者のPBSCを、FICOLL勾配で分離し、10% FCSおよびグルタミンを含むRPMI-1640培養液で2度洗浄し、天然カゼイン由来ペプチド、または、上に示したカゼイン由来合成ペプチドと共に(ml当たり0-500 μg)、またはペプチド無しで、1.5 mlウェルに撒いた。2日のインキュベーション後、細胞のナチュラルキラー細胞活性を、35S-標識K562標的細胞(NEG-709A, 185.00 MBq, 2.00 mCi EASYTAGth Methionine, L-[35S] 43.48 TBq per mmol, 1175.0 Ci per mmol, 0.488 ml、ボストン、米国)から放出される放射能を測定することによって定量した。2種類の濃度のエフェクター細胞(ウェル当たり2.5 x 105および 5 x 105個の細胞)を、ウェル当たり5 x 103 個の標的細胞と、U型底の96ウェル組織培養プレートにてインキュベートした(エフェクター:標的細胞の比は、それぞれ、50:1 と100:1)。細胞は、5% CO2、95%空気の雰囲気下37℃で5時間インキュベートし、1000 rpm、5分の遠心によって沈殿させた。上清液の50 μLサンプルにおいて35Sの放出を測定した。

マウス骨髄(BM)細胞による:
骨髄を、4匹の未処置のBALB/cおよびC57B1/6マウスから収集した。骨髄は、25ゲージの針を用いて培養液を注入することによって、マウスの前肢および後肢の長骨から採取した。吸引した細胞は、RPMI 1640で洗浄し、血球計でカウントし、生体染色し(20 μlの細胞を380 μlの酢酸/トリパンブルー中に投入)、10%ウシ胎児血清、抗生物質、およびグルタミンを含むRPMI-1640に、ml当たり2-5 x 106個細胞の割合で、ml当たり100 μgの天然カゼイン由来ペプチドの共存下に、または無しで、培養瓶に撒いた。この細胞培養体を、5% CO2、95%空気の雰囲気下37℃で12-15日間インキュベートし、1500 rpm、10分の遠心によって収穫し、カウントし、51Cr(クロム-51、740 MBq, 2.00 mCi放射能)、または、35S (NEG-709A, 185.00 MBq, 2.00 mCi EASYTAGth Methionine, L-[35S] 43.48 TBq per mmol, 1175.0 Ci per mmol, 0.488 ml、ボストン、米国)標識マウスリンパ腫(YAC)細胞を、25:1または50:1のエフェクター:標的細胞比で含むU型底のウェルに撒いた。NK活性は、細胞無添加上清に対するパーセント放射能で表した。

培養ヒト細胞の増殖:
末梢血(PB)を、健康人または病気の患者から収集した。病気の患者には、プラズマフェレーシス前にG-CSF補給をする以外全く投薬を行わなかった。骨髄(BM)細胞を、健康な同意患者、または化学療法後の寛解期の病気患者から、吸引にて収集した。臍帯血を正常分娩時に収集した。様々な起源のヒトの細胞は、FICOLL勾配で分離し、RPMI-1640培養液で2回洗浄し、表示の濃度で、かつ、表示の通り天然カゼイン由来ペプチドとの共存下にまたは無しで、あるいは、カゼイン由来合成ペプチドとの共存下にまたは無しで、0.2 mlの平底組織培養ウェルに撒いた。コントロールを含め全ての処置は3回繰り返した。細胞増殖は、3HTの取り込みによって測定した。指定日数のインキュベーション後放射性チミジンを加えた[チミジン(メチル-[3H])、比放射能 5 Ci per ml 37 MBq per ml, ICN Corp]。次に、細胞を16-20時間標識とインキュベートし、収穫し、培養液で洗浄した。取り込まれた放射能をβシンチレーションカウンターで測定した。

K562白血病および結腸ガン細胞系統の増殖:
結腸およびK562は、培養されているガン細胞の確立された細胞系統である。両細胞系統とも、培養瓶において5% CO2、95%空気の雰囲気下37℃でインキュベートし、収穫し、培養液で洗浄し、その後、組織培養ウェルに、ウェル当たり4 x 105 (K562)、または3 x 103個の細胞(結腸)の密度で撒いた。天然カゼイン由来ペプチドを、表示の濃度でウェルに加え、9日間(K562)または3日間(結腸)のインキュベーション後、標識チミジンを前述の通りに加えた。収穫と放射能取り込みの測定は前述の通りに行った。

ヒト末梢血幹細胞(PBSC)におけるNKおよびT細胞増殖の蛍光抗体検出
G-CSFを投薬されたヒト被験者の末梢血幹細胞(PBSC)をプラズマフェレーシスによって収集し、FICOLL勾配によって分離し、10%牛胎児血清を含むRPM-1640によって2回洗浄し、培養瓶において5% CO2、95%空気の雰囲気下37℃で、表示の濃度の天然カゼイン由来のペプチドとの共存下で、または、共存無しでインキュベートした。天然カゼイン由来ペプチドとの10、14、または24日のインキュベーション後、T細胞(CD3表面抗原)、およびNK細胞(CD56表面抗原)の存在を、抗CD3蛍光抗体(CD3/FITCクローンUHCT1)、抗CD56/RPEクローンMOC-1)(DAKO A/S、デンマーク)による直接的免疫蛍光によって検出し、さらにコントロールとしてマウスIgG1/PREおよびIgG1/FITC抗体を用いた。蛍光標識細胞の検出は、蛍光活性化細胞ソーティング(FACS)によって行った。

培養骨髄(BM)細胞における造血機能刺激
マウス骨髄細胞由来の多能性コロニー(CFU-GEMM)における巨核球の増殖:
8-12週齢C3H/HeJマウスから得られた一次骨髄細胞(ml当たり1 x 105個細胞)を、血清無添加メチルセルロースIMDM培養液にて5% CO2、95%空気の雰囲気下37℃で8-9日間育成した。多能性コロニーの育成に好適な培養液(CFU-GEMM)は、1% BSA(Sigma)、10-4 Mチオグリセロール(Sigma)、 2.8 x 10-4 Mヒトトランスフェリン(TF, Biological Industries、イスラエル)、10% WEHI-CMをIL-3およびml当たり2ユニットのエリスロポエチン(rhEPO R & D Systems、ミネアポリス)の供給源として含んでいた。8-9後、コロニーを、Olympus暗視野顕微鏡を用いて数えた。コロニーをマイクロピペットで取り上げ、細胞遠心し、差別的カウントのためにMay-Grunwald-Giemsaで染色した。各標本につき少なくとも700個の細胞をカウントした。

CFU-GEMMにおける樹状細胞の増殖:
上に巨核球増殖の定量用として記載した一次骨髄細胞から育成した多能性(CFU-GEMM)コロニーを収集し、染色し、樹状細胞についてカウントした。各標本につき少なくとも700個の細胞をカウントした。

CFU-GEMMにおけるプラズマ細胞の増殖:
上に巨核球増殖の定量用として記載した一次骨髄細胞から育成した多能性(CFU-GEMM)コロニーを収集し、染色し、プラズマ細胞についてカウントした。各標本につき少なくとも700個の細胞をカウントした。

CFU-GEMMにおけるマクロファージ細胞の増殖:
上に巨核球増殖の定量用として記載した一次骨髄細胞から育成した多能性(CFU-GEMM)コロニーを収集し、染色し、マクロファージ細胞についてカウントした。各標本につき少なくとも700個の細胞をカウントした。

CFU-GEMMにおける赤血球の増殖:
上に巨核球増殖の定量用として記載した一次骨髄細胞から育成した多能性(CFU-GEMM)コロニーを収集し、染色し、赤血球についてカウントした。各標本につき少なくとも700個の細胞をカウントした。

CFU-GEMMにおける多形核細胞(PMN)の増殖:
上に巨核球増殖の定量用として記載した一次骨髄細胞から育成した多能性(CFU-GEMM)コロニーを収集し、染色し、多形核細胞についてカウントした。各標本につき少なくとも700個の細胞をカウントした。

ヒト骨髄および臍帯血液細胞から得られた巨核球および赤血球形成細胞の増殖:
外見上健康なヒトから得た骨髄サンプルを、Histopaque-107(Sigma Diagnostics)を用い密度勾配分離して、単核球(MNC)の純化集団を得た。コロニーアッセイを、最終濃度0.92%のメチルセルロース(4000 centripase粉末、Sigma Diagnostic)を含むプレート培養液にて行い、36 mM重炭酸ナトリウム(Gibco)、30%牛胎児血清(FBS)(Hyclone)、0.292 mg/mlグルタミン、ml当たり100ユニットのペニシリン、およびml当たり0.01 mgのストレプトマイシン(Biological Industries, Beit Haemek)を含む、Iscoves改変Dulbecco培養液に再度水和した。正常分娩より得た臍帯血を収集し、前述のように調製した。

ml当たり105 MNCを含むコロニーアッセイ培養液を、24ウェル組織培養プレート(Greiner)に、ウェル当たり0.33 mlで3重にプレートした。培養体を、5% CO2、95%空気の雰囲気、55%相対湿度下、37℃で、表示の濃度の天然カゼイン由来ペプチド、またはカゼイン由来合成ペプチドの共存下、または共存無しで、インキュベートした。14日後、プレートを、50を超える細胞を含むコロニーについて数えた。巨核球は、ヒト血小板糖タンパクを認識する、特異性の高いウサギ抗体、および、FITC-接合ヤギ抗ウサギIgGを用いる間接的免疫蛍光法によって特定した。顆粒細胞マクロファージコロニーの発達を誘発するために添加された増殖因子は、ml当たり15 ngのleucomax (GM-CSF)(Sandoz Pharma)、および5% v/vのヒト植物凝集素-m(Difco Lab)誘発条件培養液(CM)を含んでいた。赤血球コロニーの形成を誘発するために、エリスロポエチン(EPO)2単位/mlを用いた。(赤芽球バースト形成単位-BFU-E)

それとは別に、同意したボランチアドナー、または、自己骨髄移植を受けた患者から得たヒト骨髄細胞を、天然カゼイン由来ペプチドをml当たり10 -1000 μg含む培養液で予備培養し、半固形寒天で育成し、処置後7または14日に、顆粒細胞-マクロファージ造血コロニー(GM-CFU)について数えた。

巨核球増殖は、ヒトの健康な同意ドナーから得た正常な骨髄細胞について、液体培養サンプル(RPMI-1640プラス、10%ヒトAB血清、グルタミン、および抗生物質)において、100 μg/mlの天然カゼイン由来のペプチドの共存下に、または共存無しで、巨核球数を数えるか、あるいは、コロニー形成を評価するためのメチルセルロースアッセイにおいて測定した。2 x 105個の骨髄細胞を、天然カゼイン由来のペプチドと組み合わせた、または組み合わせない、標準的な増殖因子の共存下に撒いた。メチルセルロースアッセイでは、巨核球は、接種後12-14日に倒立顕微鏡にてカウントした。

天然カゼイン由来ペプチドによる臨床治験:
一連の治験において、ヒト被験者について、天然カゼイン由来のペプチド50 mgを含む単回用量を、3箇所に、2時間に渡って筋肉内投与した。臨床パラメータを表示の間隔で監視した。別の治験では、ガンおよび転移性疾患について様々な治療段階にある、および/または、それらの疾患の寛解期にある患者に、天然カゼイン由来ペプチドを1回または2回投与し、末梢血の細胞カウントの変化を監視した。

ヒト・リンパ球のインビトロHIV感染の抑制
ペプチド:
ペプチド(天然カゼイン由来ペプチド、または、カゼイン由来合成ペプチド(2-26個のアミノ酸長、表3参照))であって、凍結乾燥粉末として支給されたものをRPMI完全培養液に再懸濁し、最終濃度50から1000 μg/mlとなるように細胞媒体に加えた。

細胞:
いくつかのタイプの、ヒトの新鮮な分離細胞(一次細胞)および細胞系統は、インビトロのHIV-1感染に対して感受性を持つことが知られる。ただし、CD4分子を、低レベルであれ、表面に表示する細胞は事実上全てが、HIV-1感染の標的として考慮することが可能である。HIV-1感染に対して高度の感受性を持つ、二つの一般的に使用されるヒト細胞系統、CEMおよびSup-T1を選んだ。

CEMは、最初G.E. Foley et al. [(1965), Cancer 18:522]によって、急性リンパ芽球性白血病を患う4歳の白人女児の末梢血バフィーコートから得られた、ヒトT4-リンパ芽球細胞系統である。これらの細胞は、培養液中で連続的に懸濁状態に維持され、感染性、抗ウィルス剤、および中和抗体の分析に広く使用された。

Sup-T1は、非ホジキン型T-細胞リンパ腫を患う8歳の男児の胸水から単離されたヒトのT-リンパ球細胞系統である[Smith, S.D. et al. [(1984) Cancer Research 44:5657]。この細胞は、高レベルの表面CD4を発現し、細胞融合、HIV-1の細胞傷害作用および感染性の実験に有用である。Sup-T1細胞は、濃縮培養液に懸濁させて育成する。

培養液:
細胞は、10%牛胎児血清、2 mMグルタミン、および2 mMペニシリン-ストレプトマイシン(GIBCO)を添加したRPMI-1640完全培養液にて育成した。

ウィルス:
用いたHIVウィルス株は、元HTLV-IIIBと表示されていたHIV-1 IIIBである。数人の、AIDSおよび関連疾患の患者から得た末梢血液の濃縮培養体を用いて、H-9細胞において恒久生産的感染を確立した。このサブタイプBは、ヒトのT細胞において高い複製能力を持つ。ウィルスタイターは、保存液においてml当たり5.38 ngであった。

FITC-標識ペプチド:
それぞれ、約494/520 nmに励起/発射最大値を有するFITC F-1300 (フルオレセインイソチオシアネート異性体I、Sigma (F25o-2)、セントルイス、ミズーリ州、米国)を用いた。アミン反応性フルオレセイン誘導体は、タンパクを共有的に標識するための、恐らくもっとも普遍的な蛍光誘導体試薬であろう。FITC接合の、天然カゼイン由来ペプチドは、FITCを、リシンのアミノ基に共有結合させることによって調製した。

HIV-1 P24抗原捕捉アッセイ:
用いたHIV-1 P24抗原捕捉アッセイキットは、細胞におけるウィルス生産の程度と比例するHIV-1 P24コア抗原を定量化するように設計されていた。このキットは、SAIC-NCI-Frederick Cancer Research InstituteのAIDSワクチンプログラム、P.O.Box B, Frederick, メリーランド州21702、米国から購入したものであるが、HIV-1 P24に対するモノクロナール抗体でコートされた96ウェルプレート、一次抗体ウサギ抗HIV P24血清、二次抗体ヤギ抗ウサギIgG(H+L)ペルオキシダーゼ接合抗体、TMBペルオキシダーゼ基質システム、および、HIV-1 P24分解標準を含む。HIV-1 P24抗原捕捉アッセイは、450 nmにおいてOrganon-Technica ELISAリーダーにより分析した。参照は650 nmにおいて行った。

HIV-1 P24抗原捕捉ELISA:
HIV感染は、組織培養液におけるHIV-1 P24コア抗原を検出する、間接的酵素免疫アッセイによって測定した。組織培養液上清を、一次ウサギ抗HIV-1 P24抗原と反応させ、ペルオキシダーゼ接合ヤギ抗ウサギIgGによって視像化した。反応は、4N H2SO4を加えて停止させた。この時の発色強度は、組織培養液上清中に存在するHIV-1の量に比例する。

バイオハザードレベル3(BL-3)実験室:
ウィルス生産、単離および感染、HIV-1感染細胞の組織培養、P24抗原含有上清の収集、およびP24抗原捕捉ELISAは全て、BL-3施設において、NIHおよびCDC(米国)によって規定された生物安全性施行規則に従って実施された。

フローサイトメトリー:
FACSortセルソーター(Becton & Dickinson, San Jose, カリフォルニア州、米国)を用いて、(i)各実験における感染の程度が同じであることを確かめるために、HIV-1による感染前に、CD4陽性CEMおよびsup-T1細胞バッチのパーセントを定め、および、(ii)その細胞質および核に、天然カゼイン由来のFITC接合ペプチドを含むT細胞を検出する。

CO2インキュベータ:
ウィルス培養体生産のために、HIV-1を抱える細胞、天然カゼイン由来ペプチドで前処置した細胞とウィルス、および、さらにHIV-1とさらにインキュベートした細胞、これらは全て、実験期間を通じて湿潤CO2インキュベータの中に保存した。

ヒト培養CD4細胞のHIV感染:
長期インキュベーションでは、細胞(CEM、Sup-T1)はあらかじめ、いくつかの漸増濃度の天然カゼイン由来ペプチド(50 -1000 μg/ml)、または、漸増濃度のカゼイン由来合成ペプチド(10 -500 μg/ml)と24時間(合成および天然ペプチド)および48時間(天然ペプチドのみ)インキュベートし、その後、各ウェルにHIV-1 IIIBを加えた(最終濃度45 pg/ml)。短期インキュベーション(3時間)では、HIV-1 IIIBをペプチドと3時間インキュベートし、次に、組織培養プレートの細胞(ウェル当たり5000個細胞)に加えた。コントロールは、IF(感染、HIV-1と培養するが、ペプチドとは培養しない細胞)、UIF(非感染、HIV-1ともペプチドとも培養しない細胞)、およびUIF+Ch(非感染+天然カゼイン由来ペプチド、天然カゼイン由来ペプチドおよびカゼイン由来合成ペプチドの、細胞生存率および増殖に及ぼす作用を調べるために、天然カゼイン由来ペプチド(50 -1000 μg/ml)の存在下で培養する細胞)であった。細胞は、感染(P24抗原培養上清の収穫日)後7、10、および14日目に生存率および増殖率についてカウントした。細胞、および組織培養上清(培養液)を収穫し、直ちに1/10容量の10% Triton X-100において分解した。これらのサンプルはさらに37℃で1時間インキュベートし、P24抗原について試験するまで-80℃で保存した。

共焦点顕微鏡観察:
レーザー走査共焦点顕微鏡観察技術を採用する、TW Zeiss Axiovert 135M倒立顕微鏡に取り付けた、Zeiss LSM 410共焦点レーザー走査ソシテムを用いて、FITC接合ペプチドの細胞中への浸透を検出した。T細胞を、天然カゼイン由来FITC接合ペプチドと共に、5% CO2、95%空気、37℃インキュベータ中でインキュベートした。その後、細胞を、リン酸バッファー生食液(PBS)で3回洗浄し、未結合FITC-ペプチドを除去した。細胞を3.8%フォルマリン10分間で固定し、PBSで2回洗浄し、50 -100 μl PBSに再懸濁し、細胞を顕微鏡下に観察した。様々なインキュベーション時点(15分、30分、1時間、1.5時間、および、3時間)で得られた、その細胞質および核の中に種々の量のFITC-天然カゼイン由来ペプヂト表示する細胞を、3.5’’Zipドライb(230 MB)に保存し、Photoshopソフトウェアを用いて画像処理した。

[3H]-チミジン取り込み試験:
天然カゼイン由来ペプチドの、T細胞増殖に及ぼす作用を調べるために、Sup-T1細胞におけるHIV-1感染について前述した通りに、いくつかの濃度の天然カゼイン由来ペプチド(10 mg/mlRPMI保存液)を、96ウェル平底マイクロウェルプレートにおいてSup-T1細胞培養体に加えた(5000個細胞/ウェル)。細胞をカウントし、生存率をトリパンブルー染料排出に基づいて決めた。細胞に、各時点(3、7、10、および14日)で18時間(一晩)[3H]-チミジンにパルス暴露し、グラスファイバー・フィルターにて収集し放射能を読み取った(細胞DNAにおける[3H]-チミジンの取り込みは細胞増殖の程度に比例する)。

正常、骨髄破壊、および移植レシピエントのマウスおよびモルモットにおける、天然カゼイン由来ペプチドの毒性:
体重kg当たり最大5,000 mgの天然カゼイン由来ペプチドを、単回で、あるいは、3回投与で、正常な動物に筋肉内または静脈内投与した。BALB/c, C3H/HeJ、および非肥満糖尿病(NOD)マウスを含む種々の系統種を用いた。マウスは10ヶ月観察し、それから屠殺して剖検(毒性アッセイ)するか、あるいは、200日観察した(生存率)。モルモットは、1匹当たり天然カゼイン由来ペプチド20 mgの単回筋肉内注入を行った。15日後、モルモットは屠殺し、病理学検査を行った。

骨髄移植レシピエントマウスにおける白血球および血小板の再形成:
BALB/cマウスを、放射線源に対し70 cmの皮膚距離、1分当たり50 cGyの用量で合計600 cGyで致死量未満用量で被爆させた。被爆マウスには、前述のように同種骨髄によって再形成させ、二重盲検プロトコールに従って、24時間後、1匹の動物当たり1 mgの天然カゼイン由来ペプチド、カゼイン由来合成ペプチド(13-26アミノ酸、上記表3参照)、または、ヒト血清アルブミン(コントロール)を静注した。白血球再形成は、投与後6から12日の表示間隔において収集した末梢血の細胞カウントに基づいて定量した。血小板再形成は、投与後6から15日の表示間隔において収集した、眼球後血管叢からEDTA含有瓶に移した血液における細胞カウントに基づいて定量した。

さらに別の一連の実験では、CBAマウスに致死量(900 cGy)を被爆させ、BM細胞によって再形成させ、前述のように天然カゼイン由来ペプチド、または、ヒト血清アルブミンを投与した。血小板再形成は前述のようにして定量した。

第3の一連の実験では、マウスを被爆させ(800 cGy)、再形成させ、1.0 mgのカゼイン由来合成ペプチド(ペプチド3aおよび4Pで、それぞれ、αS1カゼインのN末端の、最初の6個および12個のアミノ酸を表す−上の表3を参照)を腹腔内に、移植4、5、6、および7日目以後毎日注入した。血小板再形成は、移植後10および12日目に定量した。

第4の一連の実験では、F1マウスを被爆させ(750 cGy)、同種骨髄にて再形成させ、24時間後、1匹のマウス当たり1 mgのカゼイン由来合成ペプチド、β-カゼインのアミノ酸193-208を表すもの、および、αS1カゼインのN末端のアミノ酸1-22を表すものを静注した。さらに、2グループのマウスに、それぞれ、αS1カゼインの位置1-23の天然分画、および、κ-カゼインのアミノ酸座標106-169を表す、天然のκ-カゼイン由来ペプチドの分画(配列番号30)を投与した。WBCカウントを、移植後5、7、10、および12日目に行った。

骨髄移植レシピエントマウスの再形成およびドナーマウスにおける骨髄細胞増殖の強化
C57B1/6マウスを、放射線源に対し70 cmの皮膚距離、1分当たり50 cGyの用量で合計900 cGyで致死量被爆させた。被爆マウスには、ドナーマウスによる同種骨髄によって再形成させた。ただし、ドナーマウスには、二重盲検プロトコールに従って、骨髄採取の1時間前に、1匹の動物当たり1 mgの天然カゼイン由来ペプチド、または、生食液(コントロール)を投与した。一つの実験では、マウスの生存率を18日間監視した。別の実験では、マウスを8日後に屠殺し、脾臓コロニー形成を監視した。

カゼイン由来合成ペプチドはコレステロールレベルを有意に下げる
7週齢雌性C57B1/6jマウスにおいて、カゼイン由来合成ペプチドがどれくらいコレステロールレベルを下げることができるのか、その能力を、アテローム誘発性食餌を摂取させた後に評価した。マウスを8匹から成るグループに分けた。一つのコントロールグループには正常な食餌を与えた。第2のコントロールグループには、コール酸塩を含むThomas Hartroft改変食餌(#TD 88051: Teklad、マジソン、ウィスコンシン州)[Gerber, D.W. et al., Journal of Lipid Research. 42, 2001]を与えた。残余の実験グループには皆Thomas Hartroft改変食餌を与えた。その食餌で養って1週間後、血清コレステロール値は有意に増加し、カゼイン由来合成ペプチドを、1匹のマウス当たり1 mgで腹腔内に注入し、次いで、1週間後0.1 mgの第2注入を行った。

血液のコレステロールレベルは、Roeschlou & Allin酵素法によるRocheコレステロールアッセイに基づいて定量した(Roche, Inc., ドイツ)。

実験結果
天然カゼイン由来ペプチド:
凝固乳が場合によって細菌成長を支持しないことがあるという観察から始まって、殺菌性を持つカゼイン断片がミルクタンパクから単離された(Katzirkatchalsky等に交付された米国特許第3,764,670号)。天然カゼインのタンパク分解によって得られる未精製ペプチドは、カゼインのタンパク分解酵素消化物の可溶性分画の酸性沈殿、透析、および凍結乾燥によって調製された。長期保存後の生物活性を調べて見ると、この未精製調剤は、凍結乾燥し4℃で保存すると、(インビトロでも、インビボでも)少なくとも24ヶ月の間活性を維持することが注目された。

低温処理天然カゼイン由来ペプチド:
例えば、Hill等によって記載される従来法によるカゼイン加水分解産物の調製は、タンパク分解酵素の高温(>75℃)による不活性化を必要とする。これは、時間のかかる工程であるが、これによって、天然カゼインからペプチドを生産するのに必要とされる大量のタンパク分解酵素、および、加水分解産物そのものを変性させる可能性のある未知の作用の非可逆的変性が実現される。本発明を実地に還元する際、天然カゼインからペプチドを生産するタンパク分解工程は、冷却、アルカリ処理、およびそれに続く酸性化を含む、新規の単純な方法によってより効率的に終息させることが可能であるという驚くべき観察所見が得られた。

代表的な調製品において、低温処理を従来の加熱処理と比較するために、前述のように調製した1.7%カゼイン液を、タンパク分解酵素(例えば、キモシン(別名レニン)、これを結晶レニンとして、または、非動物起源の市販のキモシンとして用いる。ペプシンのような他のタンパク分解酵素も使用が可能である)によるタンパク分解工程にかけた。

1.7%カゼイン液の各1 ml当たり20 ngの酵素を加えた。カゼインのタンパク分解酵素消化は、30℃で14.5時間後に完了した。

反応完了後、直ちに反応混合物を10℃未満に冷却し、冷却TCA(トリクロロ酢酸)を加えて2%とし、10℃未満に維持した。天然カゼイン由来ペプチドの大部分を依然として含んでいる上清を取り出し、ろ過した後、上清を冷却TCA中で10 -12.5%とし、10℃未満の温度で1370x gで遠心した。

得られた沈殿は天然カゼイン由来ペプチドを含むが、これを取り出し、H2Oに溶解し、アルカリ溶液にて強塩基とした(pH 9 -13)。この溶液をその塩基性pHに維持したまま15分から1時間放置し、次にHClにて最終pHがpH7 -9となるように酸性化した。さらなるペプチドの精製は、前述のようにゲルろ過またはダイアフィルトレーションにて行った。

この溶液を十分な時間(15分から1時間)アルカリpH(pH9 -13)に維持すると、酵素活性は完全に停止され、その非可逆的変性がもたらされるという驚くべき観察所見が得られた。

天然カゼイン由来ペプチドに含まれる活性ペプチドを特定するために、凍結乾燥調剤を、前述のように、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって画分した。分析した凍結乾燥サンプルは全て、類似した時間プロフィールを示し、その内容は既述の通りであった。

従って、天然カゼイン由来未精製ペプチドの大きな成分は、αS1カゼインのN-末端断片、βカゼインの一断片を表すペプチド(配列番号27)、および、κカゼインの一断片を表すペプチド(配列番号30)である。特定された小さな成分は、αS1カゼインN-末端の一断片、すなわち、αS1カゼインの、さらに別の一断片を表すペプチド(配列番号31)、αS2カゼインの一断片を表すペプチド(配列番号32)、および、αS2カゼインのさらに別の一断片を表すペプチド(配列番号33)である。

天然カゼイン由来ペプチドは、げっ歯類およびヒトにおいて無毒である:
高用量の天然カゼイン由来ペプチドの、マウス、ラット、モルモット、およびヒトボランチアに対する短期的および長期的作用を広範に調べた結果、本調剤の毒性、催奇性、または有害な副作用の無いことが確かめられた。ある一連の試験では、天然カゼイン由来ペプチドの推定有効用量の7,000倍に相当する単回用量をマウスに筋肉内投与した。投与14日後に行われたマウスの標準的剖検病理検査では、内臓器に対する毒性作用や、その他の異常は認められなかった。同様の毒性試験をモルモットについても行ったところ、天然カゼイン由来ペプチド20 mgを筋肉内に単回投与後2週間において異常は認められなかった。別の一連の実験において、高用量の天然カゼイン由来ペプチドを健康なマウスに投与したが、2週間後に測定した、白血球数(WBC)、赤血球数(RBC)、ヘモグロビン(HGB)、電解質、グルコース、およびその他を含むいくつかの血液学的パラメータに対し何の作用も見られなかった。第3の一連の実験では、マウスとラットにおいて、体重kg当たり100 mgという高用量を2週間繰り返したが、剖検において、アレルギー反応、遅延型皮膚反応、またはアナフィラキシー反応、および病理的作用は全く見られなかった。天然カゼイン由来ペプチドの、被爆した、骨髄再建BALB/cおよびC3H/HeJマウスの長期の生存率に及ぼす作用を調べたところ、治療マウスの生存率(27匹のBALB/cおよびC3H/HeJマウスの内18匹、66%)は、アルブミン投与コントロール(26匹のBALB/cおよびC3H/HeJマウスの内4匹、15%)の生存率を明らかに上回っていた。天然カゼイン由来ペプチドを投与したマウスにおける標準的催奇性試験(詳細については、例えば、Drug Safety in Pregnancy, Folb and Dakes, p. 336, Elsevier; Amsterdam, New York, Oxford (1990)を参照されたい)では、これらのペプチドが、発達パラメータに及ぼす作用は全く認められなかった。

げっ歯類で試験した場合に毒性または副作用が全く見られなかったのと同様に、天然カゼイン由来ペプチドは、ヒトに投与した場合にも安全であった。天然カゼイン由来ペプチドを7名の健康なヒトボランチアに筋肉内投与する試験において、投与前、投与中、および投与後7日目に採取した血液および尿サンプルを比較したが、臨床パラメータのいずれにも変化は認められなかった。外にも否定的作用は観察されなかった。

このように、げっ歯類に対し、高用量の天然カゼイン由来ペプチドを長期に渡って投与しても、見かけ上、何ら有毒な、病理的、過敏症、催奇性、血清学的、またはその他の否定的作用は認められなかった。さらに、天然カゼイン由来ペプチドを、長期および短期の合併症を招く危険度の高い用量で被爆マウスに投与しても、200-300日を上回る、著明な生存利得が得られた。上記、および、天然カゼイン由来ペプチドを注入されたヒトの健康なボランチに有害な作用が見られなかったことは、非経口的投与におけるこのペプチドの安全性をはっきりと証明する。

移植レシピエントマウスにおける骨髄再建:
C57B1/6マウスを致死量に被爆させ、ドナーマウスからの同種骨髄によって再建した。ドナーマウスには、骨髄移植の1日前に、天然カゼイン由来ペプチドを動物1匹当たり1 mg投与するか、またはそのような投与を行わなかった。この時、投与マウスから骨髄を受容した被爆マウスの生存率は、非投与マウスから骨髄を受容した被爆マウスの生存率をはるかに上回った(投与マウスから骨髄を受容した被爆マウスの生存率は、被爆後10日目で、18匹中15匹であったが、一方、生食液投与コントロールマウスの骨髄細胞を受容した被爆マウスの生存率は、被爆後10日目で、17匹中4匹であった)。投与マウスの骨髄を受容した被爆マウスから得られた脾臓は、生食液投与コントロールマウスの骨髄細胞を受容した被爆マウスの脾臓と比べて、1脾臓当たり、約2から3倍のコロニーを含んでいた(1-5コロニー、対、0-3コロニー)。

天然カゼイン由来ペプチドはリンパ球増殖を刺激する:
ナチュラルキラー(NK)細胞および細胞傷害性T細胞は、積極的細胞傷害性および免疫調整リンフォカインの分泌の両方を通じて、免疫系の、感染源およびガン細胞の侵入に対する保護能力の維持のために決定的に重要である。AIDSまたは化学療法後に見られる免疫危機は、異常に弱体化されたTまたはNK細胞活性をもたらす。BALB/cおよびC57B1/6マウスから得られた正常なマウス骨髄細胞を、100 μg/mlの天然カゼイン由来ペプチドの存在下に培養すると、NK活性の明瞭な増加が、両方のエフェクター:標的細胞比グループに観察された。さらに、25:1エフェクター:標的細胞比では、平均NK活性は、13.93%から30.77%へ上昇し、50:1エフェクター:標的細胞比では、平均NK活性は、13.68%から44.05%へ上昇した(図1)。顆粒細胞コロニー刺激因子を投薬されたドナーから得られたヒト末梢血幹細胞を使用した同様の実験は、天然カゼイン由来のペプチドにより標的細胞分解のさらに顕著な濃度依存性の刺激を示した。

第1組の実験では(図2a)、一人の患者から採取した血液サンプルで、天然カゼイン由来ペプチドの濃度を漸増させながら、2通りのエフェクター:標的細胞比でインキュベートしたサンプルにおいてNK活性を測定した。コントロールの、未処置のPBSC培養体では4%の35S放出しか測定されなかった。最低のペプチド濃度(ml当たり5 μg)においてほぼ同じパーセント放射能(4%)が認められた。一方、より高いペプチド濃度では、すなわち、10 μg/mlから100 μg/mlの濃度範囲では、エフェクター:標的細胞比が100:1の場合には10.8 -14.9%の35S放出が、エフェクター:標的細胞比が50:1の場合には8.3 -14.5%の35S放出が測定された(図2a)。

正常な(患者1)、および病気の(患者2-6)ヒト・ドナーから得られたPBS細胞を、漸増濃度の天然カゼイン由来ペプチドとインキュベートしたところ、病気患者のNK細胞活性については有意な強化が測定された。すなわち、天然カゼイン由来ペプチドは、正常な患者のNK活性には最小の作用しか及ぼさないが(35S放出が13%から15%へ増加、患者1)、乳ガン患者および非ホジキン型リンパ腫患者(例えば、患者3と4)から得られたPBS細胞は、そのNK活性において目覚しい、用量依存性増加を示した(それぞれ、35S放出が3.5から10.8%、12.2から19.1%)(図2b)。

天然カゼイン由来ペプチドは、CD56表面抗原陽性(NK)細胞の増殖を刺激する: 別の一連の実験では、G-CSF投薬を受けた5名のヒト・ドナーから得られた末梢血幹細胞(PBSC)を、天然カゼイン由来ペプチドと10、14、または28日間インキュベートし、次に、CD56抗原の有無について定量した。一人の患者(患者1)を除いて全てのドナーのペプチド処理細胞において、CD56抗原の目覚しい増加が観察された。代表的な反応を図3aに示す。天然カゼイン由来ペプチドとの存在下に、または該ペプチド無しに10日間インキューションした後、CD56表面抗原陽性(NK)細胞が、直接免疫蛍光染色によって検出された。全体として、天然カゼイン由来ペプチドとのインキュベーションによって、CD56について染色陽性となる細胞の平均パーセントは、コントロールグループの0.64%から、投薬後では2.0%に増加した(図3a)。

天然カゼイン由来ペプチドは、CD3表面抗原陽性(T)細胞の増殖を刺激する:
5名の被験者から得られたBPS細胞における、天然カゼイン由来ペプチドの、CD3表面抗原陽性(T)細胞の増殖に及ぼす作用を直接免疫蛍光によって定量した。一人の患者(患者4)を除く全ての患者において、天然カゼイン由来ペプチドとの14日間のインキュベーションは、T-細胞増殖において、ある場合には5倍を超える著明な増加をもたらした。以上まとめると、CD3について染色陽性となる細胞の平均パーセントは、コントロールグループの19.45%から、処理グループの35.54%に増加した(図3b)。

天然カゼイン由来ペプチドは、CD56およびCD3(NK/T細胞)表面細胞の増殖を刺激する:
さらに別の実験で、7名の患者からえられたPBSCを、天然カゼイン由来ペプチドと28日間インキュベートし、NK/T細胞(CD56およびCD3表面抗原陽性)の増殖に及ぼす作用を直接的免疫蛍光によって検出した。天然カゼイン由来ペプチドとのインキュベーションは、T-細胞増殖を、ある場合(患者6)には5倍以上刺激し、一方、CD3陽性(T-)細胞の平均パーセントは、コントロールグループの2.08%から、投与グループの6.49%に増加した。CD56およびCD3表面抗原陽性(NK/T)細胞の数は、コントロールの1.1%から投与グループの4.3%に増加した(図3c)。従って、天然カゼイン由来ペプチドは、正常なマウスおよびヒトの造血前駆細胞から得たT-リンパ球およびナチュラルキラー細胞両方の増殖を刺激する。重要なことは、天然カゼイン由来ペプチドの最大免疫刺激作用は、最初は、T-およびNK細胞レベルが低いヒト・ドナーにおいて見られたことである(図3a-c)。

カゼイン由来合成ペプチドは、インビトロでヒト・リンパ球の増殖を刺激する:
αS1カゼインの最初の3から26個の残基を表す、カゼイン由来合成ペプチドを、健康人およびガン患者(下記参照)から得られたPBSCとインキュベートすると、NK細胞活性の有意の増加が観察された。標的細胞分解は、αS1カゼインの最初の9個以上の残基を含むペプチドの僅か10 μg/mlと2日間インキュベーションした後の、非ホジキン型リンパ腫および乳ガン患者のPBSC培養体において最大であった(コントロールの3倍から5倍以上)(図4)。同じ条件で、健康なヒトのドナーから得られたPBSC培養体では、調べたどのペプチドもNK活性対して有意な作用を及ぼさなかった。従って、αS1カゼインN末端配列の最初の10残基を含むペプチドでは、そのごく低濃度のものでも、ガン患者から得られた細胞において、リンパ球のインビトロ増殖を選択的に刺激することが可能である。

αS1カゼインの最初の3個のアミノ酸残基を表すカゼイン由来合成ペプチドと共に、造血疾患を患うヒト・ドナーから得られたPBS細胞をインキュベートすると、類似の、NK細胞活性の刺激が観察された。このペプチドとのPBS細胞のインキュベーションは、標的細胞の分解を、未処置コントロールの2倍から8倍を超えるレベルまで増加させた。試験した5名の患者の内、3名は25 μg/mlのペプチド濃度に反応し、1名が100 μg/mlのペプチド濃度に反応し、1名が250 μg/mlに反応した。健康なヒトのドナーから得られたPBSC培養体をαS1カゼインの最初の3個のアミノ酸を表す合成ペプチドで処理しても、NK活性に対する有意な作用が観察されなかった。これは、カゼイン由来ペプチドの、ヒト・リンパ球刺激性における選択性を確かにするものである。

ヒト造血前駆細胞の造血機能刺激:
造血前駆細胞は様々な血球に分化する。すなわち、マクロファージ、単球、顆粒球、リンパ球、赤血球、および巨核球である。前駆細胞は骨髄に豊富であるが、顆粒細胞コロニー刺激因子処理(PBSC)後の末梢血、および、新鮮な臍帯血中にも見られる。漸増濃度(ml当たり50 -600 μg)天然カゼイン由来ペプチドを、ヒトの骨髄、PBSC、および臍帯血の培養体に加えると、[3H]-チミジン取り込みで測定した場合、細胞増殖が認められた(図5a-5c)。ヒトPBSC増殖は、15日の培養後ではml当たり300 μgにおいてもっとも大きく作用された(図5a)。さらに大きな作用が、培養臍帯血細胞に認められた。すなわち、天然カゼイン由来ペプチド(600 μg/ml、図5c)と14日間(7日間では見られない)インキュベーション後([3H]-チミジン取り込みにおいて3から4倍増加)した。4名のドナーの内3名から得られた培養ヒト骨髄細胞も、天然カゼイン由来ペプチド(300 μg/ml)と21日間インキュベーション後に大きく反応した(3から5倍の取り込み増加)(図5b)。上記から、天然カゼイン由来ペプチドは、骨髄から得られたヒト造血前駆細胞の増殖を刺激するばかりでなく、他の供給源から得られた造血前駆細胞の増殖も刺激する。興味あることに、同様の条件で、培養ヒトK562(慢性骨髄性白血病)および結腸(結腸ガン)細胞系統を、高濃度(最大500 μg/ml)の天然カゼイン由来ペプチドとインキュベーションしても、[3H]-チミジン取り込みは全く作用を受けなかった。上記から、天然カゼイン由来ペプチドは、インビトロにおいて、ヒト造血前駆細胞の増殖を刺激するが、ガン細胞の増殖は刺激しない。

カゼイン由来ペプチドによる巨核球造血の刺激
天然カゼイン由来ペプチドは、培養マウス骨髄細胞の巨核球前駆細胞の増殖を刺激する:
多核巨核球は、骨髄において原始的幹細胞から発達し、成熟して巨大細胞となり、1個の巨核細胞当たり数千の血小板を生じる。血小板は、血液凝固形成にとって決定的に重要であり、骨髄破壊病態(化学療法または放射線療法後)では、血小板減少症が重大な関心事となる。

一次骨髄細胞培養体は、CFU-GM(顆粒細胞および単球)コロニー、およびCFU-GEMM(顆粒細胞、赤血球、マクロファージ、および巨核球)コロニーであって、他の血球タイプも含むコロニーを形成するように誘発することが可能である。コロニーカウントは、特定の前駆細胞の拡大を反映し、細胞数は増殖率を反映し、差別的細胞カウントは、どの特定の細胞系統が発達したのかを反映する[Patenkin, D. et al. (1990), Mol. Cel. Biol. 10, 6045-50]。エリスロポエチンおよびIL-3とインキュベートしたマウス培養骨髄細胞では、25 μg/mlの天然カゼイン由来ペプチドを添加し8日間培養すると、CFU-GEMMの数は、コントロールに比べて2と0.5倍増加し、CFU-GEMMにおけるコロニー当たりの相対的細胞数において3倍の増加を刺激した。同様の一連の実験で、骨髄細胞に天然カゼイン由来ペプチドを加え、エリスロポエチンおよび条件付け培養液(材料および実験方法の項を参照)によるインキュベートは、早期と後期における巨核球のパーセントに濃度依存性の増加(ペプチド不在の場合の15%巨核球が、500 μg/mlの天然カゼイン由来ペプチド共存下では50%に増加)を刺激した。従って、天然カゼイン由来ペプチドによる8日間の処理は、巨核球形成の有意の増加、およびマウス一次骨髄細胞培養体の発達を刺激した。

同様の一連の実験で、合成αS1-、αS2-、β-、またはκ-カゼインは、単独でも組み合わせても、培養マウス一次骨髄細胞においてGEMMコロニーの増殖を刺激した。前述のように調製し、25 μg/mlの、β-(配列番号28)、またはκ-(配列番号30)カゼイン由来の合成ペプチドに暴露させたマウス骨髄細胞において得られたGEMMコロニー数は、未処置(0 μg/ml)のコントロールに比べ、8日間インキュベーションでは大きく増強された(>100%)(図22)。驚くべきことに、この二つのペプチドは、組み合わされると、GEMMコロニー形成に対してさらに大きな作用を及ぼした。マウス一次骨髄細胞を、至適濃度のβ-(配列番号28)およびκ-(配列番号30)カゼイン(β + κ)の組み合わせに暴露すると、思いがけず、GEMM増殖に対する強度に強調された作用が得られた(>350%、図22)。従って、α-、β-、またはκ-カゼインから得られるペプチドは、それぞれの単独よりは、組み合わせた方が、より有効にGEMM増殖を刺激する。

カゼイン由来合成ペプチドは、培養マウス骨髄細胞における巨核球前駆細胞を刺激する:
上述の実験と同様に、かつ同様の実験条件下で、αS1-カゼインの最初の5から24アミノ酸を表すカゼイン由来合成ペプチドは、早期および後期の巨核球パーセントを、合成ペプチド無添加の15%から、25 μg/mlの合成ペプチド共存下の40%へと増加させる(図7)。従って、最初の5、6、11、12、17、18、19、20、21、および24アミノ酸を表す合成ペプチドによる8日間の処理は、マウス一次骨髄細胞培養体における巨核球形成および発達の有意な増加を刺激した。αS1-カゼイン由来の他の合成ペプチドにおいても、幾分程度は低いが、それと認められる刺激効果が観察された。

同様な実験設計において、β-カゼインのアミノ酸193-208(配列番号28)、κ-カゼインのアミノ酸106-127(配列番号30)、αS1-カゼインのアミノ酸1-22(配列番号21)を表す合成ペプチドは全て、マウス骨髄細胞一次培養体において、早期、後期、および全体での、巨核細胞の形成および発達の増加を刺激した。合成κ-カゼイン(配列番号30)、β-カゼイン(配列番号28)、およびαS1-カゼイン(配列番号21)を添加した細胞では、コントロールに対し、それぞれ、21%、32%、および57%上回る、巨核球の合計増殖の増加が観察された(図21)。

天然カゼイン由来ペプチドは、培養ヒト骨髄細胞における巨核球増殖を刺激する:
100 μg/mlの天然カゼイン由来ペプチドを、同様の条件下に、健康なドナーから得られたヒト骨髄細胞培養体に加えた場合、CFU-GMコロニーの形成は、別の刺激因子(GM-CSF、CM)を添加した場合にも、無添加でも増加した。天然カゼイン由来ペプチドはまた、エリスロポエチンの存在下に赤血球形成コロニーの形成を刺激した。ヒト骨髄細胞をトロンボポエチン(TPO)で処理すると、巨核球(MK)コロニーの形成が刺激される。TPO-処理細胞に天然カゼイン由来ペプチド300 μg/mlを加えると、MKコロニー増殖を2倍以上増加させる(ペプチド無添加では2 x 105個の細胞につき16コロニー、天然カゼイン由来ペプチド添加では2 x 105個の細胞につき35コロニー)。

さらに追加の造血因子、例えば、エリスロポエチン、ヒトIL-3、hSCF、およびAB血清の存在下に、天然カゼイン由来ペプチドと共に14日間インキュベートすると、ヒト骨髄細胞由来CFU-GEMMコロニーにおいてほぼ3倍の増加がもたらしたが(500 μg/mlの天然カゼイン由来ペプチドの存在下では158コロニー、造血因子のみでは68コロニー)、培養臍帯血CFU-GEMM形成に対しては作用は低かった(1.5倍)。培養ヒト骨髄細胞および臍帯血コロニーにおける相対的細胞数カウントは、25 μg/mlの天然カゼイン由来ペプチドの添加に反応した巨核球増殖を反映する(図6の表を参照)。従って、培養ヒト一次骨髄細胞および臍帯血細胞を、天然カゼイン由来ペプチドとインキュベートすると、巨各細胞および赤血球細胞両コロニーの発達と増殖は刺激される。重要なことは、巨核球増殖において、TPOと天然カゼイン由来ペプチドとの間に観察される協調関係は、このカゼイン由来ペプチドの刺激性の機構における造血細胞増殖因子の強力な役割の可能性を示し、さらに、広範なTPO-介在性作用に対し、天然カゼイン由来ペプチドによる同様の増強作用の可能性も示唆する。

天然カゼイン由来ペプチドおよび天然カゼイン由来合成ペプチドは、培養ヒト骨髄細胞におけるエリスロポエチン(EPO)の作用を増強する:
培養ヒト骨髄細胞において、カゼイン由来の天然および合成ペプチドの、赤血球増殖に及ぼす作用を、巨核細胞に関して上に概説したものと同じ条件下で評価した。EPOの存在下で加えると、50 -300 μg/mlの天然カゼイン由来ペプチド、または100 μg/mlのカゼイン由来合成ペプチド(F、表3、配列番号18)は、赤血球前駆細胞(BFU-Eコロニーの外見)の増殖を、EPOのみで処理した骨髄細胞に比べると、1および1.5(合成ペプチド)から4倍刺激した。上記から、天然カゼイン由来ペプチド、およびその合成誘導体は、EPOの赤血球刺激作用を増強するように働くので、広範な、臨床的に重要なEPO介在作用を増強するために使用することが可能である。

カゼイン由来合成ペプチドは、マウスCFU-GEMMにおける樹状細胞の増殖を刺激する:
マウスの一次骨髄細胞における樹状細胞増殖に及ぼす、カゼイン由来合成ペプチドの作用を、巨核細胞の刺激に関して上に概説したものと同じ条件下で評価した。αS1-カゼインの最初の2、3、5、6、7、9、11、12、16、23、24、および26アミノ酸を表す合成ペプチドは、カゼイン由来合成ペプチド無添加でインキュベートした細胞サンプルの樹状細胞増殖が0.1-0.2%であるのと比べて、樹上細胞増殖を2.2%から最大23%まで刺激した(図7)。

カゼイン由来合成ペプチドは、マウスCFU-GEMMにおけるプラズマ細胞の増殖を刺激する:
マウスの一次骨髄細胞におけるプラズマ細胞増殖に及ぼす、カゼイン由来合成ペプチドの作用を、巨核細胞の刺激に関して上に概説したものと同じ条件下で実証した。αS1-カゼインの最初の2、3、5、7、11、16、17、18、19、20、21、22、23、24、および26アミノ酸を表す合成ペプチドは、カゼイン由来合成ペプチド無添加でインキュベートした合計が0.3%であるのと比べて、合計細胞カウントを1.5%から最大12.3%まで著明に刺激した(図7)。

カゼイン由来合成ペプチドは、CFU-GEMMにおけるマクロファージの増殖を刺激する:
マウスの一次骨髄細胞におけるマクロファージ増殖に及ぼす、カゼイン由来合成ペプチドの作用を、巨核細胞の刺激に関して上に概説したものと同じ条件下で実証した。αS1-カゼインの最初の7、9、16、および23アミノ酸を表す合成ペプチドは、コントロールの合計細胞カウントの約17%から、カゼイン由来合成ペプチド存在下にインキュベートした細胞合計数の約30%まで著明に刺激した(図7)。

カゼイン由来合成ペプチドは、CFU-GEMMにおける赤血球の増殖を刺激する:
マウスの一次骨髄細胞における赤血球増殖に及ぼす、カゼイン由来合成ペプチドの作用を、巨核細胞の刺激に関して上に概説したものと同じ条件下で実証した。細胞を、αS1-カゼインN末端の最初の4アミノ酸を表す合成ペプチド(配列番号3)とインキュベートすると、コントロールの合計細胞カウントの53%から、カゼイン由来合成ペプチドとインキュベートした細胞における合計の71%まで著明に刺激した(図7)。

カゼイン由来合成ペプチドは、CFU-GEMMにおける多形核(PMN)細胞の増殖を刺激する:
マウスの一次骨髄細胞における多形核(PMN)細胞増殖に及ぼす、カゼイン由来合成ペプチドの作用を、巨核細胞の刺激に関して上に概説したものと同じ条件下で実証した。細胞を、αS1-カゼインの最初の3、6、7、9、16以上で26以下のアミノ酸を表す合成ペプチドとインキュベートすると、無添加コントロールにおける合計細胞カウントの1.6%から、カゼイン由来合成ペプチド共存下にインキュベートした細胞における合計の2.9%から14.9%まで著明に刺激した(図7)。

α-、β-、またはκ-カゼイン由来合成ペプチドは、CFU-GMにおいて顆粒球(GM)増殖を刺激する:
前述したように、CFU-GM(顆粒細胞および単球)コロニー、およびCFU-GEMM(顆粒球、赤血球、マクロファージ、および巨核球)コロニーの形成と拡大は、骨髄における造血前駆細胞の分化における早期事象の一つを構成する。マウスの一次骨髄細胞における顆粒細胞およびマクロファージの増殖に及ぼす、サイトカインIL-3および顆粒細胞刺激因子(G-CSF)付加の下における、α-、β-、またはκ-カゼイン由来合成ペプチドの作用を、巨核細胞の刺激に関して上に概説したものと同じ条件下で実証した。細胞を、アミノ酸1-22(J、配列番号21)および1-6(30-4、配列番号5)を表すα-、β-、またはκ-カゼイン由来合成ペプチドと、それぞれ単独で、または組み合わせてインキュベートすると(図19)、G-CSFと共に添加した場合、顆粒細胞の増殖を著明に刺激した(G-CSFの存在下において、”30-4”および”J”では、それぞれ、18%と25%の増加)(図19)。

α-、β-、またはκ-カゼイン由来合成ペプチドの同様の作用が、ヒトの骨髄造血前駆鎖いぼ由来の顆粒細胞およびマクロファージの増殖についても観察された。驚くべきことに、α-カゼイン由来合成ペプチド(”J”、配列番号21)、またはβ-カゼイン由来合成ペプチド(配列番号28)は、それぞれ、G-CSFの顆粒細胞刺激作用を、>50%(100 μg “J”)および30%(300 μg “β”)強化した(図20)。従って、αS1-、αS2-、β-、またはκ-カゼイン由来合成ペプチド、またはそれらの組み合わせは、顆粒細胞増殖因子、例えば、G-CSFの、骨髄造血前駆細胞の分化および拡大に及ぼす作用を増強するのに有効である。

天然カゼイン由来ペプチドは、被爆および骨髄移植後のインビボ造血細胞増殖を刺激する:
骨髄破壊療法は、血小板および白血球の危機的な減少をもたらすことがあり、しかもこの危機は、血球および増殖因子の投与にも拘わらず持続する可能性がある。下記は、被爆および骨髄移植後における天然カゼイン由来ペプチドの効果を実証する。

天然カゼイン由来ペプチドは、マウスにおいて同種骨髄移植後の白血球および血小板再建を強化する:
致死量未満(600 cGy)被爆し、最小の骨髄移植再建を実施された、BALB/cマウス(n = 12)について、骨髄細胞による再建の1日後に、天然カゼイン由来ペプチドをマウス1匹当たり1 mg静注したところ、投与後4、6、および15日目に、末梢白血球数カウントにおいて、ヒト血清アルブミンを投与されたコントロールに比べて、有意の増加が認められた(図8)。ペプチド投与、コントロール投与、被爆骨髄移植マウスの末梢血における血小板カウントは、投与後8日までは同様に低下した。しかしながら、13日目までには、天然カゼイン由来ペプチドを投与されたマウスの方に、明らかな優勢が認められた。これは、ヒト血清アルブミン投与コントロールに対する有意な増加であり、この増加は、15日にはさらに著明になった(図9)。従って、天然カゼイン由来ペプチドは、限られた数の骨髄細胞の移植後、血小板および白血球の再建を強化する。この作用は、限られた数の骨髄細胞ではなく、最適数の骨髄細胞を用いた場合、さらに再建を強化することが期待される。

さらに別の、同様の一連の実験において、天然のαS1-およびβ-カゼイン由来ペプチドを含む、部分的に精製(1 kDaカットオフ膜による透析ろ過)された調剤が、被爆、骨髄移植マウスにおける血小板再建を有意に強化する(コントロールを約25%上回る)ことが観察された。

カゼイン由来合成ペプチドは、マウスにおいて同種骨髄移植後の白血球再建を強化する:
致死量未満(600 cGy)被爆し、最小の骨髄移植再建を実施された、BALB/cマウス(合成ペプチド当たりn = 5、コントロールグループではn = 10)について、骨髄移植の1日後に、カゼイン由来合成ペプチド(13-26アミノ酸長、表3参照)をマウス1匹当たり1 mg静注したところ、白血球再建の明瞭な強化が観察された。ヒト血清アルブミンを投与されたコントロール(10日目、ml当たり1.67 x 106個細胞;12日目、ml当たり4.64 x 106個細胞)に比べ、15アミノ酸(10日目、ml当たり1.72 x 106個細胞;12日目、ml当たり6.54 x 106個細胞)、22アミノ酸(表3参照)(10日目、ml当たり2.74 x 106個細胞;12日目、ml当たり5.20 x 106個細胞)を持つペプチドでは、10日から14日に渡って、末梢白血球カウントに有意な増加が認められた。従って、カゼイン由来合成ペプチドは、限られた数の骨髄細胞移植後に白血球の再建を強化する。

同様の一連の実験で、前述のように致死量未満(750 cGy)の被爆を受け、骨髄再建術を受けたF1マウス(グループ当たりn = 5)に、再建術の1日後、1 mgの、αS1-(配列番号21)、β-(配列番号28)、またはκ-カゼイン(配列番号434)由来の合成ペプチドを、単独または組み合わせて、あるいは、天然のαS1-またはκ-カゼイン由来ペプチドを静脈内投与した。末梢白血球カウント(図24)は、天然のαS1-およびκ-カゼイン由来ペプチド、および、αS1-、β-、またはκ-カゼイン由来の合成ペプチドのいずれも、早期の白血球再建(移植後5および7日)を強力に刺激することを示す。

本発明を実地に還元する際、α-、β-、またはκ-カゼイン由来のペプチドの組み合わせの方が、同じ量の個別のペプチドよりも有意に効果的であることが明らかにされた。αS1-(配列番号21)およびβ-カゼイン(配列番号28)由来の合成ペプチドの最適用量の組み合わせの方が、それでマウスを処理した場合、αS1-またはβ-カゼイン由来の個別の合成ペプチド単独よりも、有意に高レベルに白血球再建を刺激した(図25)。

カゼイン由来合成ペプチドは、マウスにおいて同種骨髄移植後の血小板再建を強化する:
造血幹細胞培養体における巨核球増殖を強化するカゼイン由来合成ペプチドの観察された能力を確かめるために(図6および7を参照)、血小板再建に及ぼすペプチドの作用をインビボで調べた。致死量未満(800 cGy)被爆し、最小の骨髄移植再建を実施されたマウス(グループ当たりn = 5)について、合成ペプチド4Pおよび3a(それぞれ、6および12アミノ酸長、表3参照)を4日間連日マウス1匹当たり100 μg腹腔内注入したところ(移植後4から7日)、未処置のコントロールに比べ血小板再建の明瞭な強化が観察された。いずれのペプチドでも移植後10および12日目に著明な増加が認められた。ペプチド4Pの投与は、移植後12日目にカウントを29%増し(コントロールのml当たり676 x 103個細胞に比べ872 x 103/ml)、一方、ペプチド3aの投与は、移植後10日目に最大35.5%まで(コントロールのml当たり169 x 103個細胞に比べ229 x 103/ml)、12日目に最大13.5%まで(コントロールのml当たり461 x 103個細胞に比べ622 x 103/ml)増した。従って、カゼインから得られた同じ合成ペプチドは、インビトロの巨核球増殖、およびインビボにおいて骨髄移植後の血小板再建を強化する。

さらに一連の同様の実験において、致死量未満(750 cGy)被爆し、最小の骨髄移植再建(3 x 106個細胞)を実施されたF1マウスについて、カゼイン由来合成ペプチド1 mgを静脈内注入したところ、血小板カウントに著明な増加が認められた。β-カゼインのアミノ酸193-208を表す合成ペプチド(配列番号28)、およびκ-カゼインのアミノ酸106-127を表す合成ペプチド(配列番号30)の投与を受けたマウスは、移植後10日目において、未処置のコントロールマウスに比べ、血小板カウントが、それぞれ、32%および26%強化された。αS1-カゼインのアミノ酸1-22を表す合成ペプチド(配列番号21)(“J”)を投与された骨髄レシピエントマウスでも、移植10日目に、同様に血小板再建が強化された(図23)。

天然カゼイン由来ペプチドは、HIV-1ウィルスによる、リンパ球T細胞系統に対するインビトロ感染を抑制する
天然カゼイン由来ペプチドのリンパ球T細胞への侵入:
天然カゼイン由来ペプチドの免疫刺激作用および抗ウィルス作用の機構を調べるために、感受性の高いSup-T1およびCEM培養ヒトT細胞を、HIV-1ウィルスによるインビトロ感染の前に、天然カゼイン由来ペプチドによって処理した。蛍光顕微鏡観察によって、前述のようにSup-T1細胞が天然カゼイン由来ペプチド(100 μg/ml)とインキュベートされると、FITC接合の天然カゼイン由来ペプチドがSup-T1細胞に侵入することが明らかになった(図10a-f)。15分後、少量の標識が細胞の原形質に観察された(図10a-b)。30分(図10c-d)では、さらに多くの標識が原形質に観察され、核の取り込みも僅かに見られた。1時間のインキュベーションおよびそれ以降では(図10e-f)、天然カゼイン由来のFITC標識ペプチドは原形質に観察されるが、大部分は細胞核に集中していた。フローサイトメトリーによるSup-T1細胞の分析によって、天然カゼイン由来の標識ペプチドの取り込みは、インキュベーションの5分後から増加することが確かめられた。

天然カゼイン由来ペプチドは、ヒト・リンパ球の増殖を強化する:
培養液における天然カゼイン由来ペプチドの存在は、14日間に渡ってSup-T1細胞カウントの増加をもたらした。50 μg/mlの天然カゼイン由来ペプチドでは、細胞数の最大増加はインキュベーションの7日目(42%)、1000 μgでは10日目(30%)、600 μgでは14日目(32%)に観察された(データは示さず)。増殖示数を表す、培養細胞による[3H]チミジンの取り込みは、細胞数の増加を反映するが、600 μg/mlの天然カゼイン由来ペプチドではもっとも著明な作用が10日目に、50 μg/mlでは14日目に認められた(図11)。14日目における増殖示数の減少は恐らく、細胞の過度の増殖と栄養素の欠失を反映するものと思われる。

カゼイン由来合成ペプチドは、ヒト・リンパ球の増殖を強化する:
培養液におけるカゼイン由来合成ペプチド(表3に列挙される全てのペプチド)の存在は、10日間に渡ってSup-T1細胞カウントの増加をもたらした。増加は全ての合成ペプチドについて同様であった。感染細胞におけるリンパ球数の最大増加は、最初の9個のアミノ酸を表すペプチドの250 μgおよび500 μg/mlにおいて観察された(それぞれ、80%および33%)(データ示さず)。

天然カゼイン由来ペプチドは、ヒト・リンパ球細胞におけるHIV-1感染を抑制する:
HIV-1とのインキュベーションの24または48時間前に、あらかじめ天然カゼイン由来ペプチドで前処理した(50 -1000 μg/ml)、感受性のあるCEMリンパ球、あるいは、あらかじめ3時間天然カゼイン由来ペプチドで前処理したHIV-1に暴露させたCEMリンパ球では、未処理のコントロールに比べ、細胞増殖が強化され、かつ、ウィルスの感染レベルが低下することが示された。感染後15日目における細胞カウント、およびHIV-1 P24抗原アッセイによって、ウィルスを600 -1000 μg/mlの天然カゼイン由来ペプチドと3時間インキュベーションした後では、ウィルス感染の100%抑制が、および、細胞を50および600 μg/mlのペプチドと24時間インキュベーションした後では、それぞれ、98%および99%の抑制が見られることが明らかにされた(未感染コントロールUIFの細胞数と比べて)。インキュベーション時間をより長くしてもより有効である所見は得られなかった(図12)。漸増濃度の天然カゼイン由来ペプチドは、感染後3および24時間後に細胞増殖を強化した一方で、ウィルス感染は、このもっとも急速に成長する培養体においてもっとも著明に抑制された。細胞増殖およびHIV-1感染抑制のさらに目覚しい強化が、HIV-1感染前に天然カゼイン由来ペプチドによってあらかじめ処理されたSup-T1細胞において観察された(ウィルスの3時間前処置、および細胞の24時間および48時間の前処置では、それぞれ、96.7%、88.7%、および95.7%のウィルス感染の平均抑制)(図示せず)。従って、天然カゼイン由来ペプチドは、ヒト培養リンパ球とその核に侵入し、細胞増殖を強化し、かつ、CD4細胞の、HIV-1感染に対する感受性を著明に下げる。故に、天然カゼイン由来ペプチドは、HIV感染を予防するためにも、HIV感染したAIDS患者の、感染後治療にも有用であることが期待される。

カゼイン由来合成ペプチドは、ヒト・リンパ球細胞におけるHIV-1感染を抑制する:
カゼイン由来合成ペプチドが、ヒト・リンパ球細胞におけるHIV-1感染を抑制することが可能であることを、上に概説したものと同じ条件下でCEM-リンパ球を用いて実証した。HIV-1とのインキュベーションの24または48時間前に、あらかじめαS1-カゼイン(50 -1000 μg/ml)で前処理した、感受性を持つCEMリンパ球、あるいは、あらかじめ3時間αS1-カゼインで前処理したHIV-1に暴露させたCEMリンパ球では、未処理のコントロールに比べ、細胞増殖が強化され、かつ、ウィルスの感染レベルが低下することが示された。すなわち、αS1-カゼインの最初の3個のアミノ酸を表す合成ペプチドと24または48時間インキュベーションすると、HIV-1とのインキュベーション後における感染に対し著明な抵抗度が付与される。リンパ球の細胞数は、HIV-1感染コントロールの1.06 x 106と比べると、処理細胞では1.29 x 106(100 μg/ml)、および2.01 x 106(500 μg/ml)であった(図13)。感染後7日目にHIV-P24抗原アッセイによって測定した、同じ細胞におけるHIV-1感染レベルは、未処理コントロールと比べると(0.52 ng P24 抗原/ml)、ペプチド処理細胞では著明に低下していた(100 μg/mlと500 μg/mlでは、それぞれ、0.17および0.14 ng P24抗原/ml)。

同様に、αS1-カゼインの最初の5個のアミノ酸を表す合成ペプチドであらかじめ前処理した(3時間)ウィルスに暴露させたCEM細胞では、HIV-1の著明な抑制が観察された。

1 ml当たり10および25 μgのペプチド3Pとインキュベートした培養体における細胞数は、HIV-1感染コントロールの1.06 x 106に比べると、それぞれ、1.17 x 106および1.26 x 106であった。

感染後7日目におけるHIV- P24抗原アッセイによって、コントロールと比べると(0.52 ng P24 抗原/ml)、処理細胞ではHIV-1感染レベルが著明に低下する(10と25 μg/mlでは、それぞれ、0.26および0.18 ng P24抗原/ml)ことが明らかになった。

同様に、ウィルスを、αS1-カゼインの最初の6個のアミノ酸を表す、カゼイン4P由来の合成ペプチドとあらかじめ3時間インキュートすると、HIV-1感染に対するCEMリンパ球の感受性に著明な作用が見られた。

細胞数は、25および250 μg/mの濃度においてもっとも大きな影響が見られた(感染コントロール値の1.06 x 106と比べて、それぞれ、1.26 x 106および1.59 x 106)。

感染後7日目におけるHIV- P24抗原アッセイによって、未処理、感染コントロール培養体に比べ、ウィルス粒子の用量依存性減少が明らかになった(図13)。上記から、天然カゼイン由来ペプチドによって、リンパ球に付与されるHIV-1感染にたいする保護は、αS1-カゼインのN-末端の、最初の、僅か5個のアミノ酸を表すペプチドにおいても保存されている。

天然カゼイン由来ペプチドは、非肥満型糖尿病(NOD)マウスの糖尿の進展を阻止する:
非肥満型糖尿病(NOD)マウスは、自発的に若年性(I型、IDDM)糖尿病を発症する。これは、膵臓のβ細胞の炎症を招き、最終的に病気と死に至る自己免疫病態である。雌性NODマウスは極めて感受性が高く、僅か5週齢で、膵臓のランゲルハンスの島の間質マトリックスに対するマクロファージ侵入の徴候を示す。5週間の間に100 μgの天然カゼイン由来ペプチドの毎週1回または2回の注射(合計5または10回の注射)は、病気の開始および経過と関連する血糖の予防に完全に有効であった。200日までには、未処置コントロールマウス(n = 5)の100%が糖尿病に罹り、その後死亡したのに対し、処置マウス(n = 10)は100%正常血糖を維持し、365日において全てが依然として生存する(図14)。上記から、天然カゼイン由来ペプチドは、この自己免疫炎症性病態から、遺伝的に感受性を持つマウスを効果的に保護した。

カゼイン由来合成ペプチドは、非肥満型糖尿病(NOD)マウスの糖尿の進展を阻止する:
NODマウスにおける糖尿の進展に対するカゼイン由来合成ペプチドの予防作用を、上に概略したものと、100 μgのカゼイン由来合成ペプチドを毎週2回5週間のみの注射とした外は、同じ条件下で実証した。この実験の結果を下記の表4に示す。


血液は、1 kg体重当たりグルコース1gを腹腔注入後、0分および60分に眼窩周辺部血管叢から吸引した。グルコースの血漿レベルは、グルコースアナライザー2(Beckman Instruments, Fullerton、カリフォルニア州)で定量し、mmol/Lで表した。
*健康で良好=尿中に糖が検出されない。
糖尿≧ 1000 mg/dL
6匹の健康な雌性コントロールマウスに行ったIPGTT:0分−110 mmol/L、60分−106 mmol/L血糖

αS1-カゼインの最初の9個(X)(配列番号8)、11個(2a)(配列番号10)、および12個(3a)(配列番号11)のアミノ酸、およびもっと長い鎖長を持つ、カゼイン由来合成ペプチドも、本病の開始および進展と関連する糖尿を阻止する点で極めて効果的であった。

カゼイン由来合成ペプチドによる治療の効果を25週後に評価した。その時点では、未処置コンロールグループ(n = 5)の5匹のマウスは全て、明白な(>1000 mg/dl)糖尿の存在によって示されるように糖尿病になった(表4)。

αS1-カゼインN末端の最初の9個のアミノ酸を表す合成ペプチドで処置された5匹のNODマウスの内3匹(3/5)には糖尿は検出されなかった。αS1-カゼインN末端の11個のアミノ酸を表す合成ペプチドを注入されたグループでは、5匹のNODマウスの内4匹(4/5)に糖尿は検出されなかった。

糖尿が検出されたペプチド処置マウスのグループでは、一般に開始が、未処置コントロールの開始(データ示さず)に対し、著明に遅れた(3-5週)。これは、不完全ながらもペプチドが明らかに保護作用を持つことを示す。

カゼイン由来合成ペプチドでもっと短いものの保護作用についてもNODマウスについて調べた。前述のものと同様の、別の一連の実験において、αS1-カゼインの、最初の3個(1P)および4個(2P)のN末端アミノ酸を表すペプチドも、処置マウス(16週目に定量した)の糖尿の開始を効果的に阻止したが、一方、未処置コントロールは全て糖尿病になった(100%糖尿)(データ示さず)。

最初の9個のアミノ酸から成るカゼイン由来合成ペプチド(配列番号8)を注入したグループにおいて、健康で達者なNODマウスについて25週後グルコース負荷(IPGT)試験を行ったところ、異常なグルコース代謝の徴候は認められなかった(グルコース負荷前とグルコース負荷60分後において正常な血糖値)。

αS1-カゼインN末端の最初の11個のアミノ酸を表す合成ペプチド(2a)(配列番号10)を注入したグループにおいて、血漿の安静グルコースレベルは、5匹のマウスの内2匹ではやや上昇している(215および159 mmol/L)が、負荷後60分でも僅かに上昇を持続している(183および204 mmol/L)。これは、軽度の糖尿病傾向を示す。他の2匹のマウスは、試験中を通じて正常な血糖値範囲内に留まっていた(表4)。

別の一組の実験で、実質的に同じ条件で、αS1-カゼインN末端の最初の15個のアミノ酸を表す合成ペプチド(C)(配列番号14)またはαS1-カゼインN末端の最初の19個のアミノ酸を表す合成ペプチド(G)(配列番号18)、あるいはPBSコントロールをそれぞれ1 mgずつ3回、3日を置いて、注射した。25週目におけるペプチドC(配列番号14)を投与したマウスでは、5匹のマウスの内3匹に糖尿は検出されず、グルコース負荷(IPTG試験)に対して、血糖値は正常であった(<120, 101, 113, 102)。ペプチドG(配列番号18)を投与したグループでは、5匹のマウスの内2匹に糖尿は検出されず、グルコース負荷(IPTG試験)に対して、血糖値はずっと120未満であった。一般に、IPGTTの正常な結果は、健康な、生き残ったペプチド処置マウスにおける糖尿の欠如を反映していた(表4)。上記から、天然カゼイン由来のペプチドのみならず、αS1-カゼインN末端から僅か数個のアミノ酸を表す合成ペプチドまでも、遺伝的指向性を持つNODマウスの、自己免疫性糖尿病の発症に対する感受性を目覚しく低減する。

カゼイン由来合成ペプチドは、総コレステロール血液レベル(TC)、低密度脂質タンパク(LDL)、および高密度脂質タンパク(HDL)を著明に下げる:
実験的高コレステロール血症ラットにおいて、カゼイン由来合成ペプチドの腹腔内投与は、脂質(HDL、LDL、およびTC)の血中レベル値に著明な低下をもたらした。アテローム誘発性Thomas Hartroftダイエットの1週間後、マウスの血中コレステロールレベルは、318 mg/dlに上昇した。

1匹当たり1 mgのカゼイン由来合成ペプチドの投与1週間後、αS1-カゼインの最初の5個のアミノ酸(3P)(配列番号4)、11個のアミノ酸(2a)(配列番号10)によって処置されたグループでは、コントロールグループに比べて、TC、HDL、およびLDL値が有意に低下していた[それぞれ、TC: 308および279 mg/dl; HDL: 42.5 mg/dlおよび41 mg/dl;LDL: 247 mg/dlおよび221 mg/dl、一方、食餌によって高コレステロール血症/高脂血症誘発コントローグループでは、393 mg/dl (TC)、54.5 mg/dl (HDL)、および326 mg/dl (LDL)](図15)。上記から、αS1-カゼインN末端の最初の数アミノ酸を表す合成ペプチドでも、単回の腹腔内投与後1週間以内、実験的に誘発された高脂血症および高コレステロール血症を効果的に下げた。

天然カゼイン由来ペプチドによる臨床治験
患者には、それぞれ、50 mgの天然カゼイン由来ペプチドの1回、2回、または3回から成る一連の筋注を、各投与ごとに表示のように3箇所のデポに分割して行なった。

天然カゼイン由来ペプチドは、ガン患者において造血を刺激する:
以前化学療法を受けたことのある、あるいは、現に受けている6名のガン患者の血液学的プロフィールを、表示のように、天然カゼイン由来ペプチドの投与前、および投与後に調べた。特に、それぞれ、血小板増殖、白血球増殖、および赤血球増殖を表す血小板(PLT)、白血球(WBC)、赤血球(RBC)およびヘモグロビン(HGB)値の変化に注目した。

G.T.,(女性患者、患者1):
患者は卵巣ガンを患い、化学療法の後に子宮摘出術を受けた。彼女は、手術の2ヵ月後および2ヶ月半後の2回、天然カゼイン由来ペプチドの筋肉注射を受けた。天然カゼイン由来ペプチドの第1回および第2回の投与の間に化学療法は行われなかった。第1回注射の6日後、第2回注射の7および13日後における血液試験は、血小板およびWBC成分における相当な増加の外に、RBCの増加も反映していた(図16)。

E.C.,(女性患者、患者2):
患者は1983年乳腺葉ガンのために広範な乳房切除術を受けたが、6年後胃の転移を見た。化学療法開始の3日前、彼女に、天然カゼイン由来ペプチドを1回筋肉内注入し(3箇所に分けて)、化学療法後10日目に2回目を行った。化学療法後10および16日目に行われた血球カウントでは、化学療法後に通常見られる、血液学的プロフィールの低下が示されたが、天然カゼイン由来ペプチドのもっとも著明な作用は、化学療法の前、第1回注入の3日後に見られた(図16)。

E.S.,(女性患者、患者3):
患者は、1987年に最初に発見された乳ガンの広範な転移を患っていた。2年後、天然カゼイン由来ペプチドの最初の筋注を受け、23日後に2回目を受けた。この期間外には何も治療は行われなかった。血液試験を行ったところ、第1回投与後7日目にPLTが強力に強化され、第2回投与後の7日目にRBCとWBCに著明な増加のあることが示された(図16)。

J.R., (女性患者、患者4):
患者の診断は、骨転移を伴う乳ガンである。彼女は、化学療法開始の8日前に天然カゼイン由来ペプチドの1回の筋注を受け、さらにもう1回を14日後に受けた。化学療法誘発性の低下の後に得られたWBCレベルの急激な回復においてもっとも著明な作用が明らかに見て取れる(図16)。

D.M.,(女性患者、患者5):
患者は、広範な転移を伴う肝臓ガンを患っていた。彼女は、化学療法を受ける10、8、および6日前に、天然カゼイン由来ペプチドの3回の筋注を受けた。化学療法後、別の一連の注射が10、12、および14日目に行われた。最初の一連の注射後にも、血液学的プロフィールに対して著明な作用が認められたけれども、もっとも目覚しい改善は、天然カゼイン由来ペプチドによる第2回目の一連の注射後に、化学療法後に一旦低下した数値が、正常な血球値に急激に復帰した点に認められる(図16)。

以上から、天然カゼイン由来ペプチドをガン患者に投与すると、血液学的プロフィールの改善、特に、赤血球、白血球、および血小板増殖が得られ、かつ、化学療法によって誘発される血液成分の低下を緩和し、その持続期間を短縮することが可能である。

天然カゼイン由来ペプチドは、耐性血小板減少症を持つ移植レシピエントの血小板増殖を刺激する:
重度の出血発作を伴う長期輸血耐性血小板減少症は、骨髄移植の、特に従来療法が無効な場合には、危機的な合併症となる場合がある。重篤な耐性血小板減少症を持つ2名の患者に天然カゼイン由来ペプチドを投与した。

M-1(女性患者):
急性骨髄性白血病を患う32歳の患者で、自己幹細胞移植後完全に快復した。彼女は、過去に2回、肺出血と軟口蓋に閉塞性の大きな血腫を伴う危機的な出血発作を経験していた。移植の114日以上後において、血小板数は、rhIL-3、rhIL-6、ガンマグロブリン静注、および組み替えエリスロポエチンに対して無反応であった。50 mgの天然カゼイン由来ペプチドによる2回の筋注投与後(各投与は3箇所に分けられた)、直ちに彼女の状態は改善した。正常な血小板数が急速に戻ると共に(図17)、筋疲労および衰弱に伴う末端四肢の出血も後退し、彼女は歩行を取り戻すことができ、合併症または副作用もなく海外の自宅に帰った。

M-2(男性患者):
急性骨髄性白血病を患う30歳の患者で、自己幹細胞移植後2回目の完全回復を果たしたが、血小板カウントは完全な耐性を示し、消化管からの大出血発作を経験していた。彼は、連日濃縮血球の輸血を必要とし、アルブミン低血症を発症し、rhL-3、rhIL-6、およびガンマグロブリンによる広範な治療に無反応であった。移植後86日目において、それぞれ、3箇所に分けた50 mg天然カゼイン由来ペプチドを2回筋注した後、急速な血小板の再建(図18)および出血の緩慢な停止が観察された。それ以上の治療は必要なく、患者は、現在では、血小板数も正常で完全に無症状である。

以上から、天然カゼイン由来ペプチドの、それぞれ3箇所に分注される体重kg当たり0.7 -1.0 mgの、2回筋注から成る処方は、危機的な出血発作を伴う、慢性の輸血耐性血小板減少症を患う患者において、急速に血小板数を再建し、関連する臨床症状を低減するのに効果的である。

天然カゼイン由来ペプチドは、家系性高脂質血症のトリグリセリドおよび総コレステロールを下げる
M.S.(女性患者):
患者は、高脂血症の家系を持つ38歳の女性である。天然カゼイン由来ペプチドによる治療の前、血液化学的プロフィールから、総コレステロール(321 mg/dl)、トリグリセリド(213 mg/dl、正常範囲は45 -185 mg/dl)の上昇、および、LDL-コレステロール(236.4 mg/dl、正常範囲は75 -174 mg/dl)の上昇が明らかになった。50 mgの天然カゼイン由来ペプチドの単回投与(3箇所の筋肉内滞在場所に分注)の1ヶ月後、高脂血症は安定化し、総コレステロールは270 mg/dlに低下し、トリグリセリドは165 mg/dlとなり、LDL-コレステロールは201 mg/dlとなった。これらは、依然として正常範囲よりも高いものの、治療前数値から有意に低下した。さらにそれ以上の治療は行わなかった。以上から、天然カゼイン由来ペプチドは、ヒトの、その他の点では未処置の高脂血症において著明な低下を速やかにもたらすのに効果的である。

天然カゼイン由来ペプチドは、潜在出血の症例において正常ヘモグロビン血を刺激する
D.G.(男性患者):
患者は75歳の男性で、広範な潜在出血と関連する貧血と低ヘモグロビン血症(RBC、HGB、HCT、MCH、およびMCHCの低下)を患う。50 mgの天然カゼイン由来ペプチドの単回筋注投与(3箇所に分注)の1ヶ月後、貧血の著明な低下が観察された。2ヶ月後、潜在出血は依然として続いていたにも拘わらず、RBCは正常値に近づき(3.44 M/μlから4.32)、HGBは増し(8.9 g/dlから11.3)、HCT、MCH、およびMCHCは全てほぼ正常値に回復した。以上から、天然カゼイン由来ペプチドは、ヒトにおいて、赤血球増殖を刺激し、血液損失に関連する貧血を緩和することが可能である。

本発明のいくつかの特質は、分かり易くするために、別々の実施態様という筋立てで記載したのであるが、これらはまた、組み合わせられて、単一の実施態様として提供することも可能であることを理解しなければならない。逆に、本発明の様々な特質が、簡単のために、単一の実施態様という筋立てで記載されているが、これらもまた、別々に、または、適当な組み合わせで小分けされて提供されてもよい。

本発明は、上に特定の実施態様と関連させながら記載されたわけであるが、当業者には、たくさんの別態様、改変、および変種が見て取れることは明白である。従って、付属の特許請求項の精神および広範な範囲の中に収まる、そのような全ての別態様、改変、および変種は、本発明に含まれることが当然意図される。本明細書で言及された、全ての刊行物、特許、特許出願、および、アクセス番号で特定される配列は、あたかも各個別の刊行物、特許、特許出願、または配列が引用によって本明細書に特異的、個別的に含められるとするのと同程度に、引用することによりその全体が本明細書に含まれる。さらに、参考文献が本出願において引用または特定される場合、その引用または特定は、その参考文献を、本発明にたいする先行技術として利用可能であることを承認したものと考えてはならない。

引用による本明細書への登録
CD-ROM内容
下記のCD-ROMを本明細書の付録とする。情報は:ファイル名/バイトサイズ/製作日付/オペレーティングシステム/マシーンフォーマットの形式で提供される。
1. 配列リスト/1.04メガバイト/2005年1月12日/MS-WINDOWS XP/PC。

図1は、天然カゼイン由来ペプチドによる、培養マウス骨髄細胞におけるナチュラルキラー(NK)細胞の刺激を示す。100 μg/mlの天然カゼイン由来ペプチドの存在下、または不在下にインキュベートした、培養マウス骨髄細胞による、35S標識YAC標的細胞の分解を、合計放射能に対する、YAC細胞から培養上清に放出された放射能の割合(%放出35S)として示した。図1は、エフェクター:標的細胞比が25:1および50:1におけるNK活性を表す。図2aと2bは、培養ヒト末梢血幹細胞(PBSC)におけるナチュラルキラー(NK)細胞活性の、天然カゼイン由来ペプチドによる刺激を示す。顆粒細胞コロニー刺激因子(G-CSF)を投薬されたドナーから得られ、天然カゼイン由来ペプチド無し(0 μg)で、あるいは、漸増濃度(5 -500 μg/ml)の該ペプチドで処理された、培養ヒトPBSCによる、35S標識K562標的細胞の分解を、合計放射能に対するK562細胞から培養上清に放出された放射能の割合(%放出35S)で表した。図2aは、同じ患者から得られた二通りの血液サンプルであって、異なるエフェクター:標的細胞比(100:1と50:1)でインキュベートされたサンプルのNK活性を表す。図2aと2bは、培養ヒト末梢血幹細胞(PBSC)におけるナチュラルキラー(NK)細胞活性の、天然カゼイン由来ペプチドによる刺激を示す。顆粒細胞コロニー刺激因子(G-CSF)を投薬されたドナーから得られ、天然カゼイン由来ペプチド無し(0 μg)で、あるいは、漸増濃度(5 -500 μg/ml)の該ペプチドで処理された、培養ヒトPBSCによる、35S標識K562標的細胞の分解を、合計放射能に対する、K562細胞から培養上清に放出された放射能の割合(%放出35S)で表した。図2bは、正常ドナーと病気ドナーから得られた血液サンプルであって、100:1のエフェクター:標的細胞比でインキュベートされたサンプルのNK活性を表す。正方形は100:1のエフェクター:標的細胞比を表す。ひし形は50:1のエフェクター:標的細胞比を表す。図3a-3cは、培養ヒト末梢血幹細胞(PBSC)におけるナチュラルキラー(NK)細胞およびT-リンパ球(T)の増殖の、天然カゼイン由来ペプチドによる刺激を示す。顆粒細胞コロニー刺激因子投与ドナーから得られた培養PBSCにおけるNKおよびT細胞であって、天然カゼイン由来ペプチドとの共存下に、または不在下にインキュベートされた細胞の増殖を、抗CD3/FITC蛍光抗T細胞抗体UCHT1、または、抗CD56/RPE蛍光抗NK細胞抗体MOC-1(DAKO A/Sデンマーク)に結合する細胞のパーセントで表す。コントロールは、FITCおよびRPE-接合抗マウスIgG抗体である。図3aは、100 μg/mlの天然カゼイン由来ペプチドの存在下(ペプチド)、または不在下(コントロール)に10日間インキュベートした場合に得られる、蛍光抗体CD56に結合する培養ヒトPBSCのパーセント(5個の独立サンプル)を表す。図3a-3cは、培養ヒト末梢血幹細胞(PBSC)におけるナチュラルキラー(NK)細胞およびT-リンパ球(T)の増殖の、天然カゼイン由来ペプチドによる刺激を示す。顆粒細胞コロニー刺激因子投与ドナーから得られた培養PBSCにおけるNKおよびT細胞であって、天然カゼイン由来ペプチドとの共存下に、または不在下にインキュベートされた細胞の増殖を、抗CD3/FITC蛍光抗T細胞抗体UCHT1、または、抗CD56/RPE蛍光抗NK細胞抗体MOC-1(DAKO A/Sデンマーク)に結合する細胞のパーセントで表す。コントロールは、FITCおよびRPE-接合抗マウスIgG抗体である。図3bは、100 μg/mlの天然カゼイン由来ペプチドの存在下(ペプチド)、または不在下(コントロール)に14日間インキュベートした場合に得られる、蛍光抗CD3(T細胞)抗体に結合する培養ヒトPBSCのパーセントを表す。図3a-3cは、培養ヒト末梢血幹細胞(PBSC)におけるナチュラルキラー(NK)細胞およびT-リンパ球(T)の増殖の、天然カゼイン由来ペプチドによる刺激を示す。顆粒細胞コロニー刺激因子投与ドナーから得られた培養PBSCにおけるNKおよびT細胞であって、天然カゼイン由来ペプチドとの共存下に、または不在下にインキュベートされた細胞の増殖を、抗CD3/FITC蛍光抗T細胞抗体UCHT1、または、抗CD56/RPE蛍光抗NK細胞抗体MOC-1(DAKO A/Sデンマーク)に結合する細胞のパーセントで表す。コントロールは、FITCおよびRPE-接合抗マウスIgG抗体である。図3cは、100 μg/mlの天然カゼイン由来ペプチドの存在下(ペプチド)、または不在下(コントロール)に28日間インキュベートした場合に得られる、CD3およびCD56(TおよびNK様細胞)抗体に結合する培養ヒトPBSCのパーセントを表す。図4は、培養ヒト末梢血幹細胞(PBSC)におけるナチュラルキラー(NK)細胞活性の、αS1カゼイン由来合成ペプチドによる刺激を示す。カゼイン由来合成ペプチドの不在(0 μg)下、または漸増濃度(10 - 500 μg/ml)の存在下にインキュベートした、培養ヒトPBSC(乳ガン患者から得られたもの)による、35S標識K562標的細胞の分解を、合計放射能に対する、K562細胞から培養上清に放出された放射能の割合(%放出)として表す。ペプチドは、αS1カゼインのN末端部分の1-10個(1a、ダイヤ)、1-11個(2a、四角)、1-12個(3a, 三角)の最初のアミノ酸から成るN-末端アミノ酸を表す(合成ペプチドの配列については下記の表3を参照されたい)。図5a-5cは、多様な起源のヒト培養細胞増殖の、天然カゼイン由来ペプチドによる刺激を示す。漸増濃度の天然カゼイン由来ペプチドと14-21日インキュベーション後に見られる培養ヒト細胞の増殖を、各サンプルに取り込まれた[3H]-チミジンの量で表す。図5aは、50 -600 μg/mlの天然カゼイン由来ペプチドの存在下に、または不在下(コントロール)にインキュベートしたヒト末梢血幹細胞の2種類のサンプル(PBSC1、四角、15日インキュベーション;および、PBSC2、ダイヤ、20日インキュベーション)における標識の取り込みを表す。図5a-5cは、多様な起源のヒト培養細胞増殖の、天然カゼイン由来ペプチドによる刺激を示す。漸増濃度の天然カゼイン由来ペプチドと14-21日インキュベーション後に見られる培養ヒト細胞の増殖を、各サンプルに取り込まれた[3H]-チミジンの量で表す。図5bは、50 -600 μg/mlの天然カゼイン由来ペプチドの存在下に、または不在下(コントロール)に21日間インキュベートした後の、培養ヒト骨髄細胞における[3H]-チミジンの取り込みを表す。骨髄は、寛解期にあるガン患者(BM自己移植、黒塗り四角;BM1、三角;および、BM-2、白抜き四角)、または、健康なボランチア(BM正常、ダイヤ)によって供与された。図5a-5cは、多様な起源のヒト培養細胞増殖の、天然カゼイン由来ペプチドによる刺激を示す。漸増濃度の天然カゼイン由来ペプチドと14-21日インキュベーション後に見られる培養ヒト細胞の増殖を、各サンプルに取り込まれた[3H]-チミジンの量で表す。図5cは、50 -1000 μg/mlの天然カゼイン由来ペプチドの存在下に、または不在下(コントロール)に14日間インキュベートした培養ヒト臍帯血細胞における[3H]-チミジンの取り込みを表す。臍帯血細胞は、二人の別々のドナーから供与された(C.B.1、三角;C.B.2、四角)。図6は、天然カゼイン由来ペプチドとのインキュベーションに反応した、ヒト骨髄細胞および臍帯血における造血前駆細胞の増殖を示す表である。培養細胞の増殖を反映する、ml当たりの相対的細胞数x 104は、前述の実施例節に記載される通りに細胞をカウントすることによって定めた。健康なボランチアから得られた骨髄(骨髄)、および正常分娩で得られた臍帯血(臍帯血)を、13日(臍帯血)または14日(骨髄)、増殖因子およびAB血清の存在下に、漸増濃度(25 -500 μg/mlの天然カゼイン由来ペプチド添加、または無添加の下にインキュベートした。図7は、αS1-カゼイン由来合成ペプチドとのインビトロ・インキュベーションが、マウス骨髄前駆細胞由来のCFU-GEMMコロニーにおける巨核球、赤血球、プラズマ細胞、および樹状細胞の相対的分布(差別カウント)にどのような作用を及ぼすかを示す表である。細胞は、CFU-GEMMコロニーの場合と同様に調製したマウス骨髄細胞から育成した巨視的コロニーにおいて数えた。細胞は、造血因子、および25 μg以上のカゼイン由来合成ペプチドと14日間インキュベートした。差別カウントは、合計細胞に対する、個別の細胞タイプによるパーセントとして表す。図8は、骨髄破壊、骨髄移植マウスにおける、天然カゼイン由来ペプチドの投与による、末梢白血球再建刺激を示す。細胞カウントは、白血球数(血球計でカウントしたml当たりx 104個)を表す。マウス(グループ当たりn = 6)に致死量未満の被爆をさせ、翌日同種骨髄移植(1匹のマウス当たり106個の細胞)を実施した。その1日後に、レシピエント当たり1 mgの天然カゼイン由来ペプチド(ペプチド、四角)、または、レシピエント当たり1 mgのヒト血清アルブミン(コントロール、ダイヤ)を静脈内投与した。図9は、骨髄破壊、骨髄移植マウスにおける、天然カゼイン由来ペプチドによる血小板再建刺激を示す。血小板(PLT)カウントは、血小板数(血球計でカウントしたml当たりx 106個)を表す。マウス(グループ当たりn = 7)に致死量の被爆をさせ、1日目同種骨髄移植(1匹のマウス当たり106個の細胞)を実施した。レシピエント当たり1 mgの天然カゼイン由来ペプチド(ペプチド、ダイヤ)、または、レシピエント当たり1 mgのヒト血清アルブミン(コントロール、四角)を静脈内投与した。図10a-10fは、蛍光顕微鏡で記録した、天然カゼイン由来のFITC接合ペプチドの、培養ヒトTリンパ球細胞への侵入および核への取り込みを示す。Sup-T1細胞は、上の実施例節に記載するように、100 μg/mlのFITC接合ペプチドとインキュベートした。表示の時間に、細胞は、遊離の標識を洗い流し、フォルマリンに固定し、レーザー走査共焦点顕微鏡によって観察・記録した。図10aから10fは、連続的インキュベーション時間における細胞の選択画像であって、天然カゼイン由来のFITC接合ペプチドがSup-T1細胞膜を貫通し(図10a、10b)、かつ、核に集中する(図10c-10f)ところを示す。図10a-10fは、蛍光顕微鏡で記録した、天然カゼイン由来のFITC接合ペプチドの、培養ヒトTリンパ球細胞への侵入および核への取り込みを示す。Sup-T1細胞は、上の実施例節に記載するように、100 μg/mlのFITC接合ペプチドとインキュベートした。表示の時間に、細胞は、遊離の標識を洗い流し、フォルマリンに固定し、レーザー走査共焦点顕微鏡によって観察・記録した。図10aから10fは、連続的インキュベーション時間における細胞の選択画像であって、天然カゼイン由来のFITC接合ペプチドがSup-T1細胞膜を貫通し(図10a、10b)、かつ、核に集中する(図10c-10f)ところを示す。図10a-10fは、蛍光顕微鏡で記録した、天然カゼイン由来のFITC接合ペプチドの、培養ヒトTリンパ球細胞への侵入および核への取り込みを示す。Sup-T1細胞は、上の実施例節に記載するように、100 μg/mlのFITC接合ペプチドとインキュベートした。表示の時間に、細胞は、遊離の標識を洗い流し、フォルマリンに固定し、レーザー走査共焦点顕微鏡によって観察・記録した。図10aから10fは、連続的インキュベーション時間における細胞の選択画像であって、天然カゼイン由来のFITC接合ペプチドがSup-T1細胞膜を貫通し(図10a、10b)、かつ、核に集中する(図10c-10f)ところを示す。図10a-10fは、蛍光顕微鏡で記録した、天然カゼイン由来のFITC接合ペプチドの、培養ヒトTリンパ球細胞への侵入および核への取り込みを示す。Sup-T1細胞は、上の実施例節に記載するように、100 μg/mlのFITC接合ペプチドとインキュベートした。表示の時間に、細胞は、遊離の標識を洗い流し、フォルマリンに固定し、レーザー走査共焦点顕微鏡によって観察・記録した。図10aから10fは、連続的インキュベーション時間における細胞の選択画像であって、天然カゼイン由来のFITC接合ペプチドがSup-T1細胞膜を貫通し(図10a、10b)、かつ、核に集中する(図10c-10f)ところを示す。図10a-10fは、蛍光顕微鏡で記録した、天然カゼイン由来のFITC接合ペプチドの、培養ヒトTリンパ球細胞への侵入および核への取り込みを示す。Sup-T1細胞は、上の実施例節に記載するように、100 μg/mlのFITC接合ペプチドとインキュベートした。表示の時間に、細胞は、遊離の標識を洗い流し、フォルマリンに固定し、レーザー走査共焦点顕微鏡によって観察・記録した。図10aから10fは、連続的インキュベーション時間における細胞の選択画像であって、天然カゼイン由来のFITC接合ペプチドがSup-T1細胞膜を貫通し(図10a、10b)、かつ、核に集中する(図10c-10f)ところを示す。図10a-10fは、蛍光顕微鏡で記録した、天然カゼイン由来のFITC接合ペプチドの、培養ヒトTリンパ球細胞への侵入および核への取り込みを示す。Sup-T1細胞は、上の実施例節に記載するように、100 μg/mlのFITC接合ペプチドとインキュベートした。表示の時間に、細胞は、遊離の標識を洗い流し、フォルマリンに固定し、レーザー走査共焦点顕微鏡によって観察・記録した。図10aから10fは、連続的インキュベーション時間における細胞の選択画像であって、天然カゼイン由来のFITC接合ペプチドがSup-T1細胞膜を貫通し(図10a、10b)、かつ、核に集中する(図10c-10f)ところを示す。図11は、天然カゼイン由来ペプチドとのインキュベーションによる、Sup-T1リンパ球細胞増殖の刺激を示す。Sup-T1細胞(ウェル当たり500個)を、漸増濃度(50 -1000 μg/ml)の天然カゼイン由来ペプチドとインキュベートし、培養後の表示時間にそのウェルにおいてカウントし、18時間、[3H]-チミジンについてパルスカウントした。増殖示数とは、天然カゼイン由来ペプチドと共に培養した細胞における[3H]-チミジンの取り込みの平均(3重サンプル)を、天然カゼイン由来ペプチドの不在下に培養した細胞への取り込み(コントロール)で除して得られた比である。図12は、天然カゼイン由来ペプチドによる、CEMリンパ球のHIV-1感染の抑制を示す表である。CEM細胞は、上の実施例節に記載されるように、あらかじめ3時間天然カゼイン由来ペプチドで処理した(3時間)HIV-1ウィルスと接触させるか、あるいは、漸増濃度(50 -1000 μg/ml)の天然カゼイン由来ペプチドと表示の時間数(24と48時間)あらかじめ自身インキュベートし、次に、HIV-1ウィルスと接触させた。上の実施例節に記載されるように、感染後15日目に、細胞数をカウントしHIV-1感染の重度をP24抗原アッセイによって定量した。コントロール培養体は下記の通り。すなわち、IF:天然カゼイン由来ペプチドによる前処置無しにHIV-1ウィルスに接触させたCEM細胞、および、UIF:天然カゼイン由来ペプチドによる前処置もなく、HIV-1ウィルスとの接触もないことを除き同一の条件下に培養されたCEM細胞。図13は、αS1-カゼイン由来合成ペプチドによる、CEMリンパ球のHIV-1感染の抑制を示す表である。CEM細胞は、上の実施例節に記載されるように、あらかじめ3時間、各種濃度(10 -500 μg/ml)のαS1-カゼイン由来合成ペプチド(1P、3P、および4P)で(ペプチドの存在下)処理したHIV-1ウィルスと接触させた。上の実施例節に記載されるように、感染後7日目に、細胞数をカウントしHIV-1感染の重度をP24抗原アッセイによって定量した。コントロール培養体(IF)は、αS1-カゼイン由来合成ペプチドによる前処置無しにHIV-1ウィルスに接触させたCEM細胞であり、UIF:カゼイン由来合成ペプチドによる前処置もなく、HIV-1ウィルスとの接触もないことを除き同一の条件下に培養されたCEM細胞である。図14は、非肥満型糖尿病(NOD)雌性マウスにおける、天然カゼイン由来ペプチドによる、I型(IDDM)糖尿病に対する保護を示す。NOD雌性マウスにおいて365日間定期的に糖尿を監視した。マウスは、100 μgの天然カゼイン由来ペプチドを毎週1回(三角)または2回(四角)5週間注入したもの(合計5または10回注入)、および、未処置コントロールである。コントロールは全て糖尿を発症し、その後死んだ。 図15は、αS1-カゼイン由来合成ペプチドによる、C57B1/6雌性マウスにおいて食餌誘発された高コレステロール血症/高脂血症の低下を示す。総コレステロール(TC)、高密度(HDL)および低密度脂質タンパク(LDL)を、カゼイン由来ペプチドB、C、2a、または3Pの投与、または無処置(コントロール)の、高コレステロール/高脂血症マウスについて、サンプル当たり2匹のマウスのプール血液について定量した。「正常」サンプルは、アテローム誘発性食餌を与えられていないマウスを表す。図16は、天然カゼイン由来ペプチドの注入による、ガン患者の造血刺激を示す表である。前述のように、現に化学療法を受けている、または以前に化学療法を受けたことのある5名の女性患者の末梢血について、天然カゼイン由来ペプチドの筋注前(n)、および筋注後(n + ...)における、合計白血球数(WBC、x 103)、血小板数(PLT, x 106)、赤血球数(RBC, x 103)、およびヘモグロビン(dl当たりのgm)をカウントした。患者1はG.T.に関連し、患者2はE.C.に関連し、患者3はE.S.に関連し、患者4はJ.R.に関連し、患者5はD.M.に関連する。図17は、急性骨髄性白血病を患う、血小板耐性患者(M-1)における天然カゼイン由来ペプチドによる造血刺激を示す。血小板再建は、100 mgの天然カゼイン由来ペプチドの筋注後(前述の実施例節に記載されるように)の表示の間隔において前述のようにカウントした末梢血の血小板数の変化(PLT、ml当たりx 106)として表した。図18は、急性骨髄性白血病を患う、血小板耐性患者(M-2)における天然カゼイン由来ペプチドによる血小板増殖刺激を示す。血小板再建は、100 mgの天然カゼイン由来ペプチドの筋注後(前述の実施例節に記載されるように)の表示の間隔において前述のようにカウントした末梢血の血小板数の変化(PLT、ml当たりx 106)として表した。図19は、αS1-、αS2-、β-、またはκ-カゼインから得られた合成ペプチドとのインキュベーションが、マウス骨髄前駆細胞由来のCFU-GMコロニーにおける顆粒細胞および単球のコロニー形成に対する造血因子刺激に及ぼす作用を示す表である。細胞は、前述のCFU-GEMMコロニーと同様に調製したマウス骨髄細胞から培養された巨視的コロニーについて数えた。細胞は、造血因子サイトカイン(IL-3)およびコロニー刺激因子(G-CSF)、および、25 μg/ml以上のカゼイン由来合成ペプチドであって、αS1-カゼインのアミノ酸1-22を表すもの(J)(配列番号21)、または、αS1-カゼインのアミノ酸1-6を表すもの(30-4)(配列番号5)と個別にまたは組み合わせて14日間インキュベートした。コロニー形成(CFU)の刺激は、105個のプレートMNC当たりの骨髄細胞コロニー数として表す。G-CSF、IL-3、および、上記カゼイン由来合成ペプチドのどちらかに対して暴露された培養体の骨髄細胞形成における共同作用的増加に注意する。図20は、αS1-、αS2-、β-、またはκ-カゼインから得られた合成ペプチドとのインキュベーションが、ヒト骨髄前駆細胞由来のCFU-GMコロニーにおける顆粒細胞および単球のコロニー形成に対する造血因子刺激に及ぼす作用を示す表である。細胞は、前述のCFU-GEMMコロニーと同様に調製したヒト骨髄細胞から培養された巨視的コロニーについて数えた。細胞は、造血因子サイトカイン(IL-3)およびコロニー刺激因子(G-CSF)、および、25 μg以上のカゼイン由来合成ペプチドであって、αS1-カゼインのアミノ酸1-22を表すもの(J)(配列番号21)、または、β-カゼインのアミノ酸193-208を表すもの(β-カゼイン)(配列番号28)とインキュベートした。ヒト骨髄前駆細胞の、カゼイン由来ペプチドに対する暴露は14日間であった。コロニー形成(CFU)の刺激は、105個のプレートMNC当たりの骨髄細胞コロニー数として表す。G-CSF、IL-3、および、β-カゼインおよびαS1-カゼインのN末端部分に暴露された培養体の骨髄細胞形成における共同作用的増加(100 μg/mlのペプチドJでは>50%、および300 μg/mlの合成β-カゼインでは>30%)に注意する。図21は、αS1-、αS2-、β-、またはκ-カゼインから得られた合成ペプチドとのインキュベーションが、マウス骨髄前駆細胞由来のCFU-GEMMコロニーの巨核球増殖に及ぼす作用を示す表である。細胞は、前述のCFU-GEMMコロニーと同様に調製したマウス骨髄細胞から培養された巨視的コロニーについて数えた。細胞は、25 μg以上のカゼイン由来合成ペプチド:合成β-カゼイン(配列番号28)、合成κ-カゼイン(配列番号30)、および、αS1-カゼインのアミノ酸1-22を表すカゼイン由来合成ペプチド(J)(配列番号21)と共に14日間インキュベートした。巨核球形成刺激は、巨核球(差別カウント)のパーセントとして表す。αS1-、β-、またはκ-カゼイン由来合成ペプチドの、巨核球早期(E.MK)形成に及ぼす目覚しい作用に注意する。図22は、αS1-、αS2-、β-、またはκ-カゼインから得られたペプチドとのインビトロ・インキュベーションが、マウス骨髄前駆細胞由来のGEMMコロニーの増殖に及ぼす作用を示す表である。細胞は、前述のCFU-GEMMコロニーと同様に調製したマウス骨髄細胞から培養された巨視的コロニーについて数えた。細胞は、造血因子、および25 μg/mlの合成β-カゼイン(193-208)(配列番号28)、または合成κ-カゼイン(106-127)(配列番号30)、または両合成(β + κ)と共に8日間インキュベートした。コロニー形成の刺激は、コントロールと比較した場合の、CFU-GEMMコロニー数として表した。合成β- および合成κ-カゼインの両方とも、GEMMコロニー形成に対して有意な作用を持つこと、および、組み合わされた両合成β- および合成κ-カゼインは協調作用を持つことに注意する。図23は、合成ペプチド[β-カゼイン(193-208)(配列番号28)、およびκ-カゼイン(106-127)(配列番号30)]、および合成αS1-カゼイン[ペプチドJ、αS1-カゼインのアミノ酸1-22を表すペプチド(配列番号21)]投与による、骨髄破壊、骨髄移植マウスにおける血小板再建の刺激を示す。細胞カウントは、血小板の数(Coulterカウンターでカウントしたmm3当たりx 103個)を表す。マウス(グループ当たりn = 5)を致死量未満被爆させ、翌日同種骨髄移植(1匹のマウス当たり3 x 106個の細胞)を行い、1日後、1匹のレシピエント当たり1 mgの合成β-カゼイン、合成κ-カゼイン、または、αS1-カゼインのアミノ酸1-22を表す合成ペプチドJ(配列番号21)、または、1匹のレシピエント当たり1 mgのヒト血清アルブミン(コントロール)を静脈内投与した。10日後、血小板を測定した。骨髄破壊の10日後に見られる、合成β-カゼイン、κ-カゼイン、および合成ペプチドJの、血小板再建におよび強力な作用(>25%の強化)に注目する。図24は、αS1-、β-、またはκ-カゼインから得られたペプチドによる、骨髄破壊、骨髄移植マウスにおける末梢白血球再建の刺激を示す。細胞カウントは、白血球数の平均値を表す(血球計でカウントしたml当たりの数)を表す。マウス(グループ当たりn = 5)を致死量未満被爆させ、翌日同種骨髄移植(1匹のマウス当たり3 x 106個の細胞)を行い、1日後、1匹のレシピエント当たり1 mgの、ゲルろ過によって天然カゼインから調製したαS1-またはκ-ペプチド(αS1 1-23またはκ 106-169)、αS1-カゼイン(配列番号21)またはβ-カゼイン(193-208、配列番号28)由来合成ペプチド、または、レシピエント当たり1 mgのヒト血清アルブミン(コントロール)を静脈内投与した。再建後5および7日目における、αS1-、β-、またはκ-カゼイン由来ペプチドによる白血球再建の目覚しい増強作用に注目する。図25は、αS1-、β-、またはκ-カゼインから得られたペプチドの組み合わせ処理による、骨髄破壊、骨髄移植マウスにおける末梢白血球再建の刺激を示す。細胞カウントは、白血球数の平均値を表す(血球計でカウントしたml当たりx 104個)を表す。マウス(グループ当たりn = 5)を致死量未満被爆させ、翌日同種骨髄移植(1匹のマウス当たり106個の細胞)を行い、1日後、1匹のレシピエント当たり1 mgの、ゲルろ過によって天然カゼインから調製したαS1-カゼイン(J、配列番号21)、またはβ-カゼイン(193-208、配列番号28)由来合成ペプチド、または、それらの組み合わせ[αS1-(J)およびβ-カゼインそれぞれ0.5 mg]、または、生食液(生食液)を静脈内投与した。再建後10および12日目における、αS1-、およびβ-カゼイン由来ペプチドの組み合わせによる白血球再建の目覚しい増強作用に注目する。図26a-26iは、αS1-カゼインのN-末端配列(配列番号25)およびβ-カゼインのアミノ酸配列(配列番号28)を含む、一連の代表的キメラヘプチドを示す表である。図26a-26iは、αS1-カゼインのN-末端配列(配列番号25)およびβ-カゼインのアミノ酸配列(配列番号28)を含む、一連の代表的キメラヘプチドを示す表である。図26a-26iは、αS1-カゼインのN-末端配列(配列番号25)およびβ-カゼインのアミノ酸配列(配列番号28)を含む、一連の代表的キメラヘプチドを示す表である。 図26a-26iは、αS1-カゼインのN-末端配列(配列番号25)およびβ-カゼインのアミノ酸配列(配列番号28)を含む、一連の代表的キメラヘプチドを示す表である。図26a-26iは、αS1-カゼインのN-末端配列(配列番号25)およびβ-カゼインのアミノ酸配列(配列番号28)を含む、一連の代表的キメラヘプチドを示す表である。図26a-26iは、αS1-カゼインのN-末端配列(配列番号25)およびβ-カゼインのアミノ酸配列(配列番号28)を含む、一連の代表的キメラヘプチドを示す表である。図26a-26iは、αS1-カゼインのN-末端配列(配列番号25)およびβ-カゼインのアミノ酸配列(配列番号28)を含む、一連の代表的キメラヘプチドを示す表である。図26a-26iは、αS1-カゼインのN-末端配列(配列番号25)およびβ-カゼインのアミノ酸配列(配列番号28)を含む、一連の代表的キメラヘプチドを示す表である。 図26a-26iは、αS1-カゼインのN-末端配列(配列番号25)およびβ-カゼインのアミノ酸配列(配列番号28)を含む、一連の代表的キメラヘプチドを示す表である。図26a-26iは、αS1-カゼインのN-末端配列(配列番号25)およびβ-カゼインのアミノ酸配列(配列番号28)を含む、一連の代表的キメラヘプチドを示す表である。

顆粒球コロニー刺激因子の作用は?

顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)は、主にマクロファージより分泌され、GM-CSFの作用を経て分化がより顆粒球系に方向付けられた前駆細胞を標的とするサイトカインである。 分子量は約18,000で、好中の産生促進、末梢血への放出促進作用をもつ。

G

G-CSFは血管内皮、マクロファージ及びその他の免疫細胞において生産される。 自然界のヒト型糖タンパク質は2種類で、それぞれ174及び177アミノ酸残基のタンパク質である。 分子量は約19,600。

G

G-CSF製剤としては、フィルグラスチム(商品名:グラン®)、レノグラスチム(商品名:ノイトロジン®)といった製剤や、フィルグラスチムのバイオシミラー(バイオ後発品)の製剤がある。

G

商品名
ヒト G-CSF タンパク質(Human G-CSF recombinant protein)
分子量
21 to 25 kDa, monomer, glycosylated
反応性
ヒト, マウス
組成
1x PBS, See Certificate of Analysis for details
ヒト G-CSF タンパク質 | 活性に優れた Humankine® 細胞培養や分化 ...www.cosmobio.co.jp › detail › human-g-csf-protein-humankine-pginull

G